「鬼滅」と「逃げ恥」から、ダイバーシティ&インクルージョンを考える
こんにちは。mezameのキャリアコンサルタント・東 公成です。
ダイバーシティ&インクルージョンについてはすでに多くの書籍や研修などで語られています。とくに平成を超え令和の世になり、生き方や働き方がますます多様化してきたので「いろいろな人がいるよね」というダイバーシティの部分については意識の高まりを感じます。
しかし、「いろいろな人」「自分と違う人」を受容するインクルージョンの部分においては、なかなか進んでいる感じがしません。
むしろネットなどの言論空間を見ていると、逆の方向に向かっているのでは?と危惧を覚えることすらあります。
ダイバーシティ&インクルージョンを阻む理由の一つに、私たちが持つアンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)があります。
“自分と異なる人よりも同じ人とばかり付き合う”というのもそうですし、“女性の能力が低く思えてしまう”のもアンコンシャスバイアスがなせる技です。
mezameとしてダイバーシティ&インクルージョンを考える際に、私たちがどれくらいアンコンシャスバイアスを持っているか、人気アニメの『鬼滅の刃』と人気ドラマの『逃げるは恥だが役に立つ』をモデルに考えてみます。
『鬼滅の刃』
58歳の私がアニメを見ることは、普段はほとんどありませんが、同世代でも鬼滅の刃のことを話す人が出てきましたので、それでは!と、まずAmazonプライムにあるT V放映版から見始めました。
【あらすじ】
家族を鬼に殺された主人公 竈門炭治郎が鬼にされてしまった妹 禰󠄀豆子を人間に戻す方法を探しに旅に出るうちに、鬼殺隊に入り鬼退治を進めながらさまざまな出会いを通して成長していく物語です。
実は軽い気持ちで見始めましたが、心に響くところも多く、気がつくと最後の26話を見終えていました。
私の心に響いたのは、炭治郎が退治した鬼に対して見せる優しさです。
登場する鬼たちは非常に残忍でたくさんの人間を殺してきました。実は、こうした鬼たちはもともと人間でしたが、人間社会にいた頃に虐待を受けたり理不尽な仕打ちを強いられていた時に、鬼舞辻 無惨という鬼の始祖に鬼に変えられてしまったという事情を持っています。
炭治郎は、鬼との闘いに勝った際に、そんな鬼に寄り添い、彼らの心の奥人間だった頃の悲しみの気持ちに心を通わせる優しさを見せます。実は、炭治郎は戦闘中から相対している鬼への理解を始めているようです。
私自身振り返ってみると、これまでも、そして今も、つい他人を第一印象で判断…つまりアンコンシャスバイアスを持って人を判断してしまいがちで、もう一歩進んでその人に寄り添って理解することを怠っていることが多いと反省することがよくあります。
さて、多様な鬼、多様な仲間が出てくる『鬼滅の刃』は、まさにダイバーシティな世界。
仲間だけでなく、敵の鬼に対してすら先入観や思い込みを持たずに寄り添う炭治郎が示すインクルージョンの姿勢に考えさせられるところが多いです。
主人公 竈門炭治郎は、指導者、仲間、敵との関わりを経験値として蓄積して成長していきます。
アンコンシャスバイアスの少ない炭治郎だからこそ急激に成長し、彼が味わうダイバーシティ&インクルージョンによってキャリアを形成していくストーリーであると言えます。
『逃げるは恥だが役に立つ』
私は天邪鬼なところがあり、世の中で流行っているものは無視。流行が終わってからこっそり見るなんてことがよくあります。
『逃げるは恥だが役に立つ』(以下、逃げ恥)も最近ようやくAmazonプライムで見ました。
面白い!!!
アンコンシャスバイアスに囲まれる主人公たちが、自分の中や周りのアンコンシャスバイアスを乗り越えたり、うまく折り合ったりして成長していくストーリーであると感じたからです。
【あらすじ】
独身のシステムエンジニア津崎平匡に、家政婦として雇われた主人公森山みくり。津崎平匡は家政婦よりも「契約結婚」という形にした方がコスパも良いし世間体もたつと、みくりに提案。そんな「非常識な」提案をみくりが受け入れたところから、さまざまなハプニングやドラマが巻き起こります。
冒頭で申し上げたように、ダイバーシティ&インクルージョンを阻む要因として大きいのが、アンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)です。
『逃げ恥』には、アンコンシャスバイアスがさまざまな方の“理不尽”として登場し、視聴者を巻き込んでの共感をかき立てる仕掛けとなっていました。
主人公・森山みくりと、その叔母・土屋百合の周りにいるたくさんの人たちが見せるアンコンシャスバイアスについて考えていきたいと思います。
森山みくりは、文系の大学院出身であることが裏目に出て就職できず、派遣社員として働いています。
「文系の大学院?自分より頭の良い女は使えない」という採用側の思い込みがあったのでしょうか? また彼女が派遣社員として働く会社が、予算削減のため派遣社員2人のうち1人をカットする際に、どうもこの「頭の良い女」をカットして「可愛げのある女」を残したような演出でした。この部分は結構露骨に描かれていると感じました。
さて、そのみくり自身が、津崎平匡宅で「契約結婚」という形での同居を始めてからは、津崎平匡とともに自分たちの中にあるこれまでの常識や思い込みと闘い、ひとつひとつ乗り越えていく様を視聴者である私も「え、どうするんだろう?」と考えながら見入ってしまいました、
みくりの叔母である土屋百合は、外資系の化粧品会社「ゴダールジャパン」の広報部部長補佐。
まず私は、この部長補佐という肩書きに、世の中にある「女は補佐」というバイアスを感じました。逃げ恥の中で語られる土屋百合は「ゴダールジャパン」同期の女性の希望の星でした。土屋百合の同期たちが若い頃、男性視点で発信される広報のダサさに女性社員たちは幻滅を感じていました。
ところが、土屋百合が広報のチーフに登用されてから広報が変わり始めました。驚くほどの実績をあげながらも「部長補佐」。最終的には、誰にも文句を言わせない実績を叩き出して、堂々と部長に昇進します。
土屋百合が男性だったら、部長昇進までこれほど紆余曲折はなかったのではと思いながらも、彼女がグラスシーリング(見えない天井)を突破した場面では私もスッキリした気持ちになりました。
しかし、まだまだ多くの男性が持っているアンコンシャスバイアスは、日本社会でのインクルージョンを阻んでいます。『逃げ恥』は コメディのようでいて、実は心から笑えない話であると思いました。
2つのドラマからの学んだこと
アンコンシャスバイアスは300種類以上あると言われていますから、森山みくりと土屋百合のキャリアを阻んだ男性たちは、どれか1つのバイアスを持っていたというより、いくつかのバイアスが複合しているように思います。
アンコンシャスバイアスが人材マネジメントの場面で現れると、多くの逸材から才能を発揮する機会を奪ってしまいます。
かといって、アンコンシャスバイアスを取り除くことはできません。
なぜなら、脳の情報処理の負担を軽減する仕組みとして、生存に必要な機能でもあるからです。
竈門炭治郎のように、アンコンシャスバイアスのない目で人と関わることは、実は難しいことなのです。
私たちは、このアンコンシャスバイアスが頻繁に現れることを意識した上で、自分の判断がそれにに基づいたものでないか常に自問し、できるだけ別の視点、観点も入れながら判断することが大切だと思います。
ドラマはドラマとして楽しみつつ、そこに現れるアンコンシャスバイアスを意識し、ダイバーシティ&インクルージョンのモデルケースとして考えてみるのもひとつの楽しみ方ではないでしょうか?
■ 文/東 公成(あずま・きみなり)
国家資格キャリアコンサルタント、DiSC認定トレーナー、プレゼンテーショントレーナー、女性の健康経営アドバイザー
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