私の育休復帰体験〜困ったのはこんなこと
こんにちは。
保健師の小林智美です。
春が近づいてきて、そろそろ育休からの職場復帰が視野に入ってきている方もいらっしゃると思います。
育休復帰というと、私にも思い出すエピソードがいくつもあります。
今回は、そんな私の経験のひとつをみなさんと共有したいと思います。
(組織・団体が特定できないように、少々フィクションを加えています)
「復帰後もぜひ…」のオファーにうれしい手応え
いまや年頃の子どもが2人もいる私ですが、かつて出産を経験する前は、パートや派遣という立場で複数の企業の保健師として働いていました。
理由は、「さまざまな企業の現場を見て保健師として広い視野持ちたい」という気持ちから。「ライフイベントが起きたとき、働き方を自由に選択したい」という思いもありました。
ですから自分が妊娠したときは、契約している企業の仕事をいったんすべて辞め、落ち着いたらまた改めて新たな仕事を探そうと思っていたのです。
実際にそのようになったとき、ある企業が提案してくださいました。
「小林さんが不在の時は本社に助っ人を依頼するので、出産後、戻って来ませんか?」
パートや派遣の立場で引き留めてもらえると思っていなかった私は、「必要とされている」と感じてうれしくなり、ふたつ返事で了承しました。
ただその企業、比較的新しい会社で女性社員が少なく、従業員が産休・育休を取得した実績がありませんでした。
そのため、私が育休後に職場復帰をすると、実にさまざまな現実と直面することになりました。
張りきって早めの復帰をした盲点とは
複数企業で仕事をしている産業保健師は、ひとつの事業所に毎日常駐しているわけではありません。
「育休後も小林さんに仕事を」とオファーをくださった企業も、週1回程度の出勤で、勤務自体が大きな負担になることはありませんでした。
けれど、ひとつ大きな問題があったのです。
育休中は代替の保健師さんに来ていただいていたこともあり、私は早めの復帰を希望しました。ですので、仕事を再開したとき、私の母乳はまだじゃんじゃん出ている状態です。
しかも私は母乳の出が良い方でしたので、仕事をしているとすぐに胸が張ってしまい、勤務時間中に排乳する必要が出てきました。
ところが、育休復帰者がまだ一人もいない会社ですから、職場には安心して排乳できる場所はありません。
本来なら私の職場である会社の健康管理室がその役割を担うべきところですが、出入り口がくもりガラスでできているため、施錠をしても気持ちが落ち着きません。くもりガラスのドア越しにほかの従業員が通るシルエットが見えると、乳房を出して排乳することはどうしてもできませんでした。
せっぱ詰まった私は、しかたなくトイレで排乳をする決意をしました。
母乳は水道の蛇口のように一定方向に出るわけではありません。
乳首には複数の穴があって、そこからさまざまな方向に飛び出すのです。胸の張り具合によって、出てくる量も方向も変わってきます。
便器内にマトを絞って必死に排乳するのですが思うようにできず、トイレのまわりを汚してしまうこともありました。
搾乳機を使えば解決する問題かもしれませんが、「シュポシュポ」という独特の音がトイレに響き渡るのもちょっと…と思ってしまい、使用に踏み切れませんでした。
最終的に落ち着いたのは、トイレットペーパーを床に敷きつめでひざをつき、便器を一部みがいたたうえで、便座を上げ、便器内に排乳し、排乳がすむと持参したウェットティッシュで掃除をするという方法。
ちょっと想像してみてください。
トイレの床にひざをついて、胸の皮膚を真っ赤にさせながら、便器に向かって母乳を飛ばす光景を。
正直、これは本当に疲れましたし、毎回言いようのないむなしさがこみ上げてきました。
パートタイム勤務ですから、排乳をしている時間は労働時間外として申請しましたし、会社にいるのに不在であるということが、「小林さん、最近勤務時間中の離席が多いよね」「サボっているんじゃないの?」なんて思われたら…と、不安や焦りも感じました。
苦い経験だからこそ“経験値”として組織にも提供
「自分は求められている」と感じたうれしさから、勢い勇んで育休復帰をしましたが、出産を終えたからだではたらくには、予想もしていなかった環境が必要になることもあるのだと気づきました。
そして、そうした環境が整っていないと、不便だったり、不快だったり、不安を感じてしまったりするのだなということも。
私は週1勤務だったこともあって、前出の経験以上に状況が深刻化することはなく、そのまま乗り切ってしまいました。
ただ、同じような状況は私が契約している他の会社でも起こっていたため、そうした会社には扉のガラス部分に目張りし、排乳中は施錠をしたうえで「利用中/対応不可:連絡必要時は○○までご連絡ください」と書いた札を下げ、健康管理室で排乳できるように交渉をしました。
もちろん、当事者以外の従業員には、室内で女性が排乳や搾乳をしていることに気付かれないことにも配慮しました。
排乳のための部屋を新たに用意するのは難しくても、今ある部屋の使い方を工夫するのであれば、すぐに準備ができます。
幸いなことに、交渉した会社からはすべて許可をいただくことができ、育休明けの従業員のみなさんは、会社の配慮に感謝していました。
私の苦い経験を他のはたらく女性のみなさんに役立てることができ、保健師としても一個人としてもプラスの経験に変えることができました。
本当に人生って、無駄な経験はありませんね(╹◡╹)。
両立体制をつくるプロセスはぜひ職場でも共有を
私は日頃から、「制度は作るだけではなく周知していきましょう」「不満をためるだけではなく、自己開示や情報共有も心がけていきましょう」とお伝えしていますが、職場を誰もが働きやすい環境に変えていくためにも、こうした意識はやはり大切なのだと感じます。
月経や更年期にともなう女性の大変さは、昨今メディアでも紹介されるようになってきましたが、育休復帰直後の働く女性の苦労は、経験者でなければ想像できないことも多いかもしれません。育休復帰当事者は、ハードで慣れない1日をこなすことが精一杯で、気持ちにゆとりができる頃にはほとんど記憶が残っていない…といったこともあるでしょう(笑)。
けれど今は、どんなライフイベントが訪れても女性も長く働き続ける時代です。
後に続く同僚のためにも、成功体験も失敗体験も自分だけのものにするのではなく、ナレッジとしてできるだけ共有していけるといいですね。
また、これから産休・育休に入る、あるいは育休から復帰するという方で、「周囲に経験者がいないの不安…」という方は、企業が実施している研修やセミナーを聴講してみるのもいいと思います。
私がジョインしている“mezame”でも、従業員の方1名から参加できるフレキシブルな育休復帰者向け研修をおこなっています。
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しかし、とくに初めてのお子さんの育児と仕事との両立生活をはじめる従業員の心中は、おそらく不安でいっぱいです。
育休から実際に復帰してみると、想定していたよりも多くの“想定外”が起こり、自信をなくしたりストレスを蓄積したりを繰り返し、メンタル不調や退職につながってしまうケースも少なくありません。
育休を取得した従業員が1日も早く育児と仕事の両立生活に慣れ、本来のパフォーマンスを発揮できるようになるためにも、復帰後を想定した研修の導入は本人、組織双方にとって望ましい選択になるはずです。
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