ことばのデザインが体験を形づくる
みなさま、はじめまして。
GMOペパボのデザイン部コーポレートデザインチームに所属しておりますmewmo(みゅーも)と申します。
デザイン部は組織横断的な組織で、会社やサービスのブランディングに寄与したり社内コミュニケーションをより良くしたりと、その他にもさまざまな全社的な取り組みを行っています。
そのようなチームの一員として1年間取り組んできたことを振り返りながら、今回は「ことばのデザイン」について少しだけ語ってみようと思います。
「書くこと」や「ことば」に深く向き合った1年
新型コロナウイルス感染拡大により、ほぼ丸1年リモートワークで過ごした2020年。新たな環境も相まって多くの新たな経験を得られた1年でしたが、私がペパボで取り組んできたことは大きく分けてこの3本柱だったのではないかと思います。
1. デザイナーのスキル向上を目指した学びの場作り(イベント企画・運営)
2. ペパボのデザインにおける取り組みの記事化・社外へのアピール
3. 社内のライティングスタイルガイド策定と社内自動校正ツールの開発
こうして見ると、記事を執筆したり、前職の編集者としてのスキルを生かしてライティングに関連するプロジェクトに参加したりと、「書くこと」や「ことば」に深く向き合った1年だったように感じました。
ちなみに今年書いた6本の記事はこちらです。よかったらぜひ読んでみてください。
私たちは「ことば」を通して世界を見ている
前述でも紹介したとおり、この1年では社内のライティングスタイルガイド策定と社内自動校正ツールの開発にも取り組んでいました。しかし、なぜ全社的な取り組みとしてライティングスタイルガイドを策定したり、校正ツールを内製する必要があるのかと思う方もいらっしゃるかもしれません。もしかしたら、そこにコストをかけるだけのメリットがあるのだろうか?とも思うかもしれません。
なぜそこまでライティングに注力する必要があるのか。それは私たちは「ことば」を通して世界を見ているから、です。
言語心理学を専門とする今井むつみ氏は著書『ことばと思考』の中でこう述べています。
ことばは世界への窓である。私たちは日々の生活の中で、特に意識することなく、ことばを通して世界を見たり、ものごとを考えたりしている。
今井むつみ『ことばと思考』(岩波新書、2010年)
また、デザイナーのオリバー・ライヒェンシュタイン氏は自身の会社ブログにてこうWebデザイナーに呼びかけました。
Web Design is 95% Typography
95% of the information on the web is written language. It is only logical to say that a web designer should get good training in the main discipline of shaping written information, in other words: Typography.
Oliver Reichenstein, iA.net(2006年)
https://ia.net/topics/the-web-is-all-about-typography-period
Web上にある情報は95%が言語によって記述されたものだとしたうえで、Webデザイナーはそれらの情報をまとまった形にする専門スキルとしてタイポグラフィを習得しているべきだと言ったのです。
たしかに言われてみれば、私たちはあらゆる場面で「ことば」と向き合うことでしょう。こうして記事を読んでいるときもことばを介して内容を理解をしようとしていますし、何かのサービスを利用するにあたっても、その概要や手順をことばによって理解したり、想像することができます。そして、ことばは正確に物事や意図を伝えるだけでなく、選択することばによってまったく異なる印象や解釈を与えることもできます。
ことばのデザインは体験を形づくるピース
たとえばインターネット事業会社が提供するサービスを例に考えてみましょう。「ことばのデザイン」がされていない場合、どのような問題が考えられるでしょうか?
伝えたい内容がしっかり構造化されていなかったがために、肝心な情報やメッセージが伝わらなかった
サービスの用語が同じ意味でいろんなことばが使われているなどの表記揺れが発生していて、ユーザーの理解を阻害してしまう
会社から発信されるメッセージのトーンが一貫していないので、企業の目指す理念やミッション、社風がこちらの意図するように適切に伝わらない
こうして考えてみると、ユーザーの体験を損なう可能性に、ことばはかなり直結しているように思えます。このようなことが続けば、サービスや企業のコミュニケーションデザインやブランディングにおいて、かなり大ダメージに思えませんか?
サービスのタッチポイントがどんどん多様化していく昨今を考えてみても、ことばによる一貫性のあるコミュニケーションをデザインすることは、ユーザー体験の向上とブランディングに大きく寄与すると考えられます。ことばのデザインは体験を形づくるピースのひとつなのです。
だれもがことばをデザインできるように
このようなことを踏まえたうえで、ペパボのデザイン部ではライティングにお役立ちのツールセット「Kindaichi Suite」を1年ほどかけて開発し、ちょうど昨日(12/2)に社内に正式リリースしました!
「Kindaichi Suite」は次の3点セットで構成されています。
・表記ルール『Pepabo Writing Style Guide』
・自動校正チェックツール『Kindaichi Check Tool』
・用語集『Kindaichi DB』
ガイドラインとそれに基づく自動校正チェックツールをセットで提供することで、レビュー時に指針をもって効率よく校正できるようになっています。さらに、各サービスで設定できる用語集のデータベースを用意することで、校正ツールで各サービスごとの用語の表記揺れもチェックできるようになっているのです。それぞれのガイドラインやツールの詳細については、また別の機会に紹介できればと思います。
こうしたツールセットを用意すれば、だれもがことばのデザインを簡単に行なえる体制がつくれます。今後は職種問わず多くのパートナーに「Kindaichi Suite」を利用してもらい、ことばのデザインから業務の効率化とブランディングに貢献していけるよう今後も継続的アップデートを続けていきたいと思います。
この記事はGMOペパボデザイナー Advent Calendar 2020 3日目の記事でした。2020年も残り1ヶ月ですが、最後までみなさまが楽しく過ごせますように...Advent Calendarもまだまだたくさんのデザイナーが登場しますので、4日目以降もぜひお楽しみに!
それではまた!
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