遺書

以下、誰かに読まれるつもりのないひとりごと。
※死の表現有、メンタルの弱い方は読まないでください。

今後の人生をどう生きたいか。
どう生きるのであれば私自身が納得して人生を歩めるのか。

明るく楽しく生きたいなんて微塵にも思ってないし、そんなふうに誰かに言ったこともない。そう捉えられることはあっても、私は絶対に言ってない。
もし誰のことも気にしない、私個人の願望（我儘）を言ってしまえば、母に会いたいと楽になりたいのそれだけで、本当はずっとずっと思い出を抱きしめて泣いていたい。

でも、これ以上、母を私のせいで苦しめたくないから。私が最後まで人生を前向きに走り切ることが、母の深い愛の証明となるから。何より母が喜んで、誇りに思ってくれるはずだと信じてるから。
だから、命を存分に使い果たしたい。今の私にあるのは本当にそれだけ。

母を助けられなかった、止められなかった。
二度と、大切な人に、ひとり暗く寂しく悲しい場所で、孤独を感じていてほしくないから、母みたいに愛情深く、心が強くて逞しい人になりたい。その為には、私が世界を心底楽しみ、愛する必要があるというだけ。

こんな発信をしてしまう時点で、私のYouTubeチャンネルは、鬱病患者が前向きに生きる為の療養日記。
でも、私があの動画で語ったことは全部本心で、私が母を愛する気持ちが本当なら、やっぱり私は心から変わらなきゃいけない。死なないでと引き留める人が死にたがりじゃ説得力がないし、親孝行には遅かったけど母の喜ぶことがしたい。

私がいま心を乱している理由はここから先。
この世にどうしても許し難い、存在をうまく飲み込めない人達がいる。
一番憎いはずの父親は、自己愛人格障害者だし、病気だし、諦めてるから本当になんとも思わない。客観的にみても彼は孤独になったし、このまま愛する娘に会うこともなく死んでいくから、私は満足してるけど。

未だ飲み込めないのは、母を死に追い詰めた身内の存在。母の命日にしか会わないし、連絡するのは誕生日くらいだけど、心の中ではずっと許せない。
自分には関係ない他人って割り切れない、母を死なせた人達だと私は思ってるから。私の憎悪も知らずに「美優ちゃんが楽しそうで安心してるよ〜」「明るく過ごしていて良かったよ」って平気で言ってくる。死の直後からずっと。
母の生前から、私と母はずっと苦しめられてたよ。
母の遺言にはあなた達のことが書いてあるんだよ。見せてないけど。
私はあなた達の罪悪感を軽くする為に前を向いた訳じゃない。たまに会った時だって志龍の「し」の字も出さないし、旅行に行った話とかは私に聞こえないようにいつもコソコソしてるよね。

本当に馬鹿みたい。昨日のYouTube、何やってんだろ私。
気にしなきゃいいってわかってる。けど、母があまりに報われなくて苦しい。母が死をもって証明しても、ちっともわからない。こんな悶々と時間と心を無駄にしてる私を見たら母は泣くだろうか、じゃあ頑張らなきゃ。

純粋に母の存在を糧に、そして今いる大切な人とのご縁を糧に、
まわりの人達から沢山もらったものをお返ししていきたい。
与えられてばかりでなく、
私から与えられる人になりたいと、その思いだって本心だけど、
でもふと、すごく馬鹿みたいだなって思う。死にたくなる。

432完遂は、どれほど怖かっただろ。
どうしても怖くてできないって、泣いてた。
それでもやり遂げたのは、どれほどの勇気を出したんだろ。

人生で一番大切な映画「Stella」に似てる。
私が高校生で、人生に悲観してばかりで反抗的だった頃。
高校は奨学金を貰って通っていたから普通大学の受験が必須のクラス、でも私はやっぱり美術の道が諦められなくて荒れていた。高3は学校に行かなすぎて基本単位が足りない教科が出てきて、私のせいで授業数が変わったりしてた。（申し訳ない）
そんな時期に母が一緒に観ようといって、ベット・ミドラー主演のStellaを観た。映画が始まる前のStellaの予告で、「私の親友は、母です」というセリフが流れた。それだけで私と母は嗚咽して、私たち止まらなくて、それがあまりに可笑しくて泣きながら笑い転げた。映画をみて、1週間くらいはふとした時に涙が出た。そんな映画だった。

ステラ（ベット・ミドラー）とひとり娘のジェニーとは本当に大親友のような親子関係で、本気で大喧嘩する感じとか、半身のように通じ合ってる感じとか、私と母の関係にすごく似てた。
ステラは元々ちょっとぶっ飛んでるけど、ジェニーが生まれてからは自分のことなんて二の次で、それも母と全く同じ。私の母は若い頃は綺麗でとても尖った人だったけど、母親になってからは全て犠牲にしても、私と志龍に溢れるほどの無償の愛を注いでくれた。

ジェニーに本当に素敵な彼氏とあたたかく裕福な彼の家族が現れた時、ステラは身を引いて、ジェニーにあえて辛く当たり、姿を消す。ラストシーンはジェニーの結婚式。窓からそっと誓いのキスを覗き見て、娘の幸せを確信したステラの満足げな表情で映画は終わる。

母もこの映画と同じだ。母と私はずっと半身のようだった。
重度の自閉症を持つ志龍は、粉の洗剤をリビングにまいて遊ぶし、自分の排泄物を壁一面に塗るし、DSやおもちゃは何度買っても2階から外に投げたり、お風呂に落としたり、私の化粧品は数えきれないくらい遊ばれた。外に出ればずっと声を出していて、ご飯で遊ぶし、顔をひっかいて自傷する。
家には私と母と志龍の3人だけで、すごくすごくすごく大変だったけど、私たち2人、苦労も幸せも全部わかってるから他の人にわかってもらえなくてもよかった。父はモラ男だったけど、母方の身内も父方の身内もみんな口の上手い父親の味方をした。外ズラは完璧な父親だった。それでも、美優が全部わかってくれてるから、いいって。
大変だけどそれ以上に、笑いが絶えない幸せな日々があった。母は私と志龍に全く等しい愛情を注ぐ人だった。私とふたりだけで外出する時は、志龍に悪いな…って気にしてた。

ずっと浮いた話がなくて心配されていた私に、はじめての彼氏ができたことがきっかけだった。その当日は母と沢山お祝いした。告白でもらった薔薇をどうしようかなんて、誰も飲まないお洒落なワインを母と買いに行って、活けた。母が首を吊ったのはその日からちょうど10日後だった。

母は私のことが本当に大切で、大切で、私の幸せが一番で、その為なら自分の命だって犠牲にしてしまった。
志龍のことは面倒見れませんって言いなさいと、何度も言われた。でも、本当はきっと死にたくない、怖いって、そうとも言ってた。デートの為にお洒落してる私のことを見て、「綺麗だね…」って涙目だった。きっと見納めのつもりだった。
最後の日は私が真夜中に帰宅したのに、起きてた。おかえりって言われて、ただいまって返した。死んでしまう数時間前の話。
今思えば、全部全部おかしかった。私が人生で一番浮かれてて、馬鹿で、気付けなかった。
母の携帯には私と彼との写真が保存されてた。でも、死亡時刻の数時間前には好きなアーティストの新曲情報とかLINEの自分用グループに送ったりしてて。脱線したけど。
とにかく、私が親元を離れても幸せになれるという気配が、母に最後の勇気を与えてしまった。

死亡推定時刻は、私が母を発見した時刻から、ちょうど1時間前。朝。私が寝てる時なのか、起きてから決行したかわからないけど、そのくらいの僅かな時間。
警察に連絡して、パトカーや救急車が来た。私は救急車で、ずっと祈りながら泣いていた。救急隊の方に悲痛な声で、「お母さん頑張ったよ」って言われた。現実なのかわからなかった。声も出せない激しく混乱した中で、救急隊の方が「頑張った」と表現してくれたことを有り難く思った。

つらかった。つらい。母はもっとつらかったの。
私これからどう生きていけばいいの、人生楽しみたいとか本当に今更思ってない。どうすれば母が浮かばれるのか、それだけしかない。
楽しく感じる時間は全て現実から逃避した束の間の夢。醒めれば母を苦しませひとり死なせてしまった現実。
助けてほしい。やれるところまで頑張るけど、本当はつらい。

誰にも言えない。死が平等に訪れることが救い。
人生があっという間なら、頑張れるかもしれない。いや、これくらい頑張らなきゃだめだ。
人生なんて終わってしまえば一瞬で、私はこうした多少の浮き沈みがある中でもきっと最後までやりきって、無限の空で母と積もる話を語らう。
楽しみ。大丈夫大丈夫。

母の死を、いつまでも何で何でと責めるのではなく、その勇気と決断を尊重したい。母のことはもう散々苦しめてしまったから。