プロトタイプストーリー作りから始めるWebサイト設計:ノーコードにも活かせる準備術(2)素材集め編
プロトタイプストーリーを作ろう
プロトタイプストーリーは、理想的なユーザー像を描き、その人がサイトで何を体験し、何を得るのかを具体的に描いていく作業です。手順を追って材料を揃えていけば怖くありません!まずは、その手順を見ていきましょう。
材料を集める手順は下記の通りです。
Step 1:サイトやサービスの特徴を羅列する
Step 2:基本的なユーザー像を設定する
Step 3:現在の行動を調べる際の意識ポイント
Step 4:ユーザーの課題を深掘りする
Step 5:複数の利用シーンを考える際の意識ポイント
Step 6:競合サイト・サービスの分析
Step 7:解決策の具体化
Step 8:ペルソナを作成する際の意識ポイント
では、各Stepの内容を見てみましょう。
Step 1:サイトやサービスの特徴を羅列する
最初は、提供したい価値を箇条書きにしてみましょう。ここで大切なのは、できるだけ具体的に書き出すこと。抽象的な表現は避けて、数字や条件を含めて書いていきます。
例えば、ヨガスタジオのサイトなら:
少人数制で丁寧な指導(1クラス最大6名まで)
初心者向けクラスが充実(週10クラス開催)
仕事帰りに通える夜のクラス(平日19時~、20時~)
駅から徒歩5分(屋根付き通路あり)
マンツーマンレッスンも可能(要予約・追加料金3,000円)
ヨガ歴10年以上の講師が担当(全員有資格者)
このように具体的に書き出すことで、次のステップでのユーザー像が描きやすくなり、実際のサイト制作時にも必要な情報が明確になります。
Step 2:基本的なユーザー像を設定する
Step2では、サービスの特徴から想定されるユーザー像を描き、その人の具体的な行動を観察していきます。大切なのは、「この人なら実在しそう」と思える具体性です。理想的すぎず、でも共感できる人物像を作っていきましょう。
下の図はユーザー像設定の際の注意ポイントです。
ユーザー像を描く時の心がけ:
特徴と人を繋ぐ際は「なぜ」を考える
×「少人数制 → 初心者」
○「少人数制 → 他の人の目が気になる人、マイペースで学びたい人」
なぜその特徴に惹かれるのか、理由を考える
一人の人物として統合する
バラバラの特徴の寄せ集めにしない
生活パターンに矛盾がない人物像に
現実にありそうな組み合わせを意識
行動を観察する時の視点
時間軸で見る(朝・昼・夜、平日・休日)
場所で見る(自宅・通勤中・職場)
他者との関係で見る(一人・友人と・職場で)
具体的な行動を書く
×「運動している」
○「通勤時に一駅分歩いている」
×「情報収集している」
○「YouTubeでヨガ動画を見ている」
行動の頻度や継続性も意識
「毎日」なのか「たまに」なのか
「続けている」のか「試してみた」のか
「定期的」なのか「不定期」なのか
現状の解決策も含める
今の工夫や対処方法
うまくいっていること
うまくいっていないこと
情報収集行動に注目
どんなメディアを使っているか
どんな情報に反応するか
どこで情報を得ているか
このユーザー像のポイントに従うと、基本的なユーザー像は下記の様になります。
× 仕事帰りに運動したい会社員
○ 平日は9-18時勤務の会社員
・通勤時に一駅分歩いている(20分程度)
・昼休みにストレッチ動画を見ている
・夜は残業も多く、不規則な生活
・休日は家でYouTubeのヨガ動画を試す
・友人の誘いでヨガを1回体験したことあり
Step 3:日常生活での行動を観察する
Step3では、Step2の想定ユーザーの「今」の行動をより具体的に観察します。ここでの目的は、その人の生活パターンや行動習慣を理解し、次のステップでの課題発見につなげることです。
日常生活での行動を描く時の心がけ:
このように行動を明らかにするときに、その行動を行っている背景(理由・経緯)も細かく観察しましょう。より深い理解ができることで、次のステップの取り組みが具体的になる他、コンテンツ製作のヒントが得られます。
Step 4:ユーザーの課題を深掘りする
Step4はStep3の行動に付随する課題、つまり、表面的な悩みの奥にある本質的な課題を探ります。 本質的な課題を探るときは、「その心は?」「背景にあるのは?」という問い掛けで深ぼっていきましょう
「混んでいる」の本質は? → 人の目が気になる、マイペースで学べない
「ついていけるか心配」の本質は? → 自分の体の硬さを人に見られたくない
「正しいのか分からない」の本質は? → 怪我をしたくない、効果を実感したい
このように、表面的な言葉から、段階的により深い気持ちを探っていきます。このときに表面的には見えない隠れたニーズ(インサイト)が見つかると、 「より共感を呼ぶ言葉選びができる」「本当に必要な機能が見えてくる」 「ユーザーの行動パターンが予測できる」 といった、より効果の高い的なサイト作りが可能になります。
ですが、インサイト発掘は少し難しい?と思われるかもしれません。 この記事の特別付録「インサイト発見ワークブック」をヒントにチャレンジしてみてください。
Step 5:複数の利用シーンを考える
利用シーンを描く際は、「いつ・どこで・何を・どんな気持ちで」という要素を組み合わせて、具体的な場面を作っていきます。下記は利用シーンを描く時の心がけリストです。サイトのテーマによっては下記リストに全部応える必要はありません。ですが、ユーザーの心理状態と行動の関係性を丁寧に描くことは忘れないようにしてください。
複数の利用シーンを描く時の心がけ:
Step 6:競合サイト・サービスの分析
競合分析では、単に「良い・悪い」を判断するのではなく、ユーザーの視点に立って分析することが重要です。先ほどのペルソナや利用シーンを念頭に置きながら分析していきましょう。
競合分析時の心がけ:
競合分析時の心がけとして、特に意識したいのは下記の点です。
単なる機能比較ではなく、使い勝手の視点
ユーザーの感情に寄り添った分析
具体的な改善案につながる観察
これらの分析を通じて、自分のサイトをより良いものにするヒントを見つけていきましょう。
Step 7:解決策の具体化
ここでは、これまでの分析で見えてきた課題に対して、具体的な解決策を考えていきます。大切なのは、単なる機能や情報の羅列ではなく、ユーザーの不安や課題に直接応える形で解決策を組み立てることです。
解決策を考える時の心がけ:
Step 8:ペルソナを作成する際の意識ポイント
ここまできたら、サイトのペルソナ作成ができます。ペルソナとは、あなたのサイトの理想的なユーザー像。このユーザー像に価値を届けることを考えると、サイトづくりの方向性が定まります。ここはこれまでのステップで集めた情報を一人の人物像として統合する重要な作業です。単なる属性の羅列ではなく、生きた人物として描くことを心がけましょう。
ペルソナ像を考える時の心がけ:
このように描くことで、「サイトの訴求ポイントが明確になる」「コンテンツの優先順位が決めやすくなる」「メッセージの トーン が定まる」などが可能になります。
ですが、全部を押さえるのは正直大変です。最低限「現実的な設定にする」「具体的なエピソードを含める」「内面の深掘り方」ぐらいを押さえるだけでも問題ありません。
というのも、ペルソナは「仮説」だからです。
完璧である必要はありません。むしろ、早く作って実際のユーザーに見てもらい、調整していくほうが重要です。
ペルソナの例
特別付録 1:インサイト発見のコツ
インサイトと言われてすぐにピン!と来ますか?ここでは行動の裏にあるホントのニーズを指します。別名、それを言われると行動したくなる本音ともいいます。ですが、人によってインサイトの定義が異なることが多いです!仕事で使うときは必ず確認しましょう。
例えば:
行動1:ヨガスタジオを検索する
表面的な理由:運動不足を解消したい
インサイトの例:なんかおしゃれさがあってココロと体を同時に無理なく健康になりたい
行動2:料金ページを何度も見る
表面的な理由:予算を確認したい
インサイト:行けないときに損しちゃうかなぁ
など、インサイトは、その人の「価値観」 「欲求」 「不安」「 希望」 といった内面に触れるものです。むしろ本音過ぎて人には言えないっていうこともインサイトに現れます。
インサイトは隠れた意識なので、本人が自覚していないことが多いです。観察者が「見つける」ものです。そのために、サイトやサービスの顧客や顧客候補の人にインタビュー(デプスインタビュー)を行い、インサイトのヒントとなる情報を見つけてます。
でも、時間や機会の制約、予算(!)でインタビューができないことも多々あります。 そんな時は、以下のような方法でインサイトを探ることができます。
インサイト参考情報源
SNSでの生の声を探る
インスタグラムのハッシュタグ検索・Xの投稿
コメント欄での会話から不安や期待を読み取る
Yahoo!知恵袋や大手小町など質問を確認
「どうやって選べばいい?」系の質問の背景にある不安 から質問の仕方や言葉選びをチェックし、気持ちを読み取る
レビューやクチコミを深読み
Google Maps、Hot Pepperなどの口コミ
評価の理由の中で、「でも」「けど」の後に書かれる本音に注目
身近な人の経験を聞く
友人や家族で該当する人に「そう思った経緯は?」と掘り下げて具体的なエピソードを引き出す(「なぜ」という問いかけは追い詰めているように聞こえるのでなるべく使わない)
自分の経験を掘り下げる
似たような経験をした時の気持ちを思い出す →その時の不安は何だったか →どんな情報があれば安心できたか →決断のきっかけは何だったか
インサイトを分析して見つける時のコツ
行動の「前後」に注目する
「ヨガを始めたい」の前にある「このままじゃいけない」という危機感
「でも混んでるのは嫌」の後にある「人に見られたくない」という本音
矛盾する言動にも注目
「健康のために始めたい」と言いながら「痩せたい」が本音
このように集めた情報を総合的に見ることで、表面的な言葉だけでは見えてこない、深い理解が得られます。これをペルソナ作りに活かすことで、より実在感のある人物像を作ることができます。
ただし、これらの方法にも限界があることは意識しておきましょう。可能であれば、サイト公開後にユーザーの反応を見て、当初の想定が正しかったかを確認し、必要に応じて修正を加えていくことをおすすめします。
(3)実践編では、集めた情報を元にストーリーを作るコツをお伝えしています。