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アーカイブプロジェクト|ホームビデオ鑑賞会
「めとてラボ」は、視覚言語(日本手話)で話すろう者・難聴者・CODA(ろう者の親を持つ聴者)が主体となり、一人ひとりの感覚や言語を起点とした創発の場(ホーム)をつくることを目指したラボラトリーです。
コンセプトは、「わたしを起点に、新たな関わりの回路と表現を生み出す」こと。素朴な疑問を持ち寄り、目と手で語らいながら、わたしの表現を探り、異なる身体感覚、思考を持つ人と人、人と表現が出会う機会やそうした場の在り方を模索しています。
そのなかの活動のひとつ「アーカイブプロジェクト」では、「手話から生まれる自然な生活文化の保存」をテーマに、手話やろう者の生活文化の新たなアーカイブ手法とその活用についてリサーチやディスカッションを重ねています。そのはじまりとして、まずはろう者の家庭で撮影された「ホームビデオ」の鑑賞会を行い、ろう者の自然な姿や会話のやりとりの様子を見ながら、めとてラボメンバーと語り合う会を開きました。今回は、その鑑賞会の様子をめとてラボメンバー・岩泉穂がお届けします。
岩泉穂は、1998年生まれの東京都江戸川区出身。インテグレーション。生まれつきろう者で家族や親戚含め、ろう者に囲まれ育つ。福祉施設の採用関係の仕事や聾学校の乳幼児相談室の相談員として勤めている。
「めとてラボ」では、アーカイブプロジェクトなどを担当。
ホームビデオを通して見えてくる文化と工夫
今回、私、岩泉穂の母の実家である“井岡さん家のホームビデオ”鑑賞会を行いました。この鑑賞会のきっかけは、ある時、「移動する中心|GAYA」の活動や、8ミリフィルムをデータ化して上映するアーカイブプロジェクト「世田谷クロニクル」の存在を聞き、興味を持ちはじめた頃、「私の祖母の家にちょうど8ミリフィルムが見つかった!」というのがはじまりです。
めとてラボメンバーで話し合い、まずはメンバー間で一度、“井岡さん家のホームビデオ”鑑賞会をやってみようか、ということになりました。
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私の母の家族は全員ろう者です。
母からよく幼少期の思い出話を聴いていました。その話を聴く度に、そんな面白いやり取りを実際に観ることができたらいいのに!とずっと思っていたので、その8ミリフィルムのホームビデオを実際に観た時は、とても嬉しくて温かくて言葉には言い表せないのですが全身がゾクゾクしていました。
母の幼少期の思い出話を聴いた上でそのホームビデオを観ると、ビデオの奥にある目には見えない文化だったり、暮らしのなかの工夫が浮かび上がってきます。
めとてラボの「アーカイブプロジェクト」は、さまざまなろう者のホームビデオを収集し、いろいろな人と一緒に鑑賞していくことで、今まで気づかなかったところに文化や工夫が繰り広げられていたことに出会えるのではないか、という仮説と期待からはじまっています。
“井岡さん家のホームビデオ”鑑賞会
今回、ホームビデオに映っている私の母や叔父をお招きして、ふたりの幼少期のエピソードトークとともにホームビデオを鑑賞しました。
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小学校の運動会です。
いつもかけっこで1番の叔父、いつもかけっこでビリの母。
叔父はリレー選手になって、いつもアンカーでした。
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叔父「僕は足が速かった方で、いつもリレー選手に選ばれるほどです、笑。スタートラインに立つ時、ピストルの音が聞こえないのでいつも顔を上げて、ピストルの煙が出るまでずっと見ていたことを今でも覚えています。そして、ピストルの音が聞こえなくてスタートが遅れがちだから、僕はいつもアンカーでした。」
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母や叔父の幼少期は口話教育が推奨されていました。私にとって、口話教育とはすごく辛く苦しくて嫌なイメージです。実際に苦しんでいたろう者がたくさんいたからです。
しかし、ホームビデオを見てみるとゲーム感覚で楽しく練習しています。
根本「発音の練習に抵抗はありませんでしたか?」
母「私たちはそういうものだと思っていて抵抗はありませんでした。ただ、昔は筆談をお願いしても相手は字を書けない人だったり、例えば、木材を買おうと思い木材の場所をお店の人に聞こうと思っても細かい木の種類まで説明できなかったり、何かと困ったことがありました。少しは発音ができていた方がいいのかもしれない、と私の父は言っていました。」
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初めてのホームビデオ鑑賞会を終えて
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今回、ホームビデオ鑑賞会を経て、めとてラボメンバーだけでなく、私の母や叔父にも変化がありました。
母「今回の企画に参加させていただいてから、色々考えさせられたことがありました。私の母の家族は9人兄弟のうち母を含め3人がろう者です。
ホームサインを色々作っていた母の兄弟や祖父母は、家族同士のコミュニケーションを大切にしようという思いがあってのことなんだと、改めて知ることができました。
聴者とかろう者とか関係なく、家庭のなかのコミュニケーションが充分にとれる家庭が増えて欲しいと願っています。」
叔父「しばらく使っていなかったホームサインを懐かしく思いながら手話べり(手話でおしゃべり)する貴重な時間を設けさせていただき、改めて家族同士のコミニュケーションの大切さを感じました。」
母や叔父の感想を聴いて、アーカイブプロジェクトを行うことで、生活文化を模索して新たな発見をしていくだけでなく、こうしたプロジェクトに携わった人たちに良い変化をもたらす力があるのだと思いました。
最後に、娘として、姪として、この企画に携わってくださった皆様に感謝申し上げます。
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【「めとてラボ」noteについて】
このnoteでは、「めとてラボ」の活動について、実際に訪れたリサーチ先での経験やそこでの気づきなどを絵や動画、写真なども織り交ぜながらレポートしていきます。執筆は、「めとてラボ」のメンバーが行います。このnoteは、手話と日本語、異なる言語話者のメンバー同士が、ともに考え、「伝え方」の方法も実験しながら綴っていくレポートです。各回、レポートの書き方や表現もさまざまになるはず。次回もお楽しみに!