レトロタイルなお風呂のひととき。
実家のお風呂はとても古い。写真のようにタイル張りだ。物心がついた頃から入っているから、僕にとっては当たり前の景色。
浴槽は、昔ながらのステンレスだ。よくよく見たら、象形文字みたいな模様が入ってら。当たり前すぎて、今の今まで気づかなんだな。
お風呂に入るのは、決まって夕暮れどき。風呂場の窓から西日が差し込み、オレンジ色に染まる頃だ。
お風呂に肩まで浸かり、一日の疲れをゆっくりと癒す。至福のひとときとは、この瞬間を言うんだろうな。
入浴剤は日替わりで。最近はもっぱら、全国の名湯シリーズに傾倒している。お気に入りは、山形県は銀山温泉の入浴剤だ。ほのかに香る硫黄の匂いが心地よい。
「ふぬあぁぁぁぁぁぁ~」
すっかりふやけきった声が、自然とこぼれ出た。
いい湯だな いい湯だな
湯気にかすんだ 白い人影
あの娘かな あの娘かな
ここは上州 万座の湯…
デューク・エイセスの名曲「いい湯だな」が、何度も何度も頭の中をループし続けていた。
そんな、“レトロタイルなお風呂のひととき。”なのであった。