仕事終わりに吸い込んだ夜気は、
深夜まで働いたあとに外に出る。両腕を左右に大きく広げ、深呼吸をひとつ。あたたかな空気が鼻腔を通って体内に染み渡ってくる。この時僕は、春を感じた。
体の芯までキンと冷えきるような冷たさはどこへやら。もうすっかり冬は去ってしまったようだ。結局、昨年に続いて今年も雪はほとんど積もらぬまま。雪寄せをする手間がなくて助かるっちゃ助かるんだけどね。
ああ、もう少しだけ積もっちゃっても良かったのになあ。もうちょいだけ冬にまみれていたかったのに…。
さよならね、冬さん。また来年逢う日まで。
部屋に戻る前に僕はもう一回だけ、春の夜気をそっと吸い込んだ。
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