出目金になりたい。
以前、千葉に住んでいた頃に、東京のとある公園へ遊びに行った。学生時代から仲のよい友人2人と、散歩がてら訪れたんだ。公園の名前や場所は、すっかり忘れてしまった。
その公園は、水生生物の保全活動に力をいれているらしく、園内にはビオトープや観察施設があった。
とくに惹かれたのは、さまざまな金魚を繁殖している施設だった。ピンポンパール・リュウキン・コメット・和金…。いろんな種類の金魚が、小さなプールのような場所で泳ぎ回っていた。
そのなかでもとくに、僕は出目金に魅了された。調べてみると、どうやらリュウキンから派生した種類みたいだ。水面の波紋で揺らめきながら、陽光に反射して輝く真っ黒な魚体は、このうえないほど神秘的だった。
「かっけぇ……」
心の声が思わず洩れる。
それに、改めて考えると、目が飛び出ているのは面白い。左右に大きく飛び出た目は、見れば見るほど愛おしさを感じる。
目が飛び出ているぶん、ほかの金魚よりも視界が広いのかな?などど思って調べてみたら、どうやらそうでもないようだ。むしろ、視力は弱いほうらしい。
一度くらい出目金に転生して、視界の広さを体験してみたかったな。出目金さんよ、目の悪さはあっしと同じでやんすな。