2020年7月に読んだ本まとめ

2020年7月に読んだ本を多少の備忘録とともにまとめるやつです。


二語十「探偵はもう、死んでいる。3」

夏凪、斎川、シャル、そして君塚とシエスタを取り巻く4人による、シエスタとの物語のエピローグにしてプロローグ。
4人それぞれの立場から、それぞれの抱えていたものからの卒業が描かれており、次なる1歩を踏み出す大事なエピソードになったように思います。
次々と惜しげもなく新しい派閥や設定、背景が飛び出してきて、世界観そのものが読者を息つかせるつもりもないノンストップ感が魅力的でした。
斎川の魅力が良い感じで描かれていて、彼女のことがより好きになってきました。


丸戸史明「冴えない彼女の育てかた」

運命的な出会いを果たした、徹底的なまでに冴えないヒロインを、ギャルゲーのヒロインとして理想的な萌えヒロインに育て上げよう、っというお話。
キャラクター陣見たときに「なんでこの表紙?」と思ってたんですが、正ヒロインを見て納得しました。
いまいち萌えない、冴えないヒロインの加藤さんがかなり可愛かった(かなり違和感のある文章)です。
優しくて気兼ねなく話せる女友達、いいじゃないですか。
その加藤さんをヒロインに育てるという作品コンセプトもおもしろく、かなり魅力ある作品だなと思いました。


藤まる「明日、ボクは死ぬ。キミは生き返る。2」

1日おきに入れ替わるシステムのために光と直接しゃべることも触れ合うこともできない秋月ですが、1冊のノートを通じて行われるふたりの軽妙なやり取りはとにかく読んでいておもしろいです。
登場人物たちにもツッコミどころが満載で、ヒロインが死んでいる悲愴感すら上回る楽しさのパワーが強かったです。
2巻では光がやたらと入れ込む魔性の後輩や、光が生きていることを知らない母親など、より深く光という女の子の優しさや弱さ、強さ、なんてものを感じさせてくれる物語でした。
読み物としてすごく惹き込まれる、良作です!


西尾維新「撫物語」 

いやこれ、すっごい。
斧乃木ちゃんの助力を得た撫子が、過去の撫子の姿をした4人の式神を作ったはいいものの逃げ出してしまったので追いかけ回す話です。
1冊まるまる撫子の話なのですが、今まで蛇に取り憑かれたりキレたり神になったり引きこもったりと良いところがあまりなかった撫子を、ようやくじっくりスポットライトを当ててその人物像、それからその成長を描いてくれた感じがしました。
単純に撫子のことが今までよりもずっと好きになれた感じがしますし、彼女のことを深く知れたことで今までのエピソードもまた少し違った印象になりました。
撫子のような自分に自身が無く傷つきやすい、被害者意識のある人たちには、読んでいてハッとされられるシーンもいくつかありました。
撫子の成長と共に読んでいて自らも一緒に成長できたり意識が変わった感覚があって、絶対にそんな意図はないと思うんですが少し自己啓発的なような得るものがある作品だったかなと……。
とにかく撫子のために書かれた作品であり、撫子のことをもっと好きになれる1冊でした。


トネ・コーケン「スーパーカブ」

スーパーカブを愛する作者が、スーパーカブを愛してほしい読者の方々に向けてかきあげた作品って感じでした。
地味で冴えない女の子がスーパーカブと出会い、愛着を持ち、カブ乗りの友人ができて、世界を広げていく物語です。日常系スーパーカブ。
スーパーカブにまつわるパーツ周りの描写がかなりしっかりしているので、その辺の知識が分かる方が読むとかなりグッとくるものがあるのではないかと思います。
派手ではないけど着実に心動かされている小熊の心象が読んでいてこちらも揺れ動かされる感覚があり、要するに読むとスーパーカブに乗りたくなる。


風見鶏「放課後は、異世界喫茶でコーヒーを」

これは個人的にかなり好きでした。
現代日本から異世界にやってきた主人公のユウが、ファンタジーな世界観の住人たちを相手に喫茶店を始めるお話です。
剣も魔法も登場しない、日常系ファンタジーとしてゆるく楽しく読める作品でした。
派手な展開こそ無いですが、だからこそ喫茶店でくつろぐたくさんの常連客たちの描写が細やかで、彼らのコミカルなやりとりはいつまでも読めるくらい楽しいものでした。
キャラクターがかわいいと、やはり読んでいて嬉しいものですね。
ゴル爺やファルーバさんといった男性キャラクターも魅力的なのが素晴らしいです。


成田良悟「デュラララ!!SH」

帝人達の世代から1年半が経過した池袋を舞台に、首無しライダー不在の中発生した不穏な失踪事件の物語です。
新入生の八尋と久音はどちらも池袋にふさわしい曲者で、ここから引っ掻き回してくれることに期待したいです。
姫香はまだ本格的に絡むのはこれからといったところでしたが、表紙でめちゃくちゃ胸元がはだけてるのはなんだったのか……。
時間が経っても、なんなら首無しライダー不在でも池袋はこれまでと同じように物騒に回っていて、新シリーズも楽しめそうな期待感に満ちた1冊でした。
定番のメンバーの出番は安定感がありますね。


かめのまぶた「エートスの窓から見上げる空 老人と女子高生」

学校の外れで、女子高生の太ももを覗けるスポットで女子高生と老教師が太ももを覗きつつ謎解きする物語です。
ミステリというほどガッツリした謎解きではありませんが、地味で冴えない女子高生がいろんなことと向き合う青春小説として楽しめる作品でした。
太ももを覗けるスポットという導入こそ軽いものですが、本筋で描かれるのは憂海の憧れる先輩とのエピソードや過去の後悔であったりと、しっかりとしたテーマのある物語でした。
あと憂海は意外とリア充。
受賞時のタイトル「老人と女子高生(うみ)」いいタイトルだな、と思ったり。


有象利路「ぼくたちの青春は覇権を取れない。 ‐昇陽高校アニメーション研究部・活動録‐」

いやこれはめちゃめちゃおもしろかったですよ。
副題にある通りのストーリーで、アニメがテーマの作品なのですが、そのアニメがキーワードとなってしっかり学園ミステリとして成立してるのがめちゃくちゃおもしろいです。
テーマがアニメだからこそ登場する薀蓄などもスッと飲み込みやすく、アニメに関する見聞も広がります。
そして何よりアニメーション研究部に在籍するメンバーがことごとく魅力的で、彼らのやり取りを見ているだけでもとても楽しいです。
極度の話下手で主人公の九太郎にしか何を言っているか分からないヒロインの岩根さんや、アニヲタ部長の幼馴染として某テンプレ要素を持つ馬越先輩など女性陣が非常に可愛らしく微笑ましいです。
この作品は読み切り作品として続刊はありませんが、このあとの物語を読んでみたい、まだまだ彼らの活躍を見ていたい、と思わせるだけのパワーのある作品だと感じました。
個人的には、めちゃくちゃ好きです


川原礫「ソードアート・オンライン13 アリシゼーション・ディバイディング」

前巻12巻で衝撃的幕引きとなったところでその続きがどうなることかとものすごく気になっていたのですが、さすがはキリトさんでした。
絶体絶命に次ぐ絶体絶命を乗り越えていく様は、まさに主人公です。
一方でキリトと離れ離れとなってしまったユージオにも次なる戦闘、そして新展開が待ち受けています。
この巻も「続く」で終わってしまうので、長いアリシゼーション編もまだまだ楽しませてもらえそうです。
個人的には、ようやくアリスに対してしっかり物語のスポットライトが当てられていたのも良かったですね。

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