2020年6月に読んだ本まとめ

2020年6月に読んだ本を多少の備忘録とともにまとめるやつです。


瘤久保慎司「錆喰いビスコ」

いや……ちょっと、期待していた以上にめちゃくちゃおもしろかったです。
物語は、すべてが錆びついた荒廃した世界を舞台に、錆を食って育つキノコを操る主人公・ビスコが霊薬キノコを求めて旅をするというもの。
姉をサビツキから救うために霊薬キノコを求めるミロとの道中は困難の連続で、そこを度胸と知恵で突破しまくるのは爽快でした。
クライマックスにはこれ以上無いくらいの大きなピンチがあり、そして胸が熱くなるドラマがありました。
これ以上無いだろ、という盛り上がりを見せた展開から、そこから更にもうひとつ上の熱い展開が待つ。
凄まじいストーリー展開で、めちゃくちゃおもしろいとしか言いようがないです。
1冊の中で、相棒との出会いと冒険、目的を果たしてからの悪役の介入に、ラストバトルと……まるで1クールのアニメを一気に全話見たみたいな満足感がありました。
熱い冒険物語に欲しいものがすべて詰まっていて、そら新作でありながらこのラノ作品部門獲るわ、と……。
いやこれは本当におもしろいので、少しでも興味あれば絶対読んでほしい作品です……!


桜場コハル「みなみけ 第20巻」

「動きでわかれ」「早めに帰る」「困った人」「誰の??」がおもしろかったです。
藤岡がカナと近づいたり近づかなかったりと、順調にラブコメしててよかったです。
今巻ラストで記念すべき「373話」も到達。
それでもいつも通り、これからもみなみけの日常は続いていく。



井上とさず「放課後スイッチ 第1巻」

どこにでもいるような「ちょっと変わった女の子」たちの日常を切り取って描いた物語。
クラスすら異なる別々の友人関係に、少しずつスポットが当てられていく。
個人的には科学部の変わり者の早苗と、その友人で振り回されてる凛のコンビが好き。
ひねくれ者の早苗が突拍子もないことをしたかと思えば、地に足ついた現実路線の女の子の凛のツッコミがうまく作用して、とても好きなコンビ。
凛かわいい。眉毛が太くてかわいい。
お金持ちなのにお金持ちっぽくない、西園寺さんもかなり印象的なキャラクター。
どんどんいろいろ交差してほしいな。


伊坂幸太郎「死神の浮力」

人の生死の可否の判定を行う死神の千葉と、彼が調査を担当した、娘を殺され復讐を誓う山野辺夫妻の物語。
500ページ超のボリュームある物語だったのですが、読み終えての満足感がすごいです。
自分の娘をサイコパスに殺されたため復讐をする、というのが大筋なんですが、山野辺夫妻サイドの攻勢とそれを受けてのサイコパスの犯人側の攻勢とが火花が散らし、そこにかなりズレた死神の千葉さんまで交じるものだから、あちこちに伏線があって回収されてまた伏線があってみたいな、一読しただけでは堪能しきれないだけの山場だらけの物語がそこにありました。
物語の中で山野辺が語る「サイコパス」や「死」についての概念もおもしろいし、千葉さんのズレっぷりはいくら読んでも飽きないくらいに楽しませられる。
とてもおもしろい作品でした。


玩具堂「探偵くんと鋭い山田さん 俺を挟んで両隣の双子姉妹が勝手に推理してくる」

いやーおもしろかったです!
探偵を父に持つごく普通の主人公戸村和と、その両隣の席の双子姉妹が、戸村くんに持ち込まれた厄介事を解決していく学園ミステリです。
人が死なない、そして嫌味っぽさも感じられないライトもライトなミステリでとても読みやすかったです。
さすがは「子ひつじは迷わない」で学園ミステリの実績のある玩具堂さんの最新作、といったところでしょう。
ヒロインである山田さん姉妹は双子でありながら似ていない、自由気ままで鋭い発想力を持つ雨恵と、生真面目ながらも深い知性を持つ雪音。
正反対ながらも魅力的なダブルヒロインといえるでしょう。
個人的には、推理物に興味津々でエロエロ(じゃない)雪音がお気に入りです。
ミステリ、学園青春、そしてラブコメとしてもうまく仕上がっていてこれからが期待できる作品だと思います。
続刊は未定とこのことです、これはぜひ継続して読んでいきたいですね……!


横田卓馬「ポンコツ風紀委員とスカート丈が不適切なJKの話 第3巻」

微笑の妹が学校見学に来る話と、ドッジボール回とBL回。
あとなぜかラップバトル回がある。
男女混成でドッジボールやるのやばすぎる……。
微笑はかわいい。
マン研のメンバーがみんなかなり良質に腐っているようなので、また出てきて今度こそ微笑を沼に引きずり込んであげてほしい。


橘公司「デート・ア・ライブ 11 鳶一デビル」

10巻の鳶一エンジェルから続く、折紙編の完結巻。
折紙の暴走を止めるため、5年前の天宮市に飛んだ士道が、彼女の過去を救うエピソードです。
折紙に宿った復讐心を解決させる物語としては、これ以上無いストーリーだったのではないかと思います。
これでようやく、ようやく折紙も数多のヒロインたちと同じスタートラインに並び立つことができたのではないでしょうか。
きっと折紙の振る舞いは変わることなく士道に迫り続けるのでしょうが、だからこそこれからの未来のために必要なエピソードだったと思います。
というかあの見開きイラストは……!
あの見開きページこそ、折紙こそがデート・ア・ライブの正ヒロインであったことの証左ではないでしょうか?
清楚な折紙も可愛いですが、やはり私は負担の強硬派な折紙のことが好きです。


駱駝「俺を好きなのはお前だけかよ14」

本当にこのシリーズは、ラブコメでありながらサービスとサプライズにまみれており、読者を驚愕の渦に突き落としてくれる。
というわけでいよいよ二学期の終業式。
前々から言われていたように、パンジー、ひまわり、コスモス、サザンカの4ヒロインの中からたったひとりの誰よりも大切な人をジョーロが伝える日です。
多数ヒロインでありながらしっかりジョーロの選ぶヒロインを決めたのは作品として素晴らしいと思うし、そこから選ばれなかった子たちのこともぞんざいにせずに描くべきことは描ききってくれたのかなと。
いやあ、凄いラブコメです。


伏見つかさ「俺の妹がこんなに可愛いわけがない14 あやせif 下」

まず、2020年になっても俺妹の新たな物語が読めることに感謝を。
ストーリーは本編とは異なる道筋をたどる、あやせルートのifの物語。
下巻はあやせと付き合い始めたところからスタートなので、のっけからイチャ付きまくりのダダ甘。
そのうえで調子乗ってあやせに怒られるところまでセットで、あの愛おしいラブリーマイエンジェルあやせたんが見事なまでに輝いていました。
それだけでなく、本編とは異なるルートである以上立ちふさがる存在である桐乃とも折り合いをつけ、素敵なハッピーエンドの未来を描ききってくれたのはとても嬉しかったです。
ifとはいえ、(桐乃も含めた)ヒロインたちの幸せそうなラストを見ることができたのはとても感慨深かったです。
本編を読んだ方にこそ、この、ifではありますが幸せに満ちた物語を辿ってほしいなとも思いました。


西尾維新「掟上今日子の退職願」

忘却探偵と、彼女に捜査協力を仰いだ4人の女性警部たちの短編4作品を収録。
事件はバラバラ死体、飛び降り死体、絞殺死体、水死体といずれもブラックなテーマですが、とぼけた今日子さんのスタンスはいつも通りなので楽しく読むことのできる作品です。
女性警官が相棒役となることで、警察視点から今日子さんがどのように扱われているのかがわかる1冊でした。
個人的にはバラバラ死体のエピソードが、その真相のぶっ飛び具合まで含めておもしろかったです。


のり伍郎「どうやらボクの花嫁は女騎士団なようで。 第1巻」

異世界から来た4人の女騎士に結婚を迫られる話。
ヒロインの4人がそれぞれ個性的で可愛いけど、それゆえに1巻では顔見せ・個性を見せるのに終止してストーリー方面はややスローペース。
ヒロインたちが可愛いので、うまく全員デレさせてラブコメ方向で話が転んでくれたら嬉しい。
今のところ見せ場がゲームしてるとこしかないけど、今のところは気の強い女騎士のモニカが好きです。
基本的にのり悟郎さんの気の強いヒロインは好き。


A・A・ミルン「赤い館の秘密」

『くまのプーさん』で知られるA・A・ミルンによる長編探偵小説。
田舎の名士の館で殺人事件が発生し、そこにたまたま居合わせた素人探偵が調査に乗り出す物語。
書かれたのはなんと100年前という古典ミステリです。
探偵役はギリンガムが務めますがその友人のべヴァリーがワトソン役を務め、ストーリーが進むのと同時に探偵の推理も明かされていくので、かなり古典ミステリの正統派な構造の作品だったなという印象があります。
トリックに対しては触れませんが、なるほどそうか、という驚きがありました。
ユーモラスな文章は読みやすくて好きな文体。


岬鷺宮「日和ちゃんのお願いは絶対」

いやこれすごいわ。
帯にも著者コメントにも書かれてるから書くけど、めちゃくちゃ真っ向からセカイ系でぶん殴ってくる作品でした。
ヒロインの葉群日和は、『お願い』をすれば聞いた者は絶対に従ってしまうという能力を持っています。
しかもその能力を用いて、世界を動かす規模の活動を秘密裏に行っています。
そんな彼女から告白された頃橋深春が、日常生活の中にいる自分と世界レベルの存在である日和との狭間で揺れ動く様が作品のキモになっているのです。
日和という存在の正体が明かされるシーンは、実に秀逸でした!
まるで終わりたがっているかのように混迷を極める世界の中で、日和と深春の恋物語は始まったばかり。
セカイに向かってたったひとり、もしくはたったふたりで立ち向かう恋物語は、まさしくセカイ系。
自分はあまりセカイ系には触れてこなかった人間ですが、そんな立場でもはっきりと「セカイ系じゃん!」と叫べるくらいの完成させた作品ですので、もしもご興味ある方はぜひ触れていただきたい作品です!

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