めずらしい会話。
映画監督のクエンティン・タランティーノには、友人とした会話、
その中で披露されたジョーク、印象に残った言葉などを忘れないようにメモに残す習慣がある。
これはその後の創作に活かすため。
高明な映画監督であろうと、何もないところから傑作は生まれない。
最近読んだ本に書いてあった。
タランティーノ作品って、多分2本くらいしか見たことないかもしれない。
パルプ・フィクションとワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド。
どちらも、ものすごく独特な映画だったと記憶している…。
映画を見るという普通の感覚でみたら、終始⁇⁇かもしれない。
かなり説明を省いていたり、何も意味がないというか、綺麗な起承転結がないことが狙いのような気がする。
ありのままを切り抜く。
それゆえのリアルさ…みたいな。
全然深追いしてないので、実のところくわしいことは分からないけど。
だけど、不思議と頭に残っていてクセになる部分があることは確かだ。
初めてパルプ・フィクションを見たのは2年くらい前だと思うけど、なにか家事をしながらつい片手間に見てしまった。
気がついたら全くストーリーが追えていない。
再度初めから、今度は集中してみてみた。
結局なんの話か分からなかった。
どうやら片手間にみようがみまいが、筋はわからなかったみたい。
そういう作品なんだと解説には書いてあった。
わくわくするところはあったけど、まあまあかな〜と思った。
けれども、次の日になって。
当時はまだホテルに勤めていて、ハウスキーピング中、階下に広がるお庭のプールを眺めながら無心で窓を拭いていたら、どうしようもなく、ブルース・ウィルスやユア・サーマンのことを考えた。
そうして
ああ、あれってやっぱりいい映画だったんじゃないかしら。
となんとなく思った。
こんなに時間がたっても、惹きつけてくるものがあるんだもん…
みたときには衝撃すぎて何が起こってるかすら分からないんだけど、
私がみたものは一体なんだったんだろう…
と引きずってしまう魅力。
一直線に最高!と言う言葉には行きつかない。
映画にはこのタイプの傑作があることを初めて知った。
ものすごくゆっくり思考することで、深みがやっとわかってくる。
うまく言語化できない深みだけど。
切れ味が鋭すぎて切れたことにも時間が立たないと分からないような、ナイフみたいな映画。
ワンアポの方もやっぱりなにも知らないままに見たら、⁇の部分は多かったけど、史実もからめてあれこれ調べたら、監督がやりたかったことは結構すんなり理解することができた。
なにより、ブラピとレオ様の暴力シーンが私史上最高に過激すぎて、過激すぎると人は嫌悪や恐怖を通り越して、え!そんなにぶちのめしちゃうの⁈まじ?って、もはや笑けてくるんだな…と自分の反応に自分で驚くという新感覚をもたらしてくれた。
なにが、とはスパッと言えないけど、素人ながらにすごい監督さんなんだと思う。
仕事が半分終わったお昼時。
あんまり今日は食欲がない。
がっつりご飯は食べたくない。
なんか、無性にフレンチトーストが食べたい…
と思い、徒歩10分圏内のフレンチトーストのお店を検索する。
そんな都合よくあるわけ…と思ったら、かわいいカフェがひっかかった。
こぢんまりしたカフェで、どこでもいいですよ〜と言われたので、カウンターじゃなくて、居心地良さそうな2人がけの椅子に座って待つ。
私はカフェの時間が好きだ。
飲み物をゆっくり飲みながら、本を読んだり、書き物をしたり、マイペースに作業するのが好き。
貴重な休憩時間、楽しもう〜。
と思ったのだけど。
まったく本に集中できない。
というのも、お隣の席の男女の会話がどうしようもなく耳に入ってきてしょうがない。
女性は珍しい着物姿で、おそらく私と同じくらいか年上。男性は背広で50代くらい。
マッチングアプリ…おみあい…商談…
あれこれ勘繰るけど、みえてこない関係性。
ああ、もう。
私はシャーロック・ホームズにはなれないな。
ちっとも分からない。
というか、わからなくてよい。
貴重なお昼の読書!集中!
けれども2人の会話はとても弾んでいて、好んで聞こうとしなくてもあらゆる情報が私の方に流れ込んできた。
店内でそこまで盛んに会話をしているのは、この2人くらいなものなのだ。
普通では聞かない単語が飛び交っていていちいち耳が反応してしまう。
愛用のヘッドホンしてもだめだな、これは。
諦めよう。
僕もお姉さんに試してご覧なさいと言われて、鼓を叩いたことはあるんだけどね、あれは脇で持つのと、肩に担ぐのと何か違いはあるのかな?
流派によって違いはありますけれども、大元は一緒です。私もお師匠さんに習って叩いたことあります。手が結構痛くなる。
そうそう、そうなんだよね。痛いよね。
三味線とかも最高だよね。津軽三味線とか、勢いがさあ。もう叩くって感じでさあ。
そうですね。叩くって表現もありますけども…私も三味線は引いたことがありますが、あれは別物です。私の流派の家元が…
そうなんだ。レストランとかでああいうの聴くと、食事代、タダになった気分になるよね。
ほんとに。だんだん継ぐ人もいなくなっていきますけれども、大事にしてくださる方は貴重です。
女性の方は芸妓見習いか、なにからしい。
家元も、流派も、お師匠さんも、私なりに普通に生きてたらあまり耳にすることのない言葉たちだ。
そのうちになぜこの道に入ったかまでを語り出したので、私が聞いちゃっていい話なんだろうかと、終始となりで悶々としてしまった。
おかげでフレンチトーストの味…
よく覚えていない笑
ぽんぽんとびでる質問に女性が淀みなく答えているのが印象に残った。
私だったら、えーと…ってかんがえちゃいそう。
日頃からしっかり自分と向き合ってるからこそできることなんだろうなと、勝手に感心してしまう。
この先の人生で、鼓を叩くこと。
あるだろうか…
いやないな。
すごくレアな会話を聞いた気がするのですが、ふと思い出して、記憶頼りに書き留めてもみましたが、これはいつか傑作につながるでしょうか…
タランティーノ監督。