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人生の身代わり

男の家には代々伝わる人形があった。
男の家は、スピリチュアルな伝統があり、その人形は一度だけ自分の不幸の身代わりになってくれるという。
男は信じてはいなかったが、教えを守り常に持ち歩いていた。
ある日、青信号を渡っていると、車が突っ込んできた。
男は避ける間も無くぶつかったかと思ったが、なんともなかった。
不思議だと思いながら家に帰りニュースを見ると、隣町で原因不明の死体が見つかったという。
男は身代わり人形は本当だと確信し、家にあった残りの身代わり人形の仕組みを調べ、大量生産を始めた。
男はしばらくの間たくさんそれを持ち歩き、安全に暮らした。
しかし、それは不幸が起こらないだけであって幸福が起きるわけではない。
そのため、男は身代わり人形を商売に使った。
スピリチュアルを信じていそうな人に売り込み、少しだけ売ると、やはり反響はある。
そこからどんどん評判は拡大していき、男は大金持ちになった。
しかし、ある日男は原因不明の衝撃波を受ける。
そして意識が戻らないままこの世をさった。
男の家には他にも教えがあった。
身代わり人形を誰かに渡してはいけない。
今度は自分が身代わりになるからだ。

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