Uplandは「オープンメタバースの構築目指す」 Dirk Leuth共同創業者兼CEO【Web3の顔】



メタバースで仮想の不動産を購入できるNFTゲーム「Upland」が注目されている。現実の世界にある住所の仮想不動産を買えるため、米ニューヨークなどは数年前に売り切れた。ゲーム内の資産は米ドルで販売可能と、使い勝手も良い。ニューヨークで開かれたNFTに関する世界最大規模のイベント「NFT.NYC 2022」に参加した Upland 共同創業者兼共同最高経営責任者(CEO)のDirk Leuth氏に、同社の戦略を聞いた。

――市場調査会社のDappRadarの調べによると、ブロックチェーンベースの分散型アプリケーションでUpland は上位6位、ゲームジャンルだと4位に入っています。なぜ、このような地位を獲得できたのでしょう。

Uplandは今日、仮想不動産オーナーにとっては最大のメタバースを提供しています。世界中に仮想不動産のオーナーがいます。なぜここまでに至ったのか? 私たちは、マスのオーディエンスのためにマスプロダクトを生み出したかったのです。

第1の差別化として「モバイルファースト」のアプローチを考えてきました。Upland はiOS、AndroidアプリとWebサイトがあり、クロスプラットフォームです。第2に、使い勝手を簡単にして、プライベートキーやウォレットの心配をしなくてもいいようにしました。サインアップは、ユーザーネーム、eメールアドレスとパスワードだけでできます。これで、クリプトの世界にあまり浸っていない、普通のユーザーを取り込むことができました。パスワードを覚えていなくても、私たちにコンタクトしてくれればいいわけです。

第3に、アプリの中で「UPX」と呼ばれる通貨を、クレジットカードやオンライン決済のPayPalを使って買えるようにしました。「NFT to fiat(NFTから不換貨幣)」の仕組みを実現したのです。もちろん、暗号資産も使えますが、とても小さなグループの人だけが使っています。今のところ、1ドルが1000UPXです。

――ユーザーにとって使いやすいですね。

はい。ただ金銭的な価値を引き出すのは、米ドルを使ってNFT、つまりUPXを売ることです。私たちは、本人確認手続き(KYC)をしなくてはなりませんが、その後NFTを誰かに売れるのです。不換(Fiat)の世界に止まっていますが、世界経済は安定しており、米ドル価値において、人々が損をすることはありません。Uplandはこうしてユーザーの信頼を得て、25万人の仮想不動産オーナーと、250万人の登録ユーザーを獲得しています。ユーザーの35%は米国からですが、世界の国々にユーザーがいます。

――使い勝手が良いということで、ユーザーの年齢や男女比に何か特徴はありますか。

ユーザーのジェンダーを知りたいとは思わないので、登録時に聞いていません。サードパーティーのデータにたよるしかありませんが、年齢としては、人気ゲームに「Roblox」や「Minecraft」がありますよね。それらは18歳ぐらいから29歳、上で49歳ぐらいまでがターゲットですね。Uplandは、はっきりと違うポジションにあります。私たちは、もう少し上の世代のユーザー獲得を狙っています。

■オープンメタバースの構築をリード

――実在する住所の仮想不動産が買えますが、リアルな世界とバーチャルな世界はどうつながっていますか。

Uplandでは、リアルな世界の住所を使って、仮想不動産が買えます。Googleマップのストリートビューで検索して、購入するビルなどをチェックできます。しかし、リアルの世界で起きているさまざまなことは、今のところUplandでは起きていません。あくまでもバーチャルな世界にとどまっています。リアルな物件がバーチャルなUplandに影響を及ぼすということで、つながっていてもです。

――一方で、Upland上でいろいろなイベントが開かれています。

Upland内では、ユーザーが独自のイベントをたくさん開いています。まず興味深いのは、あるご近所エリアに、世界中の人が集まってきます。何かを一緒にやってみたいからです。何も、そのエリア出身でなくてもいいわけです。

また、Soranaなど異なるブロックチェーンのプラットフォームからNFTポータビリティーを実現した「NFT Portal」を使って、Uplandで(NFTアートを集めて)アートギャラリーを開いたりできます。本当に楽しいことがたくさん起きています。

――2021年11月、香港のブロックチェーン企業Animoca Brands(アニモカブランズ)との提携を発表しました。

Animoca BrandsのエグゼクティブチェアマンであるYat Siu氏は、Uplandのボードメンバーでもあります。私たちは、Animoca Brandsとともに、オープンなメタバースを構築したいのです。今ちょうど、Animocaが投資したほかの全てのメタバースと協働するという作業を進めており、私自身がその目的達成をリードしています。

■NFTはメタバースでより相互運用が可能に

――NFTの将来をどうご覧になっていますか。

NFTの将来はまず、もっともっと相互の運用が可能になっていくと思います。あるNFTを他のメタバースで使えて、一つのスペースにとどまらない。例えば、私たちはちかくUplandの中で車を扱うようにする計画です。そうするとその車を、例えばAnimoca Brands傘下の人気NFTゲーム「The Sandbox」の中で使えたりするわけです。そんな将来が見られたら、すごいですね。

また、JPEGではなく、Smart NFTが登場するでしょう。新たな機能やコンピューターのプログラミングがそれ自体でできるというものです。

――NFT.NYC2022はどんな意味がありますか。

熱気あるコミュニティーがあり、経済として成長していくには、まだこのスペースは始まったばかりです。人々にもっと広く知ってもらって、複数のコミュニティーをつなげることがすごく重要です。それには、こういう場で人々がつながり合うのが大切だと思います。

津山 恵子(つやま・けいこ) プロフィール
ニューヨーク在住ジャーナリスト。
東京外国語大学卒、1988年共同通信社入社。福岡支社、長崎支局、東京経済部、ニューヨーク経済担当特派員を経て2007年に独立。Facebook(現Meta)のマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)、Instagram 創業者ケビン・シストロム氏、ノーベル平和賞受賞者のマララ・ユスフザイ氏、YouTube共同創業者スティーブ・チェン氏、作曲家の坂本龍一氏、ジョン・ボルトン元米大統領補佐官、ジャシュ・ジェームズ米DOMO創業者などの著名経営者を単独インタビューしてきた。著書に「モバイルシフト」(アスキーメディアワークス)、「よくわかる通信業界」(日本実業出版社)など。日本外国人特派員協会(FCCJ)正会員。