「日本のカルチャー生かしたデザインを」 BŌSŌ TOKYOデザイナーの天神英貴氏らに聞く
日本発の注目のNFTブランド「BŌSŌ TOKYO-暴走東京-」。そのデザインはどんな思想から生まれたのか。そしてWeb3の世界で、今後何を目指していくのか。デザイナーの天神英貴氏と、オペレーションリーダーのTOMさんに話を聞いた。
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――BŌSŌ TOKYOに参加したきっかけを教えてください。
天神: BŌSŌ TOKYOに参加したのは2022年初めごろで、まだBŌSŌ TOKYOという名称が生まれてもなかったのですが、本当は最初、何をするのかよくわかりませんでした。ただ、さまざまな人にNFT業界のことを教えていただくと「日本のクリエーターとして何かをすべきなんじゃないか」という気持ちになりました。
僕は日本ではアニメーションのメカデザインや、プラモデルやおもちゃのボックスアートなどを担当するイラストレーターとしても活動しています。自分ができることといったら「日本のカルチャーを生かしたデザインをする」こと。それなら僕も何か役に立てる、何かを起こせるチャンスなんじゃないかなと思い、参加を決めました。
TOM: BŌSŌ TOKYOではオペレーションリーダーという役回りで、プロジェクト全体の仕切りやマネジメントをやっています。BŌSŌ TOKYOを立ち上げる以前はゲーム会社のカプコンに所属していまして、強いIPを使ったゲームのモバイル版のタイトルのプロデュースを主に担当してきました。元々Web3には興味があり、新しいビジネスということもあって、思い切ってBŌSŌ TOKYOを始めたような形です。
天神:実際にやり始めながら、NFT業界のことを一つ一つ勉強していたのですが、やればやるほど自分たちが持っているアイデンティティーや文化というものはとても素晴らしいと、改めて再認識しました。私たちの持っているアニメーションや、日本の持っている文化は、とてもとても独自的なアイデンティティーがある。それは大切なものだなと。
BŌSŌ TOKYOというブランドができてたくさんのアイデアが生まれて、どんどん筆も進んでいったんですよね。このプロジェクトはちゃんとやらなければならない、真剣にやらなければならないと、本当にすごく感じています。
――BŌSŌ TOKYOの世界観やデザインコンセプトを教えてください。
天神:デザインコンセプトはいわゆる、暴走族やそういう人から着想を得ています。日本は、いろいろな“規則”が非常に厳しい。それにもかかわらずああいう、いうなれば「中央集権から脱却しよう」という人たちがいて、そのデザインというのは我々から見てもとてもユニークなんですよね。
実は日本の暴走族やそのデザインは、世界ではさまざまなファッションブランドなどから非常に注目を集めているんです。彼らのブランディングは日本の特徴をすごくとらえていて、漢字や日本語さえも超越したところにデザインをおいている。それらをとり入れることによって、他の国のデザイナーでは決して真似ができないようなデザインを作り、かつ中央集権だけでなくサイバーなところにもひも付いている、Web3が到来する次の時代にふさわしいものになっていると思っています。
TOM: BŌSŌ TOKYOは「メタバース世界におけるアイデンティティ・ブランド」をビジョンとして掲げています。アイデンティティ・ブランドとは何かというと、現状だとそれぞれのメタバースごとでアバターの姿や形は異なりますが、どのメタバースでも同じ姿形のアバターの需要は必ず生まれると思っています。
将来複数のメタバースが乱立してそれらを渡り歩くような未来が来たとき、どこのメタバースでも共通のデザインで、しかもデザインかっこいい、それを日本発で生み出したいというのが、BŌSŌ TOKYOのビジョンの根幹です。そのデザインを天神さんは手がけてくれていて、世界観はアフロマンスさんというクリエーターが、クリエーティブディレクターで作ってくれています。
BŌSŌ TOKYOではまず今、PFPとしてアートワークを提供しています。これがもう少し先には3Dモデルができて、いろんなメタバースに行けるようになります。そこから先は、その複数のメタバースでさまざまなホルダーの方とともに事業を行えるような未来を描いています。
――デザイン面からみたBŌSŌ TOKYOの見どころは何でしょうか。
天神:世の中には多くのNFTブランドがありますが、それぞれのブランドは、どこかで見たようなものが連続して制作されることが多いということを聞いていました。日本のアニメーションの世界では、他とは絶対に似てないものをどんどん新しく作る、常に新しいものを想像しないといけないという文化があります。それは多分、日本は自然災害が多くて、被災したら全てが失われてしまったり大切な人が亡くなったりしまう、それが実は珍しいことではないから、かもしれません。
だからこそ、新しいものをちゃんと作り出していかないといけない。BŌSŌ TOKYOのデザインも、日本文化をベースにしつつ全く新しいものにしたいという着想から生まれています。
――デザイナーとして NFTやWeb3についてどう考えていますか。
天神: 来たるWeb3やNFTの時代は、私は最初、かなり疑心暗鬼でした。元々アナログの、二次元の絵の時代があって、僕らは「絵でしか価値はない」と言われながらデジタルアーティストとして育ってきた。それがとうとう、初めて価値を見つけていただいたと。そういったことがブロックチェーン技術によって得られたというのは、本当に「夜明けが来た!」といえるような状態です。
――12月に米ロサンゼルスで開催されるポップカルチャーイベント「Los Angeles Comic Con」で披露する、新しいBŌSŌ TOKYOのデザインについて教えてください。
天神:5体のPFUを作っています。これはジェネレーティブで作ったものではなく、僕が一つ一つ、BŌSŌ TOKYOらしいものだけを選び、複雑に絡み合うようにそれぞれの色を調整してパーツを作り出したものです。上から加筆をして効果を入れ、全く新しいものに仕上げています。これはとても自信を持っています。
――今後のBŌSŌ TOKYOの展開は。
天神:長年日本のアニメ業界でさまざまな仕事をして、世界中のコンベンションに招待され、たくさんのファンと触れ合ってきました。そこで感じたのは、日本のアニメーションは多くの文化の中でも負けない強い力を持っているということです。そこで生まれたBŌSŌ TOKYOのクリエートには、とても自信を持っています。今回(香港を拠点にグローバル展開するWeb3企業の)MADworldとタッグを組ませていただいたことで、非常に大きな海外進出の力を得たと考えています。
TOM: AnimocaBrandsグループの MADworldさんとのパートナーシップをきっかけとして、今後はどんどん世界に向けて展開していきたいと考えています。世界の方に知ってもらうためのきっかけ作りへ、第1弾として渋谷のスクランブル交差点をARでジャックする「BOSO SCRAMBLE」というイベントを行いました。
Los Angeles Comic Conでの展開は第2弾で、BŌSŌ TOKYOのアートワークの中でも特にロサンゼルス完全限定版を販売します。こちらはアメリカに向けた動きの第一歩として、今取り組んでいます。今後はMADworldさんともいろいろ相談をしていただきながら、コラボレーションを含めさまざまな成長展開を考えています。