広告代理店で働く意味とは何なのか?【494/500】
5月中旬となり、上期の評価の時期に差し掛かってきました。株式会社はこの亀谷です。
本日は、「広告代理店で働く意味とは何なのか?」について考えてみたいと思います。
自社の評価制度を考える上で、この問いに向き合うことが重要だと考えていますので、興味のある方はご覧ください。
広告代理店の存在価値と役割の再定義
私が考える理想の広告代理店像は、
1)広告投資の費用対効果を最大化すること。
2)お客様が自社で行えないことを代わりに実現すること。
この2点は最低限サービスとして提供したいと思っています。
費用対効果とは投資した費用に対して狙った効率で費用回収できることを目標としています。
会社としての成長を考える上で全体的に利益を出しながら、短期的な展望、長期的な展望を考えると一部の投資はリスクを伴いながらもチャレンジする必要がありますので、そこに関しては意味とリスクも踏まえた提案まで出来ないといけないと思っています。
広告代理店側としては、単純な納品物としての制作物、媒体以外に、実際は経験を売っている形になります。
時間的には誰がやっても変わらないのですが、経験を売っている場合と、経験をさせていただいている場合があるので、その時の状況に応じて費用を変動させることで調整を行います。
昔は人の時間はメディア費用に内包されたサービスであるという考え方だった日本の広告業界ですが、今は結果を出したい場合は、それなりの人をアサインしないと結果が出ない状況にあるので、そこはご理解いただけるお客様としか取引はしていません。
最終的にはお客様の事業状況への理解度を深め、お互いの専門領域を尊重しあい、知見を持ち寄れるチームを作っていくことが一つの目標です。
広告業界の変化と人間力の重要性
広告への投資判断の難しい点は、投資したコストの大部分が資産計上できないため、客観的なリスク評価が難しい点です。
自社で実現できない部分を専門家に外注することになるのですが、そもそもその専門家の評価が出来ません。
有名な案件を自称やっていたという自称やっていた詐欺が世の中には多数存在します。
また投資しても外注に依存しすぎるとその価値が評価しにくいため、投資が上手くいってもいかなくてもをせめて社内のノウハウに変えていこうと考えると、これが最近のインハウス化の推進要因となっています。
インハウス化には良い面と悪い面があります。良い面でいくとコストダウンです。間に一社入れているマージンが落ちます。
悪い面でいくとコミット力が落ちる。人の異動によるリスクが上がる。情報量が落ちるなどです。代理店として広告におけるマージンに意味があるのかないのかを証明するためには、インハウスによって起きるコスト差は最低乗り越えなければいけない壁となりました。
現在の広告業界はインターネット中心の時代に突入し、単純にメディアを購入するだけの仕事ではなくなりました。
大きな広告代理店は組織力を活用し、大きな案件をこなしますが、小さな案件では個々の力量が問われる状況になっています。さらに機械化・AI化が進む中でも、機械がどのように最適化を行っているかを監視し、使いこなす人間の役割は依然として重要です。正直な話、世の中のAIによる自動最適化を語っているツールの中にも多くのAI詐欺が存在します。
したがって、現在の広告業界は人間力に大きく依存しており、案件をコントロールする人や組織がどれだけの経験とスキルを持っているかが極めて重要となっています。
そのため自分のキャリアを高めていくためには、自分が直面した問題や達成できなかったタスクにどれだけ真摯に向き合い、それを克服してきたかが鍵となります。それは、結果が数値で表される仕事にどれだけ向き合えたか、そして自分が出来なかった仕事にどれだけ向き合い、それをどれだけできるようになったか、という経験値の積み重ねに他なりません。この経験値こそが、現代の広告業界における働き甲斐と成長の源泉と言えるでしょう。
広告業界の戦略性と業務の深度
広告業界は、ある種ブラックジャックやポーカーのようなギャンブルに似ています。
確かに運の要素も存在しますが、それ以上に重要なのは戦略的な視点とその実行力です。
この点においては、研究職に近い面もあります。前提を揃え、押さえなければいけない要素を間違えずに、最後までゲームを続けられるかが広告業界での成功の鍵となります。
クライアント側ではなく広告代理店側で働く魅力は、複数の状況を学びながら多くの現場経験を踏めることです。
ある一つのシチュエーションでの経験は再現性がありません。複数のお客様の仕事を同時に進行させながら施策を実施することで、施策のコントロールに関する機微が理解でき、多面的に案件を捉えることが可能となります。
ただ、ここでひとつ注意点ですが、お客様がひとつの案件にコミットして仕事をしている中、複数の案件を担当するのは実際は普通の努力では出来ません。中途半端になってしまいます。
外部から案件を担当するということは、その段階でお客様よりもその商品・サービスに関して理解度は低いという状態ですし、それでいてさらに複数のお客様を担当しなければいけないということはそれ相応の勉強量を求められて当たり前だということは理解しておくべきでしょう。
広告業界におけるキャリアとスキルの重要性
そんな広告業界ですが、実際にやっている作業自体は割とシンプルなので、1年間真面目に働けば基本的な業務は一通りこなせるようになり、2-3年で自立も可能です。
しかし、真に価値があるのはそれからで、継続的にお客様を支援できるか、他のお客様でも再現性をもった提案が出来るかといった部分に向き合うことが求められます。
どんなに機械化が進んでも機械が個々のビジネスの本質を理解するようになるまではまだまだ時間がかかります。そういった意味でもこの業界は人間力に大きく依存しており、多くのお客様を抱えた大企業の一社員よりも、一つのお客様に対して尽力できる人の方が結果を出しやすいと言えます。
会社という「はこ」の意味を考えると、最新情報の提供や、同じ価値観で働くことが出来るチームの提供となりますし、個人として技術が日々進化するこの業界でキャリアを積む意味は何かと問われれば、思考力や実行力といったポータブルスキルを鍛える場としての価値しかないのかなぁと思います。
仕組みでどうにか出来る部分も多くはありますが、個別の案件が全て仕組みで上手くいくようであれば人は必要ありません。その中で個々の状況を理解し、結果を出しながら、理解しあえる仲間とともにスキルアップを楽しめる。そんな環境づくりを考え実践していくことが、私がわざわざ自分の会社をやる意味なのかもしれません。
私は広告業界は正しい努力によって、努力しない人よりもずっと成果が出せるようになると信じていますし、それが社会に対して、一緒に働く仲間に対しても戻せる価値だと信じています。
成果型でお金を目当てに動く人たちと業界にいる意味が二極化している広告業界ですが、私は自分と一緒にやれてよかったと言ってくれる人が増える未来に向けて働きたいなぁと思うばかりです。
世の中の流れはいろいろありますが、そういう会社になれるよう日々経営していこうと思います。
それでは、皆様、良い週末をお過ごしください。いつもお付き合いいただき、ありがとうございます^^