マルセル・カミュ『黒いオルフェ』感想
東京スカイツリーはスマホの縦長画面で撮ったほうが収まりが良いのと同じで、ブラジルの高台に伸び広がるスラム街は、縦3:横4のスタンダードサイズがしっくりくる。なぜなら高台は可住地が狭く、住民が一歩でも足を滑らせると崖下の海に転落しそうな高低差を一つの画面に収められるので。
そんな足場の悪い高台で、地元民はずっと踊っている。海辺の市街地に降りても、やはり踊っている。メイン俳優たちも踊っているが、その後ろにいるエキストラ地元民はもう少し手前に出てくるとストーリーが壊れそうな勢いで躍っている。画面に映る人々の数が多く、各々好き勝手に密に踊っているのに、なぜか観てて疲れない。地面に線を引いて「ここから前に出ないで」などと指示していたのかしら?
この画面の情報量が多く、コントロールされたアドリブ感は現代人が迂闊に真似ると火傷しそうだと感じた。反対に映画後半、暗闇を走る俳優が照明に浮かんだり闇に消えたりする演出は真似しやすい割に視覚効果が高く、コスパが良さそう。
最後にオルフェ役の俳優が崖から墜落する。「高台のどこにいても崖から転落しそうだが、彼らはそこで生活しており慣れているので、視聴者は高低差を気にしなくてよいのかも」と思っていたら結局落ちるという落ち。
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