メンタリストDaiGoの問題について(4)入国管理局の横暴さとつながるもの。


 DaiGoの差別発言の時期と同じくして、入国管理局による外国人に対する信じられない抑圧的な暴力でスリランカの女性が亡くなったというニュースがあった。


入管、希薄だった人権意識
施設でスリランカ人女性死亡 原則収容の見直し急務


 私はYou Tubeで、日本に遊びに来たり生活している外国人の番組をよく見る。子どもの頃、アニメなどで日本に関心を持ち、観光で日本に来て、気に入って住み着いた人たちが多い。白人が多いが、中国人や韓国人もいる。彼らが異口同音に言うのは「日本人はやさしい」ということだ。福岡でも大阪でも東京でも、知らない人に親切にしてもらったというのが、日本に住み着く理由だと語っている。

 しかし、同じ日本人が、入国管理局のようなところで、このような非人道的なふるまいをにやけながらしているというのは、どういうことなのだろうか。

 そこに、日本の封建的な組織の問題を感じる。アジアに進出した企業などでも、現地では、会社のコミュニティ内で結束し、現地の人と人間的な交流はおろか、見下ろして強圧的な態度になるところがあると聞いた。いわゆる「ブラック企業体質」という、縦の命令系統が確固としてあり、社員は修行の身であり、組織の内部は家族のようであるが、異質な外部に対しては組織をあげて戦う姿勢を見せる。いわば「任侠的ブラック企業組織」である。

 前回の原稿にも書いたが、そうした封建的な家族組織論が、ドラッガーも褒めた日本型企業の原型として、近代・戦後の日本企業の発展につながったのだと思う。しかし、その方法論は、近代の終幕とともに、終わりを迎えている。

 DaiGoのような「孤立した個人」は、そうした古い日本型組織論に対する反発として、自分自身を信じるという方向性に激走したように見える。その結果、「ブラック企業」の反対側で「ブラック個人」を作り出してしまったのではないか。

 入国管理局が外国人に対して、「自分たちとは違う」という態度で接したのと同じで、DaiGoは、自分の理解出来ない人間は、敵だと意識し、攻撃的になった。

 入国管理局の対応に対して、ネットの若者たちが「法律を破った人間だから、当然だ」という発言が多数あらわれて、驚いた。法律を破ろうが、生活が破産しようが、それは、社会の秩序の中での出来事であり、眼の前に苦しんでいる人がいれば、そんな条件も考えずに助けようとするのが、人間なのではないか。

 社会が強固に完成し、その中での自由は認めるが、そこから落ちこぼれたり、はみ出たりしたものを徹底的に叩く、日本の村八分的な排他主義が、これほど染み付いているのかと思うと身震いしてしまう。

 日本人は(日本人に限らない。人は)基本的に優しいのだと思う。困った人がいたら助けたくなるし、他人のものを奪おうとしないし、おせっかいで、笑顔のおしゃべりが大好きだ。しかし、近代組織になると、違う日本人になってしまうのか。

 私は、こう思う。組織エゴイズムに染まった、ブラック企業体質の組織からは、一刻も早く脱出すべきだ。脱出して、自分が孤立したエゴイストになっては意味がない。組織から脱して本来の個人になり、脱出した人同士でつながりながら、新しい秩序を作っていくしかない。

 コロナ情況の中で、私は、そういう可能性を光にして、進んでいきたい。


▼YAMI大学・深呼吸学部(橘川の模索)


 

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