今話題のAR(拡張現実)を活用した産業SaaSを紹介!活用シーンや解決できる課題も解説
今回はARを活用したSaaSをいくつか紹介していきたいと思います。
SaaSとは
SaaSとは”Software as a Service”の略称で、月額・年額制でいわゆるサブスクのように料金を支払うことで利用できるサービスのことです。ソフトウェア自体は運営側で稼働していることが多く、ネット環境さえあればいつでも・どこからでも利用可能なのが特徴です。また、ソフトウェアはクラウド上で稼働しているためライセンスさえあれば複数の人が同時に作業することもできます。
AR SaaSサービスの紹介
この章では早速いくつかのAR SaaSサービスを紹介していきたいと思います。
MetaAssist
サービス概要 :ARを活用した遠隔作業支援
運営会社 :プレティア・テクノロジーズ株式会社
ターゲット :製造業、建設業、医療、商社など
まず最初に紹介するのはARを活用した遠隔作業支援ツール『MetaAssist』です。
ここで遠隔作業支援を知らない方がいるかもしれません。遠隔作業支援は文字通り遠隔で作業者を支援することですが、従来は携帯電話のみでの利用が主でした。しかし、近年はスマートフォン・タブレット間に加えて、スマートフォン・タブレット対PCでの通話が可能になった他、最新デバイスであるスマートグラスの利用も進んでいます。
また、デバイスが携帯電話からスマートフォン・タブレット、さらにはスマートグラスに移行するにつれて、遠隔作業支援の手段もただの電話からビデオ通話に移行しています。視覚情報をやりとりできるようになり、その利便性は大きく向上しました。
詳しい遠隔作業支援の解説は以下の記事に載っていますので、もっと遠隔作業支援の説明を聞きたい方や導入事例を知りたい方、また導入までの手順を知りたい方はぜひ一読してみてください。
『MetaAssist』は従来の遠隔作業支援ツールよりもさらに進化しています。従来の遠隔作業支援ツールにもあったビデオ通話機能に加えて、ARを活用した相手側の空間への書き込み機能、ハンドツール機能や多言語同時翻訳機能、通話映像・議事録の自動保存機能などを有しています。
中でもARを活用した相手側の空間への書き込み機能は遠隔作業支援をさらに進化させるものです。従来の遠隔作業支援ではお互いの視覚情報をやりとりできていたとしても、結局指示や説明は言語に依存する他ありませんでした。しかしARによる書き込み機能により、実際に隣にいて指差して説明するかのような、非常に細かい指示もできるようになりました。
現地で教えるのと変わらない精度で遠隔支援ができるようになり、顧客対応などの出張の一部が削減できるようになる他、新人教育の場では教育担当のベテラン人材や有資格者の負担が軽減されるだけでなく、新人の心理的負担も大きく軽減されます。
また、多言語同時翻訳機能により海外の拠点とのやりとりをできる人材が増え、一部人材への負担集中を回避し離職率が低下する他、通話映像・議事録の自動保存機能により新人教育用の教材が簡単に、そしてわかりやすくなることで属人化の脱却も目指せます。
さて、ここからは『MetaAssist』の導入で解決されるであろう課題についてお話ししていきたいと思います。
MetaAssistで解決できる課題①:出張が多い
どんな産業においても出張というのは大なり小なり存在するものだと思います。工場を複数持つことが多く、製造品のアフターケアも担当する製造業や、現場を複数同時進行することのある建設業においては、特に出張が多いのではないでしょうか?
しかし、出張というのは企業にとっても、技術者にとっても重い負担となるものです。企業にとっては移動費やホテル代などの金銭的負担が、技術者にとっては移動や宿泊による身体的負担・家族と離れなければならない精神的負担などが重くのしかかります。
そんな出張を『MetaAssist』は削減して見せます。前述した通り、『MetaAssist』はAR書き込み機能により、実際に隣で教えるのと変わらない精度でのリモート支援を実現しました。これにより遠隔でオフィスからできることの幅が広がり、顧客対応などの一部の出張が削減されます。
出張が削減されると単に出張費用が削減されるだけでなく、出張に向かう技術者の身体的負担も大きく軽減される他、移動時間を削減することで技術者が他の業務により長い時間を割けるようになり、結果として生産性が向上します。
MetaAssistで解決できる課題②:機械故障によるダウンタイムが長いあるいは頻発する
工場において、機械の故障などによるダウンタイムで生じる損失は計り知れません。単純に生産ラインが停止することで、本来生産できていた分の利益を失う他、納期が遅れることによって他社からの信用を失うことにも繋がりかねません。
そのため、定期的な保守・保全による機械故障の防止はもちろんのこと、不慮の故障に備えて、素早く問題を解決してラインを再開し、少しでもダウンタイムを短くするような工夫が必要です。
生産ラインの機械が全て自社製であったとしても、機械の修理をできるような人材が工場に常駐しておらず、対応に数日かかってしまうということがあるのではないでしょうか?
また生産ラインに他社製の機械を導入している場合、他社製の機械が故障してしまった時には迅速な修理というのがさらに難しくなります。購入元に連絡して、技術者を派遣してもらう、という形になるからです。あくまでも他社なのでどれだけ急かそうとも、先方の都合で技術者の派遣が2~3営業日後になってしまうケースも珍しくありません。
これらのケースにおいて修理の手間を軽減し、ダウンタイムの短縮に貢献するのが『MetaAssist』なのです。設備メーカーの往訪を待たずして遠隔で指示を受け、社内の技術者が自ら修理することによってダウンタイムは大きく短縮されます。
設備メーカーにとっても、従来は移動なども含めて最低半日、長ければ1泊2日で行っていた修理を遠隔で行えるようになれば、従業員の身体的・時間的負担が大きく軽減されるメリットがあります。
1時間のダウンタイムで数千万円の機会損失が生じる企業もある中で、今までは社外の技術者を待つ関係で2~3営業日分まるまるダウンタイムとなっていたのが、『MetaAssist』によりたった数時間のダウンタイムに短縮されれば、その利益は計り知れないものとなります。
MetaAssistで解決できる課題③:高齢化や採用難による熟練労働者不足
専門的な知識と高い技術力で評価を得ている製造業にとって最大の課題とは熟練労働者の「不足でしょう。高齢化の進展で今まで製造業を支えていたベテラン人材の引退が差し迫る一方、彼らの技術は若手に継承できているでしょうか?また、少子化により求職者は年々減少傾向にあり、企業間での人材、特に理系人材の取り合いが過激化しています。
こういった現実に対応するためには、引退しようとしているベテラン人材の技術を社内で体系化し、それらを若手に継承することが重要でしょう。また、門外漢である文系人材を社内での戦力となるまで理系教育を施すことも肝要です。
しかし、若手の教育にはコストがかかります。ベテランが若手に教育する場合、若手につきっきりになって教えることが想定されますが、その間一時的にとはいえベテランの生産性は低下します。また、若手教育用の教材を新たに作るにしても、その負担は決して軽いものではありません。
こんな場合に、若手教育の効率化に貢献するのが『MetaAssist』です。『MetaAssist』によって、ベテランが若手を指導する際、遠隔ながら実際に隣にいるのと変わらない精度での教育が可能になります。これにより、ベテランの移動時間は短縮され、ベテランは今より多くの若手教育を担当できるようになったり、ベテラン自身の業務に集中できるようになったりします。
また、『MetaAssist』は自動録画機能・議事録機能を有しています。ベテランの支援が必要なケースでの会話内容や作業が自動録画・蓄積されることで、新人教育用の教材の作成負担は大きく軽減します。さらにこの録画は新人教育だけでなく、様々な場面で活用できるでしょう。
SERVICE AR
サービス概要 :オールインワンソリューション
運営会社 :ViewAR
ターゲット :製造業、施設管理、博物館・美術館など
次に紹介するのが、ARオールインオンソリューションである『SERVICE AR』です。
『SERVICE AR』はオーストリアの会社である『VIEW AR』が提供するサービスで、目的地へのARによる道案内や作業手順書の3D表示、遠隔作業支援などAR関連のサービスをおおよそ全て搭載しています。
スマートフォンやタブレットはもちろんのこと、スマートグラスでの利用も可能で、ハンズフリーで作業手順書を見れたり、遠隔作業支援を受けることができます。特に作業手順書の3D表示は現実の機械に沿って作業手順が表示されるため、保守保全の現場では作業効率化に大いに貢献することでしょう。
ここからは『SERVICE AR』で解決されるであろう課題についてお話ししていきたいと思います。
SERVICE ARで解決できる課題①:工場内が複雑でよく道に迷う
様々な機械や設備が所狭しと並んでいる工場においては、内部構造が複雑で社員や作業員の方でも迷ってしまうことがあるのではないでしょうか?特に不慮のトラブルで普段行かないような場所に行かなければならなくなった時、トラブルシューティング以前にその場所に行くことにも時間がかかってしまうこともあります。
そんな懸念を解消してくれるのが『SERVICE AR』のAR道案内機能です。この機能はあらかじめ空間情報を設定しておくと、自動的に現在地から目的地に向かうルートを目の前に映し出してくれるものです。この機能により、工場内で迷うことはなくなるでしょう。
特に『SERVICE AR』のAR道案内機能は階段やエレベーターの利用にも対応しています。そのため、地下にある配電室などでトラブルが起きた際にも、迅速に現場に向かうことができるようになります。
SERVICE ARで解決できる課題②:作業手順が複雑・種類が多いために覚えられない
日本の製造業は高い技術力で評価を得ているため、時には作業手順が複雑で繊細になりすぎてしまうことがあります。また人手不足に陥っている工場においては、一人で何種類もの作業を受け持つことも珍しくないでしょう。このような場合には現場の作業員の負担が増え、作業手順をなかなか覚えられない、ということが起きるはずです。さらに、年に数回しかない作業の手順なども全て覚えておくのは至難の業でしょう。
こんな作業を手助けするのが『SERVICE AR』の作業手順書の3D表示機能です。この機能は、現実の機械に沿って作業手順が表示される機能です。スマートグラスを活用すれば、ハンズフリーで作業手順書を確認できるようになるため、従来のデジタル作業書よりもさらに作業効率を高めることができます。
さらに写真や動画での作業記録の保存も可能なので、何かトラブルが起きた時の原因解明がスムーズに行えるようになります。
SERVICE ARで解決できる課題③:ギャラリーアテンダントの数が足りない
現在日本全体で人手不足が加速しており、それは美術館や博物館で展示品の解説をするギャラリーアテンダントも例外ではありません。特にギャラリーアテンダントは展示品に関して深い知識を持っていることが要求されるため、増員は簡単ではありません。
そこで活用できるのが、『SERVICE AR』のAR道案内機能と3D表示機能です。これらの機能により、従来の音声ガイドに加えて、視覚的なガイドも加えることが可能になります。
AR道案内機能により、順路が視覚的にわかれば、館内の混雑の解消に繋がります。また。従来の音声ガイドでは展示品の特にどこに注目して欲しいのかがわかりにくいことがありましたが、3D表示機能により展示品の見どころが直感的にわかるようになります。
『SERVICE AR』により、館内の混雑の解消が見込まれるだけでなく、今までの音声ガイドよりも顧客満足度の向上までもが見込まれます。
DataMesh Checklist
サービス概要 :作業手順書の3D化
運営会社 :DataMesh
ターゲット :製造業、施設管理
続いて紹介するのは、作業手順書の3D表示ツールである『DataMesh Checklist』です。
『DataMesh Checklist』は中国発で、アメリカ・日本・シンガポールなどにも拠点を持つ『DataMesh』社が提供するサービスです。『DataMesh』社は2021年9月にドコモ主催の「docomo 5G DX AWARDS®︎ 2021」の最優秀賞に選ばれており、その後もこの二社はXRの民主化実現に向けて協業を続けています。
『DataMesh Checklist』自体は作業手順書の3D表示ツールであり、作業プロセスを現実の機械に沿う形で表示することで、属人化の解消・操作エラー率の低減・生産性の向上などを成し遂げることができます。
従来の作業手順書と異なり、スマートグラスを用いることでハンズフリーを実現しているため、作業手順書で片手が塞がる煩わしさが解消され、生産性を格段に向上することができます。
他にも、3Dイメージと現実の機械を重ね合わせて表示することができるため、作業指示がより直感的なものとなり、新人は先輩社員の手を止めて質問する必要がなくなります。これにより、新人にとっては先輩社員に質問する心理的負担が、先輩社員にとっては質問のためにわざわざ作業を中断する手間が軽減されます。
ここからは『DataMesh Checklist』の導入により解決されるであろう課題についてより具体的にお話しして行きたいと思います。
DataMesh Checklistで解決できる課題:作業手順が複雑で覚えきれない
高い精度を武器とする日本の製造業において、作業工程が複雑になったり多くなったりすることは避けられません。ここで多くの企業が作業手順書を導入しているかと思いますが、これも片手が塞がってしまうため、あまり実用的ではありません。
そこで活用されるのが『DataMesh Cgecklist』です。『DataMesh Checklist』は現実の機械に沿って、作業手順や作業方法が3D表示されるツールで、作業手順を覚える時に大いに役に立ちます。
『DataMesh Checklist』は従来の紙の作業手順書やデジタル作業手順書と異なり、ハンズフリーで使えることが最大の特徴です。スマートグラスを利用することで、実際に作業をしながら並行して作業手順書を見ることができます。
さらに従来の形式では文章や図、写真での説明が主で、作業が複雑な場合、どうしても伝わりにくくなってしまうことは避けられませんでした。しかし、『DataMesh Checklist』は現実の機械に沿って作業手順書・作業方法が表示されるため、指示がより直感的でわかりやすいものとなっています。
Fata Morgana
サービス概要:デジタルツインによる遠隔作業支援
運営会社:Pocket Virtuality
ターゲット:製造業、建設業
最後に紹介するのは、デジタルツインを活用した遠隔作業支援ツール『Fata Morgana』です。
『Fata Morgana』は「Pocket Virtuality」社が提供するサービスで、最新技術であるデジタルツインを活用したものです。
ここでデジタルツインを知らない方がいるかもしれません。デジタルツインとは現実の空間をスキャンして、その空間と瓜二つのデジタル空間を作り上げる技術のことです。これにより、危険な作業を安全にデジタル空間で訓練することや、遠隔でその空間を見学することなどが可能になります。
『Fata Morgana』では工場をあらかじめスキャンすることによって、遠隔の技術者がさも現場にいるかのように現場の作業者に指示を出すことができるようになります。
また、『Fata Morgana』には3Dイメージを眼前に映し出す機能も備わっており、どこになんの部品をつければ良いのか、一目瞭然となります。さらにメジャー機能も備わっており、指を添えるだけで部品や機械全体の長さを測ることができます。
ここからはより具体的に『Fata Morgana』によって解決されるであろう課題についてお話ししていきたいと思います。
Fata Morganaで解決できる課題:トラブルの多い工場と技術者のいる本部が遠くサポートに時間がかかる
工場を複数展開しているような企業では、機械について見識のある技術部の人間が本社にいて、工場でトラブルが起きた時に迅速に対応できない、といった事例がみられるのではないでしょうか?
移動時間や他の仕事との調整で技術部の派遣が遅くなり、1~2営業日の間工場のラインが止まってしまうこともあるかと思います。これによって納期に間に合わなくなる可能性が生じる他、生じる機会損失は計り知れないものとなります。
そんな問題を解決するのが、Fata Morganaです。FataMorganaのデジタルツイン技術により、支援者はまるで現場にいるかのような状態で、作業者に指示を出すことができます。作業者にとっても、現実の機械に沿って出されるマーカーや3Dイメージによって支援者からの指示はより直感的でわかりやすいものとなります。
これにより、本部にいる技術者が現場に行くことなく、工場でのトラブルに対応できるようになります。迅速なトラブル対応は生産性の向上と機会損失の低減に繋がるほか、技術部の出張が減ることで、社員の負担が減り離職率の低下にも繋がります。
まとめ
この記事では、世の中に流通しているARに関連したSaaSを紹介してきました。今は遠隔作業支援やAR道案内機能が多いですが、今後AR技術の発展に伴ってARの産業利用が進んで行くことに疑いありません。
また、今回紹介したSaaSの中にはスマートグラスだけでなく、スマートフォンやタブレット、PCでの利用が可能なものもありましたので、もし興味を惹かれたSaaSがございましたら、お気軽にお問い合わせください。
MetaAssistに関するお問い合わせはこちらから:https://metaassist.jp/#contact