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撮るために歩く。歩くために歩く。

マイペースに

YAMAPの登山計画を作る機能で、9時間から12時間程度の行程を作る。
自宅最寄りの駅の始発列車は4時台前半。しかし横浜は関東平野の南で海に近く、高い山は西か北か、とにかく離れている。
登山口まで鉄道ではおよそ2時間、7時前から登り始めることになる。
冬場は日が短いため、16時〜17時には下山していたいし、予期しない理由で遅れることも考えると15時の下山を目指すことになる。
とすると、行程は8時間から9時間に収めなければならない。

市街地の平坦な道では1kmあたり11分〜12分で歩いている。
時速5km〜6kmということだ。

三浦半島の低山、鎌倉アルプスや三浦アルプスの山々では、時速4km程度になる。
アップダウンがきつく地形も複雑な登山道は、歩みを進めるのに判断を要するし、傾斜の分の体力が必要で呼吸も荒くなる。

先日、藤野駅から陣馬山、そこから景信山などを伝って高尾山へ、そして高尾駅へ抜けてみた。
このときは休憩も挟みつつ、トータルでは24kmを6時間なので時速4kmということだ。

昨年の夏に谷川岳に登った。
このときは7.3kmの移動に4時間もかかってしまった。
人気の山のハイシーズンともなると混雑も激しく登山道が渋滞することもあったが、道というよりは垂直な斜面を上り下りする箇所もあり、前進するのに体力も時間も要した。

今年は丹沢山塊の主要な頂を目指したい。
できれば富士山も登ってみたい。
そのために、体力をつけ、歩き方を訓練し、自分のペースを把握したい。

陣馬山〜高尾山の縦走で登山計画が示していたのは20kmおよそ9時間。
標高1000mに満たない山であり、毎週登っている三浦半島の山と感覚が似ていた。

一方で丹沢や富士山は高度も地形も異なり、日没までの限られた時間で移動できる距離の見通しが立てにくい。特に難易度の高い山ほど1kmあたりの所要時間が延びる傾向で、そこを自分がどれくらいのペースで前進できるのかわからない。

無理のない計画を立てねば…

なぜ登るのか

友人との会話で、「そに山があるから」と発言したのはジョージ・マロリーだと知った。
登山そのものに興味の軸がない自分には「有名な登山家」くらいにしか認識していなかったので、大きさ毎に山の名前を付けている「マロリーポークステーキ」と点と点が繋がるようなアハ体験となった。

しかし自分の場合、山に登りたいわけではない。
それでも「そこに山があるから」はまさにその通りだ。

カメラが趣味であり、写真は趣味ではない。
けれどもカメラを愉しむには撮影体験が不可欠だし、機材のメンテナンスとしてもやはり撮影する目的がなければ稼働させられない。
そうすると撮影に行くわけだけれど、身の回りや近所で撮るのも飽きる。
Lightroomに同じような写真ばかりになってしまうし、横浜という土地柄、他人が写り込まないよう配慮していると全然撮れない。
ネットで見たことのある風景も多くどうも「撮ろう」と思えるシーンが減ってしまった。

そうすると必然的に、あまり撮られていない場所や、日常では目にすることのないものや風景を求めたくなる。
そしてそれが気候や地形、野生動物や植生、文化や伝承といった様々なパラメータからもたらされるとすると、高い山からの眺望に依存したりそこから見下ろせる世界もまた撮りたい事象の一つになる。
まして、あまり見かけないものをとなると、アクセスの良さは相反する要素なので、撮影機材一式を担いで訪れる人が少なく、撮れ高が確率に依存しているような場合の方が目的に合致していると思えてきた。
それを求めるとどうしても山がちなところとなり、そこに山があるから撮るために仕方なく登る、ということになった。

時間を忘れて

友人と街歩きをしていると、話したり寄り道をしたりで時間を忘れてしまう。
日の短い冬場、空気が乾燥している冬場、夕焼け空が綺麗なのに。

六角橋商店街のコーヒー店に入った。
店主一人で切り盛りする、けれど2階建ての大きなコーヒー店だ。
入り口には注意書きが大きく書かれており、ワンオペで時間を要することに納得できるなら入ってよしといったことが書かれていた。

これはとても気持ちが良い。
時間が読めないことを宣言しており、「空いた時間にちょっと休憩」といった他の(ファストフード的)コーヒー店が作ったかもしれない常識と照らして、明確に違いを説明している。Expectation Control だ。
更に気持ち良いのが、水を出すと同時に「後で注文を聞くから、決めて待っておくように」と明確に指示がある。
多くの場合、人の決定は瞬間的に決まっていて、その決定の理由付けのために「
考える」ふりをしていると思う。そう思うからこそ、決めて待てという指示は、迷うほどパラメータが無いのだからさっさと結論せい、という風に聞こえて気持ちが良い。

そんなことがあって、古書店を何軒も見て歩いていたら16時。
日没が遅くなったとはいえ、17時では夕焼けは見えない。
とっくに沈んだ太陽を追いかけるように赤い光が西の空へ落ちていくのを眺めながら、時速6kmで歩きながら港にたどり着いたときには真っ暗だった。

マイペースの使い分けが要るんだなあということにこの頃よく気付かされる。
自分の目的はいつでも歩くこと。どこでも歩きたいだけ歩けるように、歩き続けて歩けるようにしておきたい。

撮るために歩くし、歩き続けられるために日頃から歩く。
歩くのに付き合ってくれる、自分一人では気付かない場所を教えてくれる、親切な友人に感謝。

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