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ミャンマーとそのまわり、幸せをくれる暮らしのモノとコト_Vol.1_タイ・チェンライで出会い、ミャンマー・ヤンゴンで再会した運命のSIAMスプーン

ヤンゴン在住4年目、3歳男子の母のイワサマキコです。

ともすれば、バタバタと過ぎて行ってしまうミャンマー・ヤンゴンでの日常ですが、日々の暮らしに幸せをくれるモノやコトを見つけるのがささやかな楽しみです。手仕事やアンティーク、伝統工芸品が大好き。

旅先で見つけたものを日常で使うのが至上の喜び。そんな日々に幸せをくれるモノやコトをご紹介します。

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そのスプーンと出会ったのは、タイ・チェンライにある「はなぞのコーヒー」というカフェでした。

両親と当時2歳だった息子と共にチェンライを訪れ、立ち寄ったそのカフェは、池のほとりにあり、緑がそこかしこに見えるのどかで気持ちの良い空間です。

日本の方が経営しているお店だそうで、旅行者には名の知れた場所だとか。

珈琲の美味しさにもホッとしましたが、私の目をひいたのは、カフェで出されたコーヒーカップに添えられていたスプーンでした。

真鍮と思われる金属部分には、仏像。
そこに素朴な木の組み合わせがなんともユーモラスで可愛らしく、一目惚れです!

「これはどこで買えますか?」とお店の人に尋ねると、「ナイトマーケットにあるんじゃないかな」と教えてくれ、私は滞在中に、チェンライのナイトマーケットのお店を探し回りました。

ところが、ナイトマーケットで売っているスプーンは、ピカピカしたゴールドで「THAILAND」と書かれたお土産用のものばかり…

私が一目惚れしたスプーンは、どうしても見つからず、チェンライを後にしたのでした。

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それから、1年と少しの時が流れ、ヤンゴンで私は誕生日を迎えました。

夫と、3歳になった息子と、大切なパートナー達に、誕生日をお祝いしたもらったのは、ミャンマー・ヤンゴン市内にある一軒家レストランです。

ミャンマー産の食材を使って石窯で焼き上げるピザや、ローストチキンが美味しいお店で、アンティークの看板やシックなチークの家具に、伝統のテキスタイル製クッションを組み合わせるインテリアのセンスも大好きな場所です。

ヤンゴンに移り住んだばかりの3年前、私にとっては、数少ない癒しの空間でした。

最近、そのレストランの店頭には、いかにも商売人らしい面構えのムスリム系ミャンマー人のおじさんがアンティークの食器や道具を広げて売っています。

古い道具が大好きな私は、行くたびに色々見せてもらい、少し前にアイルランド製のお皿を1枚購入しました。

誕生日ランチの合間に店頭を訪ねると、もちろん商売人のおじさんは私の事を覚えていました。

「前に買ったお皿、よかったでしょ」「今日も面白いものが入っているよ」と昔の日本製のティーセットを見せてくれたおじさんですが、私の目はその隣に釘付けになりました。

そこには、チェンライのカフェで見た真鍮の仏像と木のスプーンが5本セットで置いてあったのです!

今日は私の誕生日、1年越しの運命の再会…!

カフェで見たものには文字は入っていませんでしたが、こちらのスプーンには、「SIAM」の文字入り。

1939年まで、タイの正式国名はSiam([sàˈjǎːm] サヤーム、英語発音: [saiˈæm] サイアム、日本語発音:シャム)で、それをスプーンに仏像と共に刻印してしまうセンスに心がふるえます。

これは、ワタクシの故郷に置き換えると、"大日本帝国" と刻印されたお箸が売っているようなものでしょうか…

しびれた!ふるえた!

私は、はやる気持ちを抑えつつ「タイランド製だよね?おいくら?」と尋ねました。

「君は僕のカスタマーだからね!5本で50USDだよ」「チャットなら76500チャットだね(※1)」とおじさん。

(高っ!)

私にはアンティークの価値は分かりませんし、コレクターでもありません。

アンティークに対する審美眼を持たない私が判断基準にするのは、普段の食器やキッチン道具を選ぶ時と同じです。

"普段の生活の中で、使えるもの"
"それにいくらなら出せるか"

この私の判断基準に照らし合わせると、スプーン5本で50USDはだいぶお高い。

「ちょっと考えさせてね」とその場を離れましたが、もちろんスプーンは手に入れるつもりです。

スプーンは5本。1本600円〜700円くらいなら出してもいいかな、と頭の中で計算しました。

「これでどうだ!!」
私は、iPhoneの電卓で "30000" と打ち、おじさんに見せましした。
(30000チャット=日本円で2100円=18USD)

いきなり、当初の価格の3分の1を提示され、おじさんは大げさに驚いてみせました。

「これじゃあ全然儲からないよ」「神様がこの値段ではダメだ」「せめてこの値段ではどうだい」

おじさんのスマートフォンの電卓には"48000"の数字。
(48000チャット=約3400円=約30USD)

原価がいくらかは知りませんが、おじさんもだいぶ頑張ってくれています。

私が、もうひと押し、「オッケー分かった!じゃあ、これでどう?」(冷静に考えると、オッケーでも分かってもいない)と "45000" の数字を自分のiPhoneで見せると、

おじさんも頷き、めでたく交渉成立となりました。
(45000チャット=約3200円=約28USD)

そして、私は、チェンライでの出会い以来ずーっと欲しかったスプーンを我が家に迎えることとなったのでした。

これで、アイスクリームを食べようか。

それとも、出会った時と同じくコーヒーカップとソーサーと一緒に使おうか。

コーヒーカップとソーサーは、タイのセラドン焼きが同郷どうし相性がいいかしら。

イッタラのティーマにグラノーラを入れて、ヨーグルトをかけて、このスプーンで掬おうか。

※ちなみに、この一軒家レストランのココナッツジェラートはヤンゴンイチ。

スプーンなんて、100円ショップでも買えるのだけれど、そして、100円ショップのそれも、アイスクリームを食べたり、コーヒーのミルクをかき混ぜたりするのに充分な品質を持ち合わせているのも知っているのだけれど。

私は、SIAMスプーンを使う度に、チェンライでの出会いと、誕生日のヤンゴンでの再会と、ムスリム系ミャンマー人のおじさんとの交渉を思い出す。

それは、日常の、至上の喜び。

(※1) ミャンマーの通貨はチャット。3年ほど前は1USD=1000チャットくらいのレートでしたが、今はチャットが安く 1USD=1350チャットのレートで計算されています。ミャンマー国内では、USDで価格を表示したり、提示したりすることは珍しくありません。


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イワサマキコ
2014年〜ミャンマー在住。IT企業を現地でやっている夫、現地のローカル幼稚園に通う3歳の息子と一緒に、日々アレコレドタバタやってます。サポート頂いたら、新しいモノコト探しに使わせて頂きたいです!

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