米経済指標、鈍化傾向みえる。貿易戦争は益々拡大へ
米国株式市場は独立記念日の祝日を控えた短縮取引の中、主要指数がそれぞれ終値での過去最高値を記録した。景気鈍化の兆しが経済指標によって新たに示され、米連邦準備理事会(FRB)がよりハト派に傾くとの見方が強まった。
市場が織り込む7月の連邦公開市場委員会(FOMC)での0.5%の利下げ確率は29.7%で、前日の25%、1週間前の24%から上昇。0.25%利下げの可能性は完全に織り込まれている。
米経済指標、鈍化の傾向みえる
米商務省が3日発表した5月の貿易赤字は前月比8.4%増の555億ドルと、5カ月ぶりの高水準となった。また、5月の製造業新規受注は2カ月連続でマイナスとなり、製造業が弱含み続けたことを示した。
グローバルト・インベストメンツのシニアポートフォリオマネジャー、トーマス・マーティン氏は「指標はまちまちで、ひどくはない。ただ、概して下向きだ」と指摘。「債券市場で利回りが過去最低を記録し続けている。それは景気が明らかに鈍化し、FRBに利下げが必要というメッセージで、株式市場としてはOKだと言っている」と述べた。
経済指標ではこの他、企業向け給与計算サービスのオートマチック・データ・プロセッシング(ADP)とムーディーズ・アナリティクスが発表した6月の全米雇用報告で、民間部門雇用者数が10万20000人増と、ロイターがまとめたエコノミスト予想の14万人増を下回った。
前月分は当初の2万7000人増から4万1000人増に上方修正された。ただ引き続き2010年3月以来の小幅な伸びにとどまった。
6月の内訳はサービスセクターで11万7000人増。商品生産セクターで1万5000人減。
規模別では小規模企業が2万3000人減、中規模企業は6万人増、大規模企業は6万5000人増だった。
激化する貿易戦争
経済指標の鈍感が見えているなか、貿易戦争は益々激化している。
6月29日の米中首脳会談後で、ファーウェイの制裁緩和をトランプ大統領は発表したが、米商務省内では1日、ファーウェイを引き続き禁輸対象企業として扱うよう指示する通達が出回った。
具体的にどのような形で制裁が緩和されるのかを巡り混乱が生じている。
米国家経済会議(NEC)のカドロー委員長は3日、米中通商協議の継続に向け、両国の交渉団トップが今後1週間のうち(訂正)に直接顔合わせすると語った。
欧州連合(EU)と米国についても、航空機への補助金を巡る米国との対立している。
米通商代表部(USTR)は1日、EUによる欧州の航空機大手エアバス(AIR.PA)への補助金を巡り報復関税を課す可能性のある40億ドル相当の追加品目リストを公表。オリーブやイタリア産チーズ、スコッチウイスキーなどさまざまな食品や酒類が盛り込まれた。USTRは4月にも関税対象となり得る210億ドル相当の品目を公表していた。
EUはこの問題が世界貿易機関(WTO)によって裁定されるべきとし、米国が自ら可能性のある損害額を算定し、報復措置の規模を測ることはできないと主張した。
こちらもいずれ通商協議が開かれるだろう。
世界的な金融緩和政策の拡がり
貿易戦争の影響により、世界的に金融緩和を動きが活発化している。
トランプ米大統領は3日、米国は中国や欧州による為替操作に対抗すべきで、資金を供給する必要があると強調した。
EUのドラギ総裁は金融緩和政策に積極的な発言をしたことに加え、2日にブリュッセルで開いた首脳会議で、欧州中央銀行(ECB)総裁にフランス出身の国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事、欧州委員長にドイツのフォンデアライエン国防相を起用することで合意した。
ラガルド専務理事はハト派とされており、金融緩和に積極的となることが期待できる。
これにより欧州市場の株価は上昇したのである。
総括
世界的に金融緩和が拡がっているなか、日本は今年10月に増税する。
増税により、日本経済が圧迫されるとの見方が強い。
そうなった場合は、日銀による金融緩和処置が、これまでならとられてきたが、現状これが厳しくなってきた。
トランプ大統領は他国の金融緩和には厳しい姿勢を見せているからだ。
また、参議院選挙が終われば、日米の通商協議が開かれる。
貿易戦争の影響を、日本にダイレクトに受ける可能性がある。
日本は対抗する手段はあるのか。
参議院選挙の結果とともにみていきたい。
出典
ロイター 7/3 米株主要指数が最高値更新、利下げ期待で
ロイター 7/3 米、中国や欧州の為替操作に対抗すべき=トランプ氏
ロイター 7/2 ECB総裁にラガルド氏、EU首脳が合意:識者はこうみる
ロイター 7/3 ファーウェイ輸出許可、「最も厳格な審査」の上で判断=米商務省
ロイター 7/3 EU、航空機補助金巡る対米協議に前向き
ロイター 7/3 訂正:米中通商交渉継続へ、今後1週間に直接協議=NEC委員長