こみやまK

童話作家 ☆ ☆ 形にならなかった たくさんの言葉 想い ☆☆捨てたくなかった あのときの いま

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童話作家 ☆ ☆ 形にならなかった たくさんの言葉 想い ☆☆捨てたくなかった あのときの いま

マガジン

  • 童話の本棚

    童話の本を集めてみました。 気に入った本があったら手にとってみてくださいね

  • 風をあつめて

    小さな小さなメルヘン集 風をあつめて 目次 1、くものバス停 2、花てまり 3、月見草のおもいで 4、よもぎが原の魔女 5、さよならのわすれもの 6、ぼくをうたないで 7、いつか大空へ 8、月夜の草原 9、ヒガンバナがさいた ⒑、トンテン山にふる雨は ⒒、ライオン丸 12、雪がふったら ⒔、今年のかぜは耳鼻科へどうぞ ⒕、さびしがりやのスベリダイ ⒖、小夜の雨 ⒗、五郎さんの夢 ⒘、おぼうさんは伝染病 ⒙、サンタさんの手 ⒚、メッセージ

  • メルヘンの世界へようこそ!

    大人になっても 時々のぞいてみたくなるメルヘンの世界 いえ 大人にこそ必要なものなのかも……。

  • むかしむかし 魔法使いのおばあさんシリーズ

    魔法使いのおばあさんと助手のネズミくんがくりひろげる楽しくもチョットせつないお話です シリーズのひとつは、ひとりじゃないってというタイトルで文研出版から出版されました。

最近の記事

じゅんちゃんとまほうつかいのおばあさん

            1  ふんちゃんが おやしき町まで きたとき、犬のほえる声と、おとこの子の さけぶ声 がきこえてきました。 「バカ、バカ、ほえるなよ。あっちにいけよ」  なきそうな声をだして、大きな門をでたりはいったりしているのは、3年生のたつるくんです。  たつるくんの 五段へんそくの自転車には、新聞が やまもり つまれています。 「たつるくん、あたし 行ってあげようか」と、ふんちゃんは いいました。 そのとたん、たつるくんの顔に パッとでんきがつきました。いい

    • ふんちゃんの二年生の友だち

      1  もくれんのつぼみがふくらみはじめ、風に花のにおいのする季節になりました。  もう、三月も10日がすぎていました。 「うっそだー」  運動場のジャングルジムのてっぺんで、ふんちゃんは、大きな声をあげました。 「うそじゃないよー」  ごろちゃんが、むきになったように大きな声でいいかえしました。 「なっ、うそじゃないよな」  ごろちゃんは、ふんちゃんのとなりにすわっている そらくんにいいました。 「うん、みほちゃんがいってたし、兄ちゃんにきいたら、兄ちゃんのときも、そうだっ

      • メッセージ  だれかがよんでる……

         ふう子はそんなきがして家をでた。ころもがえをしたばかりのセーターに、オカッパのかみがゆれた。  図書館まえのいちょう並木は、リンとむねをはって整列しているように美しかった。  ふう子は、この並木道を通るときにいつもするように目をほそめて、いちょうをみあげながら歩いた。青空と色づいたいちょうの葉が、美しいコントラストをみせていた。  ふう子は、ドキンとした。  ふう子をよんでいたのは、このいちょう並木だったのかもしれないと、おもったのだ。  離婚して家をでたかあさんとも、海

        • サンタさんの手

           クリスマスイブの日、アルプスのモンブランに登った村田さんのおみやげ話です。  村田さんが、モンブランの頂上にたどりついたとき、そこには一足先に、お客さまがいました。登山者にしては、へんなかっこうだなとサンタクロースのようなふくをきたおじいさんをみたそうです。赤いビロードのふくが雪山にはえてきれいでした。  村田さんにきがついたおじいさんは、 「まっておったところじゃった。さっ、たすけてもらおうかな」 というと、白い大きなふくろのなかから、つのぶえをとりだしました。そして、

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        • 童話の本棚
          3本
        • 風をあつめて
          18本
        • メルヘンの世界へようこそ!
          1本
        • むかしむかし 魔法使いのおばあさんシリーズ
          12本

        記事

          おぼうさんは、伝染病

           みさとの家は、大家族です。  おじいちゃんにおばあちゃん、おとうさんにおかあさん、それに三人のにいさんと、犬のポーがいます。  八月のお盆がちかづくと、みさとの三人のにいさんは、むずがゆいような顔をします。それをみると、みさとまで なんだか おへそのあたりがかゆくなってきます。  十三日の朝になりました。おかあさんは、みさとと、三人のにいさんをあつめると、 「あんたたち、けんは、中学生、ひろは、六年生、なおは、四年生。みさとも、二年生になったんだからね。きょねんのようなこと

          おぼうさんは、伝染病

          五郎さんの夢

          「五郎さん、このごろげんきがないがどうした?さては、恋人にでもふられたかい?」 「ちえっ、そんなんじやないよ」  五郎さんと、トメさんは、長距離トラックのあいぼうです。  運転手のトメさんは、助手の五郎さんのおやじといっていいくらいに 年がちがいます。でも、会社でも、このふたりのように なかのよいコンビは、めったにいません。北海道から九州まで、ふたりきりの旅をすることもあります。どちらかが元気がないと、たちまちしごとにひびきます。菜の花のいっぱいさいた野原で、車をとめてもらっ

          五郎さんの夢

          小夜の雨

           雨がふってきた。  小夜の目から しおからい雨がふってきた。  それでなくても、まいにち 雨ばかりでうっとうしいのに、おまえまで なくんじゃないよと、かあちゃんはいうけれど、いちどふりはじめた雨はそんなにかんたんに やみはしない。  なにもかも、弟の健がわるいのだ。あの子があんなところで「オシッコ」と、なかなければ、いまごろ小夜は、プーさんをだいていられたのだ。  さっき、小夜は、とうちゃんとかあちゃんと健の三人でスーパーにかいものにいったのだ。めずらしくケイリンであてたと

          さびしがりやのスベリダイ

           小高い丘にある公園に、さびしがりやのスベリダイがいました。 公園には、ヒメジオンの花がさきみだれていました。小さな子どもなら、あたまのさきまで かくれてしまうほど……。  そのせいでしょうか、団地のちかくだというのに めったに子どもたちはあそびにきてくれません。  ためいきばかりついていたスベリダイが、いつのころからか たのしそうに わらいごえをあげるようになりました。  そのことにきがついた三日月が、ある夜、スベリダイに声をかけました。 「さびしがりやのスベリダイくん、

          さびしがりやのスベリダイ

          もうすぐクリスマス

          「ネコ、もうすぐクリスマスだね」   けいくんは、ねこのネコにいいました。  ネコは、おこたのよこで のんびり 毛づくろいをしながら、 「クリスマスって、なんですか?」とききました。 「えっネコ、クリスマスだよ。ほら、ツリーをたててケーキをたべてさ、サンタさんがプレゼントをもってきてくれるじゃない」  けいくんは、ネコがあまりにも ものをしらないことに、かおをあかくしていいました。そして、ここに ママがいなくてよかったとおもいました。  ねこのネコは、けいくんのねこです。犬ず

          もうすぐクリスマス

          今年のかぜは、耳鼻科へどうぞ

           みなさん、にいたかナシをしっていますか?  そう、茶色いかわの大きな大きなナシ、とても、あまくておいしいナシですね。あの大きなナシをひとくちで食べた女の人がいるっていっても、しんじてはもらえないかもしれませんね。  これは、その女の人のお話です。  サコちゃんは、高知の町でブテックをひらいています。  とても元気ではたらきもののサコちゃんが、どうしたことでしょう。かぜをひいてしまいました。  のどがいたくて、つばものみこめない状態で、熱をはかると、39度もありました。あわ

          今年のかぜは、耳鼻科へどうぞ

          雪がふったら…

          「ちさとちゃん、この雪のなかをそんなに走ってどこにいくの?」 「駅!とうちゃんがかえってくるの」 「そりゃあ よかったねぇ」  やおやのおばさんのこえが、ちさとのせなかをクイッと、おします。  ばあちゃんとふたりぐらしのさびしさを ちさとがいっしょうけんめいにがまんしていることを、やおやのおばさんは、よくしつているのです。  この冬はじめての雪は、大みそかのよるからふりはじめ、お正月をしろ一色でむかえました。  ちさとのとうちゃんは、三年連続のでかせぎです。かあちゃんは、ち

          雪がふったら…

          ライオン丸

           ちさとは、かずみちゃんの家の前をとおるとき、かならず いきをとめる。  かずみちゃんの家は、大きい。それなのに門がない。だから、ひろいおにわがまるみえだ。むこうがみえるということは、あのライオンのような犬からも、こっちがみえるということなのだ。  あのライオン丸(と、ちさとは、かってになまえをつけていた。あの犬に、五郎なんていうなまえは、にあわない)、あれさえいなければ……と、ちさとは、かずみちゃんの家の前をとおるたびにおもう。  なのに、ライオン丸は、いつもおなじところに

          トンテン山にふる雨は

           雨がふりつづきました。  ふってもふっても、おわりがないように、ふりつづきました。人々は青空の色をわすれ、もう二度と太陽がかおをださないのではないかと、ためいきをつきました。  三日まえには、水のあふれた小川に、子どもがながされました。  ふりやまない雨にしびれをきらした大工のトクさんが、 「おれはもう、がまんできねぇ」   おかみさんにいいました。  トンテン山の一本杉にのぼってみると、ハシゴをもちだしました。この村では、雨がふるときは、どこよりもさきに、トンテン山にふ

          トンテン山にふる雨は

          ひがんばながさいた

           「さとこー」  おばあちゃんがよんでいます。庭でおしろい花のくびかざりをつくっていた さとこは、いそいで おばあちゃんのへやにいきました。  今年 九十才になるおばあちゃんは、もう何年も、ねたきりです。 「なあに、おばあちゃん」  さとこはがたずねると、おばあちゃんは、 「ひがんばながさいたか、みてきておくれ」 と、いいました。  すずしくなったとはいっても、まだ ひがんばながさくにははやすぎます。でも、さとこは、もしかしたらとおもい、おばあちゃんにおしえてもらった土手まで

          ひがんばながさいた

          月夜の草原

           私の家のちかくには、草原があります。  もともと山をけずつてたてられた団地なので、一歩外にでると、秋には いちめんのススキ野原がひろがります。都会でそだった私には、そんなけしきがめずらしく、一日一度は、散歩せずにはいられません。  そんなある日、 「なんなの?これは」 私はおもわずさけんでしまいました。銀色にゆれるすすきのあいだに、さびついたセンタクキから、ステンレスのおふろ、タワシから こわれたサンリンシャまでがすててあるのです。  車ではこんできて、ポイッとすてたのでし

          いつか 大空へ

           四年生の教室で、ひとりの少年をかこんで七、八人の男の子たちが、くちぐちにさけんでいました。  女の子のしらせで、先生がとんできました。 「どうしたの?」  先生のしつもんに、少年は、こたえようとはしません。かわりに、 「じゆんが、空をとびたいなんていうんです」  少年をとりかこんだ男の子のなかで、いちばん大きな子がいいました。  先生は、なんだそんなことなのという顔で 「どうして それがおかしいの? パイロットがゆめなんて、すてきじゃないの」といいました。 「ちがうんです。

          いつか 大空へ