
駄菓子屋と秘密基地|田舎暮らしを記事で体験してみませんか?
私が通っていた小学校の近くには、一軒の小さな駄菓子屋があった。木製の引き戸をガラガラと開けると、甘い香りが鼻をくすぐり、色とりどりのお菓子がずらりと並ぶ光景が広がる。
学校帰りには、友達と集まって必ずこのお店に立ち寄るのが日課だった。駄菓子屋には地域の子どもたちが集まり、それぞれが小銭を握りしめて何を買おうか悩むのが、当時の何気ない楽しみだった。
店を切り盛りしていたのは、年配のおばあさんだった。白髪交じりの髪を小さな三角巾でまとめたその姿は、なんとも親しみやすい雰囲気を漂わせていた。
私たちは勝手に「ばあちゃん」と呼んでいたが、本当の名前を知る子は少なかった。駄菓子屋のばあちゃんは、子どもたちをいつも優しい笑顔で迎えてくれた。店に入ると「今日も来たのかい?」と、まるで家族のように声をかけてくれる。
ある日、ばあちゃんは私にそっと手渡してくれた。「毎日来てくれる坊やには特別にこれ、あげるよ。」
と言いながら渡してくれたのは、小さな袋に入ったキャンディだった。その日は学校で嫌なことがあった日だったが、ばあちゃんの心遣いで一気に気持ちが晴れた。
特別に何かをもらえることが嬉しいのはもちろんだが、それ以上に「自分を気にかけてくれる人がいる」という温かさを感じたことが忘れられない。

駄菓子屋から少し離れた場所には、私たちの秘密基地があった。近所の空き地の片隅にある竹藪が、私たちの冒険の拠点だ。
放課後に駄菓子屋でお菓子を買った後、秘密基地に向かうのが私たちの日課だった。竹藪の奥には、小さな空間が広がっていて、そこに木の板や段ボールを使って簡易的な小屋を作った。
大人の目にはただのガラクタに見えたかもしれないが、私たちにとっては立派な城だった。
秘密基地では、お菓子を食べながら夢中で話をした。新しく買ったカードゲームを広げたり、学校では話せない内緒の話をしたり、時には他のグループと「陣取り合戦」を繰り広げたりもした。
秘密基地は子どもたちの想像力を最大限に広げる場所だった。どんなに疲れても、秘密基地での時間はあっという間に過ぎていった。
駄菓子屋と秘密基地、私たちにとってこの二つは切っても切り離せない存在だった。
駄菓子屋で買ったお菓子があったからこそ、秘密基地で過ごす時間がさらに楽しいものになったし、秘密基地での遊びがあったからこそ、駄菓子屋への毎日の寄り道が欠かせないものになった。
まるで循環するように、二つの場所が私たちの放課後を彩っていた。
今でも駄菓子屋で過ごした時間と、秘密基地での冒険は、私の中で特別な思い出だ。あの時のばあちゃんの優しい声や、仲間と笑い合った秘密基地での時間を思い出すたびに、胸が温かくなる。
都会では味わえないであろう田舎ならではのつながりと、子どもたちだけの自由な時間。
それらは私の心に、今も大切に残り続けている。