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「つみびと」山田詠美 完結(追記)

日経新聞夕刊に掲載中の小説「つみびと」山田詠美。
育児放棄した母親が幼い子どもたちを施錠したマンションの一室に留守番させたまま帰らず、熱中症で幼子二人が亡くなった事件。
…実際にこのニュースが驚きや怒りと共に報じられたのをはっきりと覚えている。
誰もが非難した。
なんてひどい母親だ、と。

また、そんなことになる前にもっとどうにかならなかったのか?
誰も手を差し伸べなかったのか?どこにも助けを求めることができなかったのか?
公的機関へ相談するなどの手段を知らなかったのだろうか?と母親の愚かさに溜息をつく。

起きてしまったことはとても重大で、どう弁解しても到底、許されない。
だけど、そうなる前の生活や日々の暮らし、人生があった。
一体、どうしてそんなことになってしまったのか。
そのことをとても丁寧にひとつひとつゆっくりと描く作品。

事件を起こした“蓮音”、その母の“琴音”、それぞれの幼少期や思春期の話、また事件後の話などがランダムに綴られる。
そのため、全体像が立体的に浮かび上がってくる。
…のだが、夕刊の連載小説のためページを遡って読み返すことができず、時々、あれ?これは“蓮音”と“琴音”どっちの過去だっけ?と記憶が混乱する。
二人とも幼少期に親から虐待を受けているのだ。
似ている。
似ているが、当然ながら生き方はそれぞれ異なっていく。

蓮音は「ひどい母親」だったのか?
結果的には、取り返しのつかないひどいことをしたのだが、
日々の生活の中には笑いもあり、幸せもあったことが描かれる。
そうして同時にべったりと張り付くような絶望が絶えずすぐそばにあることも。

時折、あまりの救いのなさに読むのがつらくなるような回もある。
しかし、夕刊をポストから取って来て毎日最初に読む。

挿絵は横尾忠則さん。
一瞬、本文の内容と関係がなさそうな絵に思う時もあるのだけど、もう一回見直すと、なんとなくわかる気がしてくる。
いろんな手法で描かれた絵で毎回、ちょっと驚く。

話の結末というか、事件の出来事は既に提示され、わかっている。
この先、どういうふうに話が広がり、結んでいくのか…
毎日楽しみな連載小説は久しぶりで嬉しい。

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蓮音の子ども時代に似た境遇の女の子と話したことがあるのを思い出した。↓
「けなげな彼女」(2016年11月の日記)

あれから2年…彼女はどんな高校生になっているだろうなぁ…
「つみびと」は実話が元になっているが、本当に蓮音のような苦労をしている子どもが身近にいる。たぶん、彼女の他にもたくさん…

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追記 12/19
いよいよお話も結びに入ってきましたね。
多数のアクセス感謝です。
よろしければ、皆さんの「つみびと」を読んで感じることをお聞かせください。
コメントお待ちしています。

母 琴音は安全地帯を手に入れましたね。
つらい思いをしている時に背を撫で続けてくれる人が側にいる。
それが、どんなに強い心の支えになるか…。

蓮音が育児と生活に疲れ逃避したくなる気持ち、ほんとはすごくわかる…。
きっと、みんな同じ。息抜きは必要だもの…。
子どもを預けられる場所、人…
もっと上手に息抜きする方法…
いくらでもあるんだけど、蓮音には一つもなかった。
自分から手放したものもあるし、与えられなかったものも…。
とても愚かだけど…彼女のこれまでの軌跡をこうまで丁寧に辿ると
判決に全く温情がないのも違うような気がしてくるね…。

とは言うものの…桃太と萌音はあまりにも可哀想で…
本当に読んでいてつらかったわ〜…
桃太の「ママ、だいじょび?」には泣かされた…っっ。。

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12/26 追記
昨日、ついに完結しましたね!
毎日毎日、濃密で読み応えあったわ〜
とても読みやすく、感覚的にも伝わってきやすい文章。
それだけに、絶望的な感覚がひしひしと伝わってきて…本当につらかった。

ラストは蓮音と琴音の対面かなと予想できたけど、実にリアリティのある描写で、良いラストシーンだった。
差し入れの希望を聞かれて、日用品と駄菓子を頼むのは、身内だからよね。
どれだけの確執があるかがずっと語られていたのに、こんなふうにぎこちないながらも面談できたのは
事件からの5年の間、蓮音も琴音も、いろんなことをたくさん考えたからなんだろうなぁ…。

幸せと声に出して言えば、幸せな気持ちになれると蓮音に教えたのは誰だったっけ?
読み返したいから、書籍化されたら、また手に取りたい。
幸せではない状況だからこそ、幸せと言ってみる。
ママと、自分を捨てた母親を蓮音が呼んで、ようやくこの物語に薄日が差した思いだ。


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2018年7月の日記再掲

私のブログ 夢で逢えたら… に同じ記事があります


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