すべてはプレジャーから始まる|山上 優さんのシアタークラウンWSレポート
シアタークラウンの1日ワークショップに参加してきました!
講師は山上優さん。
優さんは最初「私の師匠は褒めるなんてことは一切ない人だったので、きついと感じる人もいるかもしれません」なんて自己紹介でおっしゃっていました。でも、個人的にはきつさなど全く感じず、むしろ強くて愛があるメッセージをたくさん受け取りました。
私は最近は、あまりワークショップに出向いて学ぶこと体験することが少なかったです。久々に体験したビンビンに刺激を受ける感じや、ともに学ぶ人と場を共有する感じがとっても心地よかったです!
ワークショップでは参加者が順番にトライすることが度々ありますが、「早くこい!」「もう一回やりたい」「次当たらないかな」と勝手に前のめりになる自分も発見。演劇大好きなんだな〜と改めて再確認する時間でした。
簡単にですが、実施したワークを紹介します!
自己紹介①
誰かのをみている間は面白かったですが、いざ自分の番になると、「う〜〜」っていつまで言うの?とか、ゆっぴーのやり方とか気にしちゃいました。笑
自己紹介②
自分が呼ばれた瞬間に体が固まる人や、自分が名前を呼ぶ番なのに思わず動いてしまう時がすごく面白かったです。
このゲームに慣れていて、スムーズにできる人を見て、「え!すごい!私もそれやりたい」と思ったり、アウトしたくないけど名前は呼ばれたい自分がいたり、ルールはわかっているのにその通りには当たり前に動かない自分がいたり、ゲームを通して見えてくるものはたくさんあります。
ポーズと音を回す
最初は前の人がやったポーズと似たものが多く回ってきました。しかし、優さんの「できるだけ違うもので」というコメントをきっかけに、徐々にオリジナリティが出てきます。
もらったものを変換させて回す
次は、ポーズをもらうのではなく、見えない物体をもらっていくゲームに発展します。
慣れてくると、物体を変形させる間にも口から音を出している参加者が増えました。物体を変化させる過程がユニークで、みている周りの人が声を出して笑っていました。
が、私の番が来た時は緊張してしまい、黙りこくって変化させる瞬間がありました。でも、その時に笑いが起こりました。普段だったら、「あ〜やっちゃった、楽しめなかった(正しくできなかった)!」と自己反省しちゃうところですが、そんな自分もOKと気づかせてくれるのが、シアタークラウンの面白いところだなと感じます。
山上優さんの言葉
「自分がウケた瞬間を覚えておいてね」
歩き方を真似して誇張する
本当の人を真似したところから始めているので、いくら誇張しても真実味がありました。どのグループも大爆笑です。
私はみていて、真似が上手な人下手な人がいるし、誇張が上手な人下手な人がいるなと思いました。代表の人が歩いている間に1回だけやった、首を振る動きなんかをキャッチしてずーっとやり続けている人や、片方の手が大きく動く人を誇張する時、太ももを叩いて音を鳴らして大きさを表現している人などです。ここまでやっていいんだという気持ちになりましたし、遊び心の幅広さを目の当たりにしました。
優さんの言葉
「7歳の男の子がガラスを割って逃げる時のような、遊び心やいたずら心を持って欲しい。自分の中にどれだけいたずらの気持ちがあるかが鍵」
「正しくやることが大事なのではない。目の前の人を見て、どこをどう誇張するのか、真似する側の視点が入っていることが面白いこと」
「誰も笑わせようとしていない。素直に真似していることがこれだけ面白い」
通りすがりにゲームを仕掛ける
これはめちゃくちゃに面白かった!
それぞれいろんなアイデアで笑わせようとするんだけど、アイデアそのもので笑うことって多くなくて、通り過ぎる人の反応とか、反応がないことに対する反応とか、そういうことが重なって笑いが生まれていました。(見ていても面白かった)
最初の方は1発のアクションで笑わせにいくんだけど、徐々にやりとりが生まれたり、受け取る側が仕掛け側に回る瞬間が生まれたりと、ワークの中での試行錯誤と進化が面白かったです。
この面白さはなかなかテキストで伝えるの難しいよなぁ。
優さんの言葉
「ウケなかったことは何度もやらない。ウケなかったら辞める・変える」
「Aがやったことに対して、Bが受けたことでゲームが始まった。ゲームになったら面白くなるし好きになる」
「(攻撃的な言葉を言って爆笑された人に対して)今の言葉の中に、本当に攻撃的な気持ちが入っていたら引かれていたと思う。でも、今爆笑だったということは攻撃的な気持ちがなかったから。この微妙な違いが大切」
椅子取りゲームからのなんかやる
これは、結果的にやることはシンプルなクラウンワーク(前に出て何かやる)でしたが、その前に椅子取りゲームを挟むことがユニークだなと思いました。
音楽に乗って感覚的になっているのか、必死に椅子を取りに行ってダメだった時の感じからクラウンに行くのがいいのか、自分で手を挙げずに舞台に上がることがいいのか。優さんが目的としているところを完全に理解しているわけではありませんが、新しい形を体験しました。
優さんの言葉
「その人らしさ、ヒューマニティが表に出てくればクラウンはやってくる。繊細で壊れやすくて美しいもの」
「何も用意していないけど、絶対笑って貰えると思って出てくる。でも、自分が面白いやつだと思ったらダメ。」
「片方に重心を置いている時は、何かから直視するのを避けている時。両足をしっかりつけて目の前のことに直面する」
マスクをつけて、音で笑わせる
これもやったことがあるクラウンのワークでした。なるほどと思ったのは、お題の出し方です。
私がやったことがあるのは「猫の声」とか「牛の声」とかでした。正解を探しやすい私は正しく猫の声をやろうと思ってしまいます。でも、「1925年、ロシア製の洗濯機の音」なもはや誰も知らないし正解もないですよね。自分なりに出すしかないし出せばいいことを示してくれている気がしました。
と、いいつつ、きっと正解探しに明け暮れていたクラウンやインプロ始めたて私は、正しい「1925年、ロシア製の洗濯機の音」を探しにいっていたと思いますがね。ここから抜け出すには、正しい時じゃなくて自分の声が出た時に笑ってもらったという確固たる体験を経ることしかないんだろうな〜。
優さんの言葉
「本人がやりたいと思っていて、お客さんが笑っていることに対して、講師が止めることはできない」
振り向いて「バーン」と驚かせる
夜ご飯休憩を挟み、後半のウォーミングアップをして次のワークに入りました。
本当にこれだけのワークでした。でも確かに、それぞれに合わせて笑いが生まれたり、生まれなかったりと違いがありました。
私の時は、「バーン」した時には何もなかったのですが、ふりむく前の後ろを向いているときに、笑いが生まれました。
そのとき、私は不安でした。「えっと、もうふりかえっていいかな?大丈夫かな」という気持ちがあり、足がちょっともにょもにょと動きました。その瞬間、笑いが起こりました。
改めて、ありのままの自分が出た時が一番面白いのだなと痛感します。
優さんが師事したフィリップゴーリエは、「バーン」としただけでその人を見抜いて、コスチュームを決めたそうです。(すごい)
4人でショーを成立させる
4人が協力しながら、コミュニケーションをとりながら、なんとかショーを成立させるために思考錯誤していきます。
印象的だったのは、「今日の中でウケたものがあるはず。それをやって」ということです。手を替え品を替え、いろんなワークでいろんな面白い瞬間が生まれましたが、それをこのショーの中でやっていくことを求められました。
見ている側も、さっきみたパフォーマンスだからワクワクするし、実際にとても笑わせてもらいました。
優さんの言葉
「プレジャー(喜び)が大事。舞台に立ちたい。舞台に立つことがとても嬉しい。その気持ちを持って上がることが大切」
「お客さんにやってもいいのか聞く。大丈夫だと思ったらやる。」
「お客さんに愛されている間に何かやらないとダメ。もどかしく待ちきれない。」
「お客さんがどう言っているのか、何をするのか、フィーリングとセンスしかない。迷っていたら一回引っ込んでみる。まだいて欲しかったらお客さんが反応してくれるはず」
ニセロミオとジュリエット
ロミジュリを上演してはダメです。
ロミオとジュリエットというアイコンだけがある中で、お芝居を作ります。これまで一回の笑いやその場の笑いを作ってきましたが、ストーリーの程に落とし込むのが難しかったです。
ストーリーの程を取りつつ、展開はお客さんに都度聞くよう指示がありました。聞いてダメだったらどうするんだろうと思いつつも、あれやこれややってみて、エンディングを迎えた時は不思議な感じがしました。
最後は優さんに質問タイム
ということで、あっという間の7時間ワークショップでした。
最後は優さんが拠点としているフランスはパリの演劇や環境についてお話しを聞いたり、クラウンについて質問させてもらいました!
フランスの文化と日本の文化の違いを感じたり、クラウンがフランスでどのように活躍しているのかという話は、とても刺激を受けました。
素敵な時間をありがとうございました!
まとめ
冒頭にも記載しましたが、最近新しい刺激や学びを得ていなかった自分にとって、大変貴重な時間でした。テキストにすると辛辣なことを言っているのに、全く悪意を感じない、むしろ愛の溢れる言葉を出してくれる優さんの存在に触れたということが、まず大切な体験だったように思います。
もう一つ印象的だったことが、ワークのたびにふりかえりをしないことです。私のワークショップは、基本的にやった後にふりかえりを言葉ですることが多いです。自分の周りにいる人もそういう人が多いように思います。
しかし、優さんは自身のフィードバックはしますが本人にふりかえりを求めませんでした。
その分やる時間がとても多いし、やりながら形が変わっていくことができたと思います。
私が帰った時にも、圧倒的に体も心も頭も満ちているし深く学んだ感覚がありました。でも、じゃあ何をどう学んだのかと聞かれると自分の中で言語というわかりやすいものは持っていないのです。そして言語化しようとすると薄っぺらいものに成り下がってもらうような感覚さえしました。
この、圧倒的に満ち足りた感覚こそ、演劇の面白いところであり価値ではないだろうかと考え始めた私です。そして、ここまで満ち足りた感覚になれる人って、大人には少ないのではないだろうかとも感じます。
そんな人たちに、意義深い時間を提供していきたいなと改めて認識しました。
ワークショップ後のご飯会で優さんがおっしゃっていた言葉で、このレポートを締めたいと思います。
企画してくれた、さく、ゆうり、ひろしもありがとうございました!
本人が楽しいことでないと、続けることはできない。
本人が喜んでない(プレジャーがない)と、お客さんに喜んでもらうことなんかできない。まずはそこから始めることが大切です。