放送大学「より良い思考の技法――クリティカル・シンキングへの招待』」受講ノート~第7回
認知心理学から、人の推論プロセスを知る
今回は認知心理学とメタ認知の話から始まった。まず、ジョン・デューイが唱えた「認知の二重過程理論」。人の認知には二つのシステムがあるという。
システム1は、無意識、自動的に素早く実行される過程であり、ヒューリスティック(経験則に基づいた直感的で簡略化された思考)で働く。
システム2は、意識的にシステマティックな処理を行なう過程であり、スピードは遅いが、論理的・分析的・制御的に働く。
人間は何かに反応するとき、まずはシステム1が直感的に働く。しかし変化の激しい現代において、システム1にしたがって動くだけでは、ベターな行動ではないだけでなく、危険であることも多い。そこで、メタ認知的思考(自動的な精神の働きを抑制し、アルゴリズム的精神を目標思考的に働かせる)を使って意識的にシステム2を使おうということが今回のテーマである。
直感と計算結果が異なる確率
直感で考えた確率と、実際に計算して求められる数字上の確率が大きく異なることがある。とくに「余事象(『ある場合』以外の事象)」を使ったものになると、わたしのように数字に弱いものはお手上げになってしまう。
たとえば、当選確率が10%であるオンラインのくじを10回引いて1回でも当たる確率は、余事象を使う。10回引いてくじがすべて外れる確率は0.9の10乗。1からこれを引くと、約65%となる。意外に低いのだ。
同じように、当選確率が1%であるオンラインのくじを100回引いて1回でも当たる確率は、すべて外れる確率が0.99の100乗。1からこれを引くと約63%となる。驚くほど低い。
別の事象の提示もあった。ある先生の家には子どもが2人いる。少なくとも1人は女の子である。もう一人は男の子である確率はどうなるか。
きょうだいの男と女の組み合わせは4通りある。少なくとも1人が男であるという条件に当てはまるのは3通り。その中での男と女の組み合わせは2通りあるので、答えは3分の2となる。
だが、直感的に答えると「そのうち1人が女の子」だろうと男の子だろうと関係ないと考えてしまい、2分の1と答えてしまいがちなのである。
確率をめぐる難問~モンティ・ホール問題
もっと難しい問題もある。アメリカのあるクイズ番組に勝ち上がった解答者には、最後に3つのドアが提示される。3つのドアの裏には、いずれか1つに新車(当たり)があり、残りのドア2つにヤギ(はずれ)が隠されている。
ここで勝者(解答者)は3つのうち1つを選ぶ。
すると司会者(モンティ・ホール)は、残りの2つのうち1つのドアを開けてみせる。するとヤギがいる。開いていないドアは残りの2つだ。
ここで司会者は解答者に「最初に選んだドアを変えてもよい」と言う。解答者は自分が選んだドアに固執するべきか、それとも最初の選択を変更するべきか?
これを「システム1(直感)」で答えると、「最初の選択を変更しない(変更しても当選確率が変わるわけではない。それならば、変更してはずれだと悔しいから最初の選択のままにする)」になる。実際にこの番組では、8割の人が最初の選択を変更していない。
ところが、「ベイズ推論」という考え方を用いてこれを計算すると、選択を変えると当選確率は2倍になるのである。
これは番組でも説明されたが、わたしには理解できなかった。たぶん、「ベイズの定理」を勉強しないといけないのだろう。
直感のエラーを防ぐために
このように人の直感とは誤りがとても多いものである。こうしたバイアスを矯正して意思決定をするためにはどうしたらよいのだろうか。それには3つの方法がある。
このうち、技法主義がわたしには難しい。何をどう説明されても、数字が苦手なわたしは、技法主義の道具・ツールが理解できないために「どうしてそうなるんだろう……」としか思えなかった。
ただひとつわかったのは、「もう少し数字に強くならないと、騙されやすいままの人生だ」ということである。
算数や数学ではなく、「数字」に強く(いや、少なくとも人並みに)なるにはどうしたらよいか。「数字入門」といった本があればよいのだが聞いたことがない。
そこで、まず『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』『食い逃げされてもバイトは雇うな(上下巻)』を読んでみた。この感想はすでに書いているのでリンクを貼っておく。また読み直してみよう。新しく何かが発見できるに違いない。