AI翻訳講座に惹かれているならば

 翻訳者たちが、1か月ほど前に登場したAI翻訳講座について「情報商材だから(値段分の価値があるかどうか)注意しろ」と呼びかけている。いろんな人がいろんな媒体、SNS等で述べているが、趣旨は同じ。

AIを使って翻訳するためには
●英語力が必須である
●AI翻訳の特徴を知る必要がある

ということだ。
 にもかかわらず、当該講座ではTOEICスコアが初級者レベルでもできると述べている。えっ、TOEIC300点でもできるのか。ならば600点の自分なら楽勝ではないか……などと感じたら、まんまと情報商材屋の思うつぼにハマったことになる。
 もし、ほんのちょっとでもそう思ったならば、真っ先に「本を買う」ことをお勧めしたい。
 このニーズにぴったり合う本がある。立教大学教授の山田優さん、この分野の第一人者が著した『ChatGPT 翻訳術 新AI時代の超英語スキルブック』がそれだ。2023年9月8日発行、つまりまさに「できたてほやほや、最新のAI情報が詰まった」翻訳術の書なのである。

 わたし自身はこの本を買っていない。ChatGPTは「遊び」で使ってはいるが、自分がプロンプトを操れると思わないからである。もう少しChatGPTに慣れてきたら買うかもしれないが……。それでも、著者の山田優先生にはお会いしたこともあるし、同教授が第一線のAI翻訳研究家であることは知っているため、本書を勧めることはできる。言うまでもないが、書籍というのは「誰が書いたか」がとても重要なのだ。
 では、本書の紹介文を引用しよう。 

AI翻訳研究の第一人者が教える! ChatGPTの翻訳活用術!

ChatGPTなどの生成AIの登場によって、英語を使ったコミュニケーションに、新たな時代の扉が開きました。本書では、AIによる翻訳技術を上手く使いこなし、外国語の壁を乗り越える「これからの時代に求められる」英語スキルを身につけられます。英語のメール、プレゼン、広告、レポート、etc...、あらゆる英語の発信に対応するためのノウハウが満載です。

本書のamazon紹介文より

 ChatGPTで翻訳もできるし、「英語スキル」も身につく。
 当該情報商材講座の謳い文句と同じではないか。しかも本書は、この分野で第一人者の大学教授が著した本である。価格は2090円。
 中学校・高等学校の現役教員であり、大学でも教鞭を執っているEarly Birdさんは本書の書影をアップして「良書」としている。

 英語教育界からもうひとり、『英文解体新書』など多くの著書を持つMr. BIGもこの本に肯定的な投稿をしている。

 わたしの言いたいことはひとつ。「AI翻訳をかじってみたいなら、高額講座ではなく2090円の良書で学んではどうか」である。
 どんな勉強でも同じだが、学びたいと思ったら次のステップがよいと思う。

1. 信用できる人が書いた書籍を探す。
2. 価格をたしかめ(プレミア等ついていないかどうか)購入する。
3. 本のとおりに「実践」してみる。この本ならばプロンプトテンプレートがついているので、それを使ってChatGPTに指示を出し、実際に使ってみること。15分でよいので、まず3週間「毎日」やってみる。これで自分に合うかどうかがわかるはず。
4. 本では飽き足らずにステップアップしたくなったら、「定評ある翻訳学校」が提供する、数万円程度の「単発」講座を探す。
5. それでもまだお金と時間を注ぎ込む価値があると思ったら、そのときに数十万円払うコースの受講を考える。

 上記4と5についてだが、おそらく既存の定評ある翻訳スクールが、いま必死にAI翻訳コースを制作しているはずだ。あと半年もすれば、間違いなく複数のコースができてくる。そうすれば、「単発」または「体験」講座も間違いなく宣伝されてくるはずである。
 本書を読み終え、実践しても、もっともっとAI翻訳の道に進みたいと思ったならば、そうした講座を受けたらよいと思う。
 本書には「いま一番新しい」「信用に足る」情報が提供されていることは間違いない。講座にお金を使う前に本書を2090円で書い、実践することを強く勧める。

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