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DNA鑑定、するしない

 本日は「すやすや水曜日」です。いつもより早く寝る & 寝る30分前には画面から離れるのを推奨しています。

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 せっかく出産したので、DNA鑑定っていうのをしてみません?と旦那さんに提案する。
 
「経験として、いっぺんやってみてもいいと思うの」
 
 旦那さんは笑って取り合わない。
 
「お金払って?お金払ってわかるのが『僕と君の子どもや~』って??意味ないやろ。ベビの耳の形、完全にウチの遺伝やし。最悪、血ィ繋がってなくてもいいわ」
 
 DNA鑑定は必要ない、と却下される。それに、君の子どもなのは確実やろ?
 
 そうかなあ、と思う。すごく低い確率だけど、ありえないとは言い切れない。たとえば仮に旦那さんが不倫をしていて、不倫相手がわたしと同じ時期に、同じ産院で出産し、かつ助産師さんたちがふたりの子どもを取り違えていたら?
 
 そうしたら赤ちゃんは、旦那さんの血は継いでいるものの、わたしの子どもではなくなる。仮にそうだったら、いまと同じ気持ちでいられるだろうか。そんなことを考える。たぶん無理だろう。「なんでわたしが育てなあかんねん!」と関西弁でキレるかもしれない。
 
 血のつながりというのは、それくらいには大きい。自分の子かそうでないかで、気持ちがいくぶん変わってくるのは仕方ない。
 
 これが「自分の憧れの女性と、旦那さんの子ども」だったらどうだろう。ひょっとしたら「わ~、あの人の子どもだ」と目をキラキラさせて、楽しく子育てしていたかもしれない。血のつながりは、その程度には脆い。
 
 結局、DNA鑑定はしないことになった。今やらないなら、きっと一生やらないだろう。聞くところによるとあれは、頼む業者によってずいぶんクオリティが違うらしい。
 
 本来この手の鑑定結果は、0.01%か、99.99%かの二択しかない。ただ、安いところに頼むと「68.4%の確率で親子です!」みたいな、微妙な数字を出してくるという。そんな結果が出て困惑するくらいなら、始めからやらないほうがいい。
 
 当の赤ちゃんは、DNAなんてどうでもよさそうな顔で寝ている。近くで物音がすると、反応してモゾモゾと動く。耳の形は、旦那さんや義理の母に似ている。顔は自分に似ている。旦那さんと知り合う前に処女懐妊とかしてない限り、ふたりの子どもだろう。
 
 「男性は自分の血筋にこだわる」とよく言われるが、旦那さんにそこまでのこだわりは見えない。最初から「子どもは欲しいけど、養子でもいい」と言っていた。だから「最悪、血がつながっていなくてもいい」は、半分くらい本音だろう。
 
 むしろ自分のほうが「育てるなら『自分の』子がいい」と、どこかで思っている。もし選択肢が「他人の子を育てる」「自分の子を育てる」「どちらも育てない」なら、後者のふたつをとりあえず選ぶ。
 
 「『憧れの女性の子どもだったらいいかも』って、さっき書いてたじゃん」と言われそうだけど、自分がこのときの「女性」として思い浮かべたのは、むかし付き合っていた彼女だった。旦那さんと彼女がお付き合いすることはまずないと思う。だからこれは、荒唐無稽な想像の域を出ない。
 
 ここまで書いて、そういえば自分は、両親のどちらにも似ていないと言われて育ったな……と思う。母が妊娠したとき、父は「妊娠するようなことはしていない。絶対に違う」と言い張ったらしいが、数か月後にめでたく娘が産まれた。
 
 この話を聞いて、自分は母に「わたし本当にお父さんの子?他言しないから教えて」と迫ったが、父以外におらんと言われておしまいだった。詳しいことは書かないが、父親の避妊の仕方に問題があったらしい。しょうがないね。無事、生まれてよかったね。
 
 自分もきっと、この両親の子どもだろう。確かな証拠はないけれど、疑う理由も特にない。その程度の信頼でここまで来たし、いまさら自分と両親のDNAを調べてもらう気にもならない。一生しない鑑定の話。

本を買ったり、勉強したりするのに使っています。最近、買ったのはフーコー『言葉と物』(仏語版)。