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ネコの言葉のお菓子な話
北海道にいる知人が『白い恋人』を送ってくれた。パッケージにはフランス語が書き連ねてある。「Shiroi Koibito est né du mariage de la langue de chat et du chocolat...」白い恋人は、猫の言葉とチョコレートのマリアージュから生まれました……。
ん?猫の言葉?
書き間違いかな、と思った。それから検索をかけてみて、違っていたのは自分のほうだと気づく。「猫の言葉」と訳した部分は、フランス語で「ラ・ラング・ドゥ・シャ」、つまりラングドシャのことだった。
「ラング」には「舌」と「言葉」の二つの意味があって、お菓子のラングドシャは猫の舌のように細長い。それでその名がついた。
そういうわけで正解は「『白い恋人』は、ラングドシャとチョコレートのマリアージュ(結婚)から生まれました」。納得しながらさっそくお茶を淹れた。個人的にはホワイトチョコが中に入ってるタイプが好き。
そういえば2月はバレンタインシーズンだ。小中学校のころ(高校もかな)2月14日には男の子たちがなんとなくそわそわしていた。表向きは「学校に余計なもの持ってきたら駄目ですよ」と言う先生たちも、口でそう言うだけで見逃していた。
教室にうっすら漂う甘い香り。「これ○○ちゃんに渡して」と運び屋にされる男子もいれば、「二個もらった」と申告してくる男子もいた。もらえる人はたくさん持ち帰り、貰えない人は一切もらえない、残酷なイベント。
仲の良かった男の子たちが「貰えたと思ったら『○○ちゃんに渡して来て』って言われた。お・れ・に・わ・た・せ・よ!」とキレたり、「小さいのでいいから欲しい」と言っていたり。「そんなに気にするようなことかなあ」と当時は思っていたけど、立場が逆なら自分も気になって仕方なかったかもしれない。
そう考えると、2月14日が毎年めぐってくる男の子たちが少し気の毒だ。穂村弘がエッセイの中で「この日が日曜日だとホッとする。一日中そわそわして、結局一個ももらえずに帰ってくる、あの思いをしなくて済む」とかつて書いていた。なんかわかる。
告白するのにいい機会なのは確かだけど、ひとつも貰えない=モテない、とはちょっと違うんじゃないかな……。そこまで落ち込む必要はないと思う。あと学生の期間が終わると、バレンタインの日付すら忘れる。
ところでチョコレートは、一度溶かして固めるとまずくなる。だから自分が作るときは生クリームを途中で入れる。生クリーム入りのチョコを生チョコと言う。たまにあれを「ナマのチョコレート」と理解している人がいるので書いてみた。
作るならやっぱり生チョコだよ。友達からもらったものの中でも、おいしい子のはそうだった。自分は両親に向けて作ったことしかないけど、好きな人に手づくりを渡すという愛らしい経験、一回してみたかったな。小学校とか中学校とかの初々しい時期に。
ちなみにレシピはこちらの本に頼りました。はらべこグリズリーの『世界一美味しい煮卵の作り方』。麺もデザートもおかずもご飯モノも網羅した、おいしくて簡単な料理が全ページに。お世話になりました。なってます。
市販のお菓子は十分おいしいし『白い恋人』も完成された甘さで好きだけど、手づくりってやっぱり別格だよねえ。昔はそれがわからなかった。「ローソンの生チョコも『メルティキス』もおいしいじゃん、なんでわざわざ作ったのをもらいたいんだろう、買えばいいのに」と思っていた。
年齢を経て丸くなったのか、それともようやく人の気持ちが少しはわかるようになったのか。
ラングドシャは猫の舌、手づくりはいいものだし、それはそれとしてホワイトチョコの『白い恋人』はおいしい。濃いめに淹れたアッサムとのマリアージュが似合う。
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