
顧客にささるサービスへの落とし込み方 ~ビジネスプロモーターシリーズ⑤~
■今回のテーマ
<教授>
今回も”提供すべき価値の設計”というテーマを扱います。
バリュープロポジションキャンバス(VPC)のProduct&Surviceにフォーカスを当てつつ、具体的なサービスへ落としこむ際の考え方に関して議論していきましょう。

※前回の内容
■フィットネスクラブの価値は?
<教授>
では、ターゲット顧客に提供する価値の本質、すなわちPain Reliverに関して考えてきた内容を議論しましょうか。
前回の議論では「本来の働く時間を十分に確保しながらも働く以外の時間に融通を利かせられる」という本質的な価値が挙がりましたが、他にはどうでしょうか?
<生徒A>
色々考えてみたんですが、「精神的な疲れの蓄積」というPainを解決するためには、仕事とは切り離した時間を取る、仕事を忘れられる環境に身を置く、といったことがあるかと思います。
<生徒B>
日々、社内外の多くの人と仕事でかかわっているからこそ、一人の時間を確保するというのもあり得るかも…。煩わしいコミュニケーションから解放される環境という視点かもしれないね。
<教授>
2人の考えを踏まえると「他人に気を遣わず自分の過ごしたい時間に集中できる環境」ということも、本質的な価値ということのようですね。

■手掛けるべき本質的な価値を絞り込む
<生徒A>
「Painはコントロールできないが、Pain Relieverはコントロールできる」ということでしたが、Pain Relieverを考えるといろいろ案が出てきて、それらを網羅的に洗い出して対応していたらキリがないような気がします。
<生徒B>
企業のリソースや出来ることは限られている中で、Painを解決できるものを何でも、全てやる、というわけにはいかないよね。。。
<教授>
その通りです。
「Pain Relieverを全部取り込んだので、どんな競合よりも優れたサービスです!」という方がたまにいらっしゃいますが、その後のコスト面や作りこみまでの時間を考えると、現実的ではないケースの方が多いのが実際です。
<生徒A>
では、どう絞り込むべきなのでしょうか?
<教授>
良い質問ですね。絶対的に正しい絞り込みプロセスはありませんが、まずは”自社の強みが活きるか?”と”自社がやりたいことか?”の視点で始めて見るとよいでしょう。
<生徒B>
ここでようやく自社の事情を加味することになるんですね。
<教授>
一定程度収益化できている既存事業であれば何らかの強みを持っているはずですし、新規事業の場合でも他の既存事業の強みを活かす、スタートアップであれば創業メンバーの持つ強みを活かす、といった視点から検討することをお勧めします。
くれぐれもですが、
・Pain Relieverによって考え抜いた本質的な価値があって
・それを提供するにあたって自分たちの強みが活きるかを考える
の順番を忘れないでください。
逆にすると「本質的な価値」を自分たちに都合よく読み替えてしまう可能性があるので、特に注意しましょう。

<生徒A>
なるほど。。。
質問ですが、強みが活きない領域には手を出さないということでしょうか?
<教授>
そうとは限りません。強みが活きることは大事ですが、一方で自分たちが何としても解決したい・価値を提供をしたい、という想いも大事です。
ここでは深く触れませんが事業を考えるにあたって、
・この事業は何を目指すのか
・どんな価値観を大切にするのか
・組織としてどうあるべきなのか
・逆にやらない/手掛けないことは何なのか
などの大前提の整理をしておくことが重要です。
これらは最初のビジョニングのパートで納得いくまで整理をしておくことが必要です。大前提として、現時点で強みは無いが手掛けたい領域に進出する場合は、実現するための強みを獲得できるような成長ストーリーを作ったり、ビジネスモデルとしての強み設計を行うことで対応していけばよいのです。この詳細はまた別の機会に議論しましょう。

<生徒B>
まずこの段階では”強み”と”想い”の両面から、自分たちが提供すべき本質的な価値を絞り込んでいくということですね。
■具体的なビジネス案に落とし込む
<教授>
では、これまで考えてきたPain Releiverを基に具体的なサービスの中身に落とし込んでいきましょう。詳細な機能レベルでは無く、自分たちのサービス・ソリューションとして提案したい内容を挙げていくとよいでしょう。
まず、「本来の働く時間を十分に確保しながらも働く以外の時間に融通を利かせられる」という本質的な価値を具体的なサービスとして表すにはどんなことが考えられるでしょうか?
<生徒A>
既に手掛けているサービスはありますが、
・いつでも
・何時間でも使用できる
とことでしょうか。これは融通が効いていると言えると思います。
<生徒B>
あと、仕事の都合次第で場所や時間の制限がかかることを考えると、
・どこでも使用可能
・至る所に存在している
ということも融通が効くと思います。出張先でも使える場所がある、急に予定がキャンセルになった空き時間にオフィス近くでの場所で使用できるというイメージです。
<生徒A>
あとは、混んでる時間帯に行くと使いたいマシンが全く使えないということもありそうなので、混雑状況が確認できるとそれに合わせて自分の時間調整ができるので、そんな機能もあるとよいかもしれません。
<教授>
良いですね。
では、「他人に気を遣わず自分の過ごしたい時間に集中できる環境」という視点ではどうでしょうか?
<生徒A>
普通ジムの中では基本的に一人だと思いますが、より他人との接点を減らすという意味では、受付での会話が無くてもいいかもしれないですね。会員証を見せて、鍵をもらって・・・、という一連の中でも受付の方と間での気遣いが発生してますし…。
<生徒B>
あと、ジムってたまに重いウェイトあげるために大声だして力を込める人がいるじゃないですか。私はビックリしちゃって、なんか怖いな…って思っちゃたりします。。。
それ以来、必ず音楽聞いたり動画見ながらやるようにしてます。
<生徒A>
そうなると動画や音楽を気軽に使えるということも大事そうなので、Wi-fiといった通信環境も必要ですね。あと今の話に関わるところでは、使い方の最低限のルール設定と浸透は必要そうですね。ジム利用に慣れていない方とかは最初に気後れしてしまうとかもありそうですし。。。

<教授>
では現時点での一旦2人の議論をまとめると、
【提供する本質的な価値】
・本来の働く時間を十分に確保しながら働く以外の時間の融通が利く
・他人に気を遣わず自分の過ごしたい時間に集中できる
【コアとなる具体的なサービス提案】
・24時間営業
・利用時間の制限なし
・どこでも使える(職場や出張先、家の近くの至る所に存在)
・混雑状況がわかる
・受付/入館手続き不要
・通信環境が整備されている
・初心者にも気遣いのあるルール
というところでしょうか。もし2人がこれから新しく独立して始めるとすると、最初から至る所に作ることはコスト面で厳しい、もしくは自社の強みには無いはずなので、具体的な展開ストーリー時にエリア等を絞り込みながら考えていくことになりそうでうすね。
<生徒A>
フィットネスクラブのビジネスを考えようとすると、個人に沿った指導とかも出てきそうな気がするんですが、今回は全くそんな話には及ばなかったですね。
<教授>
そうですね。ターゲット顧客やそのJob、その上で提供すべき本質的な価値は何か?という流れで考えていくと、新しい可能性に気づくことができます。もちろん個人指導も提供すべき価値として選択され得るものですが、顧客のJob基点で出てきているかどうかが重要なんですね。
個人指導を対面でやるとなると、恐らくいつでも・どこでもの価値が提案することが難しくなるでしょう。
<生徒B>
提供する本質的な価値を改めて見てみると、競合は既存のフィットネスクラブやジムではない気がしてきました。私だったらエステと比較してどっちに行こうかな?と改めて考えてしまう気がします。
<教授>
Jobをベースに考えると意外な競争相手やサービスが見えてきます。
自分たちが提案しているサービスが何と比較されてしまうのか?を意識しながら継続的なブラッシュアップを行うことが必要です。
■ビジネスコンセプトの更なる発展に向けて
<教授>
さて、バリュープロポジションキャンバス(VPC)を活用したビジネスコンセプトの作り方の基本は、これまでのプロモーターシリーズ①~⑤で終了です。
<生徒A>
基本ということは、これとは別に”応用的な内容”もあるのでしょうか?
<教授>
そうですね、コンセプトの検討をより高度化させる技があります。
例えば、BtoBビジネスでの特有の使いこなし方やコンセプト段階での競争優位の分析の仕方、などですね。
これらに関してはまた改めて話をしていきましょう。
<生徒B>
コンセプトだけでは事業は進まないですよね?
ビジネスモデルや売り込み方の話も重要かと思います。
<教授>
はい、その内容は毎回これまで最初に見てもらっている一連のプロセスに入っています。これらも継続的に議論をしていきましょう。
■今回のサマリ
① 本質的な価値は重要だが全て網羅的に出そうとする必要は無い
② 自社の強みが活きる、もしくは想いを込められるかが重要な視点
③ 絞り込まれた本質的な価値から具体のサービス提案を設計する
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