”顧客課題”とは何か?(ソリューションビジネスを考える②)
メルセネール・大道寺です。
前回はソリューションビジネスの定義と領域設定に関して書きましたが、今回はソリューションビジネスを考え始めるにあたって、どんな視点が必要なのか?という点にフォーカスを当ててみたいと思います。複数回にわたってまとめていく想定です。
ソリューションビジネス×顧客課題
”顧客課題”と”解決策”って言うけど・・・
前回の定義のところで、
『ソリューションビジネス』=『顧客の”課題”を”解決”するビジネス』
という話をしました。
改めてこの定義自体は多くの方になじみがあるのかなと思います。
ところで「顧客の課題」と「解決策」って何なのかって整理できてますか?
「ソリューションビジネスをやる。だから顧客の課題と解決策を考えろ!」
「顧客の課題を聞いて、理解するんだ!」
と号令・指示が飛びますが、そんなこと言われても、けっこう難しくないですか?
そもそも「顧客課題」とは何をどのレベルで把握できていればいいのか曖昧ですよね。顧客課題をしっかり定義できている、共通言語として何を押さえるべきかを分かっている組織とそうでない組織では、ソリューションビジネス開発の巧拙に大きな差が出てきます。
特にマズいな・・・と思うのは、
「課題は何でしょうか?教えてください。」
「どんなお悩みをお持ちですか?」
というアプローチを是としている組織・状態です。逆に言えばテコ入れ余地もたくさんあるということなのですが、この状態に問題意識を持っていない組織は意外に多いという実感です。
顧客課題の構成要素
では、「顧客課題」を理解するにあたって、具体的に何を明らかにするとよいのでしょうか?
私はコンサルティングやメンタリング、研修講師を務める中で、以下の5つを明らかにすることをおススメしています。
顧客は誰か?
顧客の理想の状態は?
理想の状態が実現できない悩みは?
なぜその悩みは発生し続けるのか?原因は?
1~4の「顧客+悩み」のセットはどのくらい存在するのか?
1. 顧客は誰か?
こんなこと言われれば当たり前なのですが、ここの設定すべき粒度に関してはしっかり定義されていない組織が多い印象です。
シンプルに言えば「顔が思い浮かぶレベル」まで設定するとよいです。〇〇業界、△△株式会社というレベルではダメです。2~5の掘り下げができなくなります。
よく例で挙げさせて頂くのですが、「顧客=JR」さんという設定で悩みを掘り下げられると思いますか?
私見ですが「都心の巨大ターミナル駅の駅長さん」と「地方の無人駅を複数同時管理する駅長さん」のお悩みは大きく違うと考えています。いわゆる”ペルソナ”という粒度の詳細・微細設計はやり過ぎだと思いつつ、一方で顔が思い浮かべられることは重要です。
2. 顧客の理想の状態は?
すぐに課題・悩みをヒアリングしようとする方は多いですし、その気持ちは分かりますが、一旦立ち止まりましょう。
本当に解決すべきお悩みは、”理想の状態”に至ることを阻害しているお悩みです。「あなたのお悩み何ですか?」と聞いてしまうと、いろいろ出てきてしまいます。本当に切実なお悩みから、ちょっとした不満・グチまでひとまとめで並んでしまいます。ソリューションビジネスを構想するには、本当に解決すべき悩みを特定することが重要ですが、そのためには目指すべきゴールである”理想の状態”の共通認識を持つところから始めましょう。
とは言えここは比較的難しいテーマでもあるので、改めて詳細に取り上げる予定です。
3. 理想の状態が実現できない悩みは?
ここでようやく”具体な悩み”を確認します。
”悩み”=””理想の状態” vs "現状"のGAP
です。理想の状態は上記の2で確認できているはずなので、押さえるべきは”現状”です。
真面目に、一生懸命に悩みを解決したいと思っている人ほど、現状でも何か取り組みをしているはずです。その点も含めて現状をしっかり確認しましょう。”理想の状態”と”現状”が分かれば、「お悩みなんですか?」という質問を投げることはなくなり、「”理想の状態”と”現状”のGAPから想定するに〇〇なお悩みがあるのではないでしょうか?」という対話が可能になります。
顧客側からしたら、
「お悩みなんですか?」
「”理想の状態”と”現状”のGAPから想定するに〇〇なお悩みがあるのではないでしょうか?」
のどちらに信頼を置くでしょうか?
4. なぜその悩みは発生し続けるのか?原因は?
”お悩み”は聞き方・回答次第では表層的な内容に留まりがちです。
ここで踏み込んで掘り下げていく必要があります。
”なぜ?”は当然掘り下げる視点なのですが、常になぜを問うだけでいいのかというと、そうではありません。”なぜ?”は非常に大事ですが、同時に”それは何?”、”他には無いの?”という視点も重要です。言葉尻で出てきたお悩みを、十分に理解せず「そうなんですねー」というのはもっての他です。発言の内容・趣旨がよくわからない際は、「それってどういうことですか?具体的には?」など理解するための問いは重要です。
掘り下げの問いかけはこちらを参照
5. 1~4の「顧客+悩み」のセットはどのくらい存在するのか?
ここまで1~4はN=1の思想でもありますが、結局はビジネスですので、市場の規模感は大事です。この顧客+課題のセットがどれくらいあるのかの当たり付けは必須です。特に新規事業や新規ソリューション開発部門であれば、内部に認めてもらう必要があります。市場の大きさ・量感が最大の説得材料になります。
ここの測定の仕方はソリューションビジネス開発上でも大事なテーマですので、別途解説しようと思っています。
とはいえまずは信頼感の醸成を
上記の1~5を押さえることは重要で、それほど違和感・異論を頂くことは無いのですが、「いざ行動してみると、お客さんに話してもらえない・・・」という顧客理解上のお悩みを頂きます。
これは”信頼感の醸成”ができていないことに起因します。
顧客の立場に立って考えてみてください。これまでモノ売り、もしくは更新のタイミングでしか足を運んでこなかった人に対して、なぜ自分の切実な悩みを詳らかにするのでしょうか?
本当に自分のことを理解してくれ、何とかしてくれようとしてくれる人・企業には本心を打ち明けたいと思うのは当然ではないでしょうか?
うまく1~5の特定ができない際は、前提となる信頼感の醸成ができていないことから疑ってみてください。信頼感を醸成するにも愚直なアプローチとコツはありますので、また別の機会にご紹介したいと思います。
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