顧客を理解するフレームワーク(バリュープロポジションキャンバス)~ビジネスプロモーターシリーズ①~
■今回のテーマ
<教授>
今回はビジネスコンセプトのベースとなる”ターゲット顧客の探究”というテーマを扱います。
■お客さんに売り込む
<教授>
さて、いきなりですがAくんが“ドリルメーカーの営業マン”だとしましょう。
販売活動のテコ入れということで、週末に大型ホームセンターの店頭に立ち、自社の各種製品を売り込むことになりました。
土曜の昼下がりに店頭に立っていると1人のお客さんがやってきて、様々なドリルを物色しています。
営業マンのAくんならどうしますか?
<生徒A>
ドリルなんて買ったことないので全然詳しくないですけど…
そうですね、「何かお探しですか?」という切り出しから入って、自社ドリルの売り込みに繋げますね。
<教授>
どんな感じになるのでしょうか?
じゃあBさんはもし自分がお客さんだったと想定して、顧客の役をやってもらえますか?
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A(営業マン)
:何かお探しですか?
B(顧客)
:ええ、ちょっと部屋に穴を空けたくてドリルを買おうかなと思ってまして…
A
:なるほど、こちらのドリルなんかはいかがでしょう?刃こぼれをしない素材を使ってまして、素早くかつ硬いモノでも穴があけられます。
B
:うーん、そんなにハイスペックなドリルはいらないですかね。。。
A
:でしたら、一段階回転数が落ちるのですが、
小さいモーターを使ったこちらのバージョンはいかがでしょうか?
B
:そうですね。。。
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<教授>
はい、そこまでにしましょう。
Bさん、買いたくなりましたか?
<生徒B>
いえ、なりませんでした。
なんか押し売り感が強いというか。。。
<教授>
なぜ押し売り感を感じてしまったのでしょうか?
<生徒B>
実際にあった私の話を想定しながら顧客を演じてみました。
最近お気に入りの掛け時計を買ったので、それを吊り下げるために壁に穴を空けて、留め具をかけようかなと考えていて。。。
だから、刃こぼれしないとか、素早く削れるとか、そんな重要じゃないかな…って思いながら聞いてました。
<生徒A>
こっちはそんな前提は知らないですから、
ドリルの良い点を前面に押し出して売り込めばいいと思ってました。
ただ言われてみると、20代の女性が高機能なドリルを求めてホームセンターに来るとは考えにくいですね。。。
■ドリルを売るには…
<教授>
ではAくんに質問です。
Bさんは『ドリル』が欲しかったのでしょうか?
<生徒A>
そうですね、ドリルの売り場に来てるのだから、ドリルが欲しいんじゃないですかね。
<教授>
Bさんはどう思いますか?
<生徒B>
そうですね、お気に入りの時計を部屋に掛けられればよいので、もしかしたらドリルは必ずしもいらないかも…ですね。
時計の留め具が壁にかかれば何でもよい気がします。
<教授>
留め具を壁にかけるための手段の1つが、
壁に穴を空けるということかもしれませんね。
ただ、壁に穴を空けるための手段を持ち合わせていなくて、ドリルを使えば穴を空けられるかも…という感じでしょうか。
<生徒A>
じゃあ、この人はドリルが欲しいのではなく、
“穴を空けたい”ということなのでしょうか?
<教授>
マーケティングの用語に“ドリルを売るなら穴を売れ”という有名な言葉があります。
顧客はドリル自体が欲しいのではなく、穴を空ける必要があり、そのための手段としてドリルを求めているのだ、ということです。
<生徒B>
なるほど、顧客には達成したい目的、ありたい状態ようなものがあって、そこに資するコトを提案しないとダメということですね…。
■バリュープロポジションキャンバスの活用
<教授>
そう、
・顧客が求めているものを理解した上で
・その欲求を満たす/解決する価値を提供する
これがビジネスの基本です。
<生徒A>
でも、日本企業あるあるかもしれませんが、「ウチのこの技術・テクノロジーがすごいんです」とか、「業界最大の保守体制です」という営業とか売り文句ってよくありますよね。
<生徒B>
それがまさしく、先ほどのAくんの売り方だよね。
<教授>
自社の強みを活用することは重要です。
が、それ以上に、顧客基点で提供すべき価値を検討して、そこにうまく自社の強みをはめ込んでいくという考え方が大事なんですね。
<生徒A>
なるほど…。
仰ることははなんとなく分かったんですが、それが難しいから事業者は困ってるわけですよね。
どうやってビジネス上で検討するとよいのでしょうか?
<教授>
検討するための有効なフレームワークが存在します。
それがバリュープロポジションキャンバス(VPC)です。
<教授>
まずこのツールの説明をしますね。
大きく2つに分けると
・右側がCustomer Segment:顧客を理解するための視点
・左側がValue Proposition:提供すべき価値設計の視点
です。
まず右側のCustomer Segmentからです。
・Customer Jobs:顧客の成すべきこと
・Gain:顧客にとってうれしいこと
・Pain:顧客にとっての悩み/辛いこと
続いて左側ですが
・Gain Creator:Gainを生み出す要素/仕掛け
・Pain Reliever:Painを取り除く/解消する要素/仕掛け
・Product and Service:要素を組み合わせてることによって生まれる製品やサービス
です。
<生徒B>
各項目のおおまかな内容は分かりましたが、
これはどこから考えていけばよいのでしょうか?
<教授>
人間の感覚的には左上から手を付けたくなりますが、基本的には右から左へ流れていくように考えることをお勧めします。
これは顧客基点で考えてから、提供すべき価値を設計することを大事にしたいからです。
このツール自体は非常に優れているのですが、
更に有効に活用するために、いくつかポイントがあります。
次回はこのVPCというフレームワークを使いこなすための、重要な視点や考え方のポイントに関して説明していきますね。
次回までの宿題として、
「24時間型フィットネスクラブ」をVPCを使って分析してみてください。
フレームワークは
・まず使ってみる
・その後にレビューしてもらう
・自分なりの解釈論を加えていく
この繰り返しで習熟していきます。
次に行く前に、自分の手と頭を使ってチャレンジしてみてください!
■今回のサマリ
① 顧客には達成したい目的やありたい状態がある
② その求めていることを理解した上で提案をすることが重要
③ VPCというフレームワークを使うことで”顧客の求めていること”と”提供すべき価値”を繋げて考えられる
④ 提供する価値は自身が持つ強みや特徴からではなく、顧客基点で考えることでビジネス機会が広がる
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