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誰ひとり迷わせない。 加盟店とお客さま、双方の視点から導くメルペイ体験デザイン。

こんにちは。メルペイプロダクトデザイナーのpeachです。

突然ですが、皆さんはお店のレジ周りや入り口にある、こんなものを見たことがありますか?

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こちらは「アクセプタンスマーク」と呼ばれ、お客さまの決済をなめらかにする手助けをするものです。

もし、お店に何の情報もないと、お客さまは「このお店では、メルペイは使えるのかな?」と迷ってしまいます。そういった疑問や不安を解消するため、なるべく多くの加盟店さまにアクセプタンスマークを始めとしたメルペイ関連のアイテムを置いてもらわねばなりません。

そのためには、加盟店さまの店内に設置してもよいと思えるクオリティのアイテムをお届けする必要があります。

メルペイでは、お客さまの決済体験を楽しくなめらかにするため、画面UIだけではなくリアルな体験も一気通貫して、プロダクトデザイナーが設計しています。

今回の記事では、設置してくださる加盟店さまの視点、決済されるお客さまの体験、どちらも欠かさずに考慮して、アクセプタンスマークをはじめとするスタートキットのデザインをリニューアルした話をご紹介します。

スタートキットとは?

一口にスタートキットと言っても、実際にどんなものかすべて見たことがある方は少ないのではないでしょうか? 
スタートキットとは、メルペイの使い方を分かりやすくお伝えし、メルペイ決済をサポートするために、最初に加盟店さまに送付するセットのことです。中にはこんな物が入っています。

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(1) メルペイ代表取締役社長である青柳直樹からのメッセージ&スタートキット説明書 
スタートキットをあけて最初に目に入るものです。弊社代表取締役からの想いをこめたメッセージカードと 、梱包された中身の説明書です。

(2) スタートガイド
決済に関わるすべてのツールの使い方が網羅されているスタートガイドです。保管して読み返していただくことを想定し、作成しています。

(3) 店頭用クイックガイド
決済時の利用方法がシンプルに記載されたクイックガイドです。レジ前等で加盟店さま、お客さまどちらにも見ていただけるよう、両面にそれぞれに対しての説明が記載されています。

(4) QRコードシール
QR台紙に貼るシールです。ステッカータイプ・スタンドタイプ共にご利用いただけます。

(5) QR台紙(ステッカータイプ)
机やレジ周りに貼ってご利用いただくタイプのQR台紙です。

(6) QR台紙(スタンドタイプ)
レジ前等に立ててご利用いただくタイプのQR台紙です。

(7) 両面ステッカー
店頭入り口のドア、レジ周り、タクシーの窓などに、幅広くご利用いただけるステッカーです。これがいわゆる「アクセプタンスマーク」と言われるものです。

(8) 三角POP(スタンドタイプ)
メルペイが利用可能なことをお知らせする、立てて利用するPOPです。

(9) スイングPOP
 商品棚等に貼り付けるタイプのPOPです。

(10) ポスター小・大
様々な場所に掲出するポスターは、複数のサイズを用意しました。

リニューアルのきっかけ

スタートキットは、2019年の2月に初めて作成されました。実際に使用していただく中で、いくつかの課題が見えてきました。

世の中の認知の変化に対し、変わらないメルペイスタートキット
キャッシュレス決済ができる場所が増えるにつれ、少しずつ世の中における認知のされ方が変わってきました。しかし、メルペイはローンチしてからずっと同じ内容のスタートキットをお届けし続けているので、情報の過不足が生じてきました。

キャッシュレス事業者の増加と導入による場所不足
キャッシュレス事業者の増加により、お店に置く・貼るアイテムがどんどん増えています。実際の現場では場所に余裕がなく、当初のアイテムでは置くことが不便に感じられているということがわかりました。

メルペイらしさで見分けられないこと
さらに、各キャッシュレス事業者アイテムが増えたことで、ぱっと見てどこのものなのか分からなくなっている、という課題がありました。アプリと他の印刷物のメッセージやトンマナを意識し、よりメルペイらしいデザインを統一して展開する必要があると考えました。

課題解決のための3つの取組み

上記でお伝えした課題を解決するため、まずは3つのことに取り組みました。

1. チームを作る
2. 加盟店さまの課題や要望を吸い上げる
3. フィールドリサーチ

では、それぞれの詳細をご紹介します。


1. チームを作る

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担当デザイナーの私1人では見えない部分があり、そこを補う別の視点を持ったデザイナーを集めることで、クオリティを上げられると考えました。

私は、お客さま向けの決済機能や決済促進を主な業務としているのですが、加盟店さま向けのサービスに携わった経験が薄く、加盟店さまの課題と触れることがほとんどありませんでした。

そこで、お客さま向けサービス担当2名、加盟店さま向けのサービス担当2名の合計4名で協業してリニューアルすることで、お客さま、加盟店さま、どちらの視点も大切にできるスタートキットを目指しました。

2. 加盟店さまの課題やご要望を吸い上げる

メルペイでは、加盟店さまが感じている課題やご要望を、セールスチームが継続してお伺いしています。これまで運用してきた中で、セールスチームに実際に寄せられた加盟店さまの課題やご要望を整理し、解決までどう落とし込むかを、チームでディスカッションしました。

よく使われていて課題があるものを優先的に改善し、あまり使われていないものはミニマムな対応を行うよう取捨選択をすることで、コストを抑えた上で効果的なリニューアルをすることができました。


3.フィールドリサーチ

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頭の中にあるイメージやテキストにした課題だけでは、実際に手にとっていただくものを作るには足りないと考え、チームに分かれ様々なお店のレジ周りを観察させていただきました。

飲食店やスーパー、コンビニやドラッグストアなど、決済されるシーンが違えば、必要とされるものや大きさも変わってきます。時にはレジの方にお話を伺って、どんなものがあれば便利か、どんなものは使われていないかなどを、聞かせていただきました。

どのように解決したのか? 

ここまでの取り組みにより、大きくわけて3つの課題があることが整理できました。そこで、それぞれに対し解決方法を考えていきました。

1. 世の中の認知の変化に対応できていない

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グッズが多すぎてどれがどれだかわからない。
名前もなるべく見たまま・使い方のまま分かりやすい名称に変更し、フルカラーでぱっと判断できる。

2.キャッシュレス事業者の増加と導入による場所不足

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沢山の事業者のステッカーを貼る必要があるシーンで、スペースや形の問題で貼ることができない。
加盟店固有のボード、大きな扉、タクシーの窓など、事業者ステッカーが並んだ隙間に、大小様々なパターンで貼ることができる。


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レジ前に置くには高さがあり、大きくて安定し辛い、耐久性の低い素材なので、汚くなってしまう。
他決済事業者と並べても違和感のない高さに揃え、安定する形。濡れや汚れに強いPET素材に変更。

3.メルペイらしさで見分けてもらえていない

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✗どの決済サービスが使えるかお客さまに伝わってない。
メルカリの指定フォントやイラストのトンマナを統一して「メルペイらしいデザイン」にこだわることで、見分けやすくする。気軽に貼れるよう、複数サイズのポスターを用意する。

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沢山スタートキットが来た時にどこのものか分からない。保管した時に探しづらい。
ひと目でメルカリと分かるロゴを入れる。重ねても立て掛けてもメルペイのスタートキットだと分かるよう背面にも文字を入れた。


このようにして、メルペイのスタートキットは無事にリニューアルされました。ここに掲載したもの以外にも、すべてのアイテムをアップデートしています。店頭でメルペイを使ってくれるお客さまと、メルペイを導入してくれる加盟店さま。それぞれになめらかな決済を決済を体験してほしいから、双方の視点に立ち、決して迷わないためのデザインを心がけました。たくさんの人の生活の中でメルペイが少しでも役立てるとしたら、こんなに嬉しいことはありません。

新しいスタートキットはこれからメルペイに加盟していただくお店に徐々にお配りしていき、継続して改善していけるよう分析や、ご意見のヒアリングなども定期的に行なっていく予定です。



おわりに

最後に、横断チームでスタートキットのリニューアルに取り組んだことによる気づきをご紹介します。

1. 気付いたこと
1-1 煮詰まり状態になることがなく、有意義に時間を使える
1人で作成していると、煮詰まったりアイディアを貰うにも気を使うこともあります。しかし、デザイナーの頭が4つある状態で作業時間枠を確保して作業したので、事前に疑問や案をまとめておけば有意義にディスカッションでき、その他の時間は他の業務に集中できました。結果として、脳の負荷がかなり減ったように感じました。

2. 難しかったこと
2-1 様々な兼務をしているので、時間を合わせるのは各々苦労していた

3つから6つくらいのプロジェクトを常に兼務しているメンバーが集まって作っていたので、チーム作業タイムを確保するため、リニューアル期間中はオフィスを走り回っていた記憶があります。色んな方向から同時に「10分だけいいですか?」と言われて混乱していたことも多々ありました。

私の場合は、他チームにやっている事や必要な期間をあらかじめ共有し、兼務しているプロジェクトの作業内容をすべてカレンダーに入れたことで、うまく時間を切り分けて接してもらえるようになりました。走り回っていたことも今となっては楽しい記憶です。

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印刷知識の深いデザイナーに負荷がかかってしまった
私を含めたデザイナー4人中3人が、「印刷物は作成したことがあるが、校正やデータの作り方に詳しくない」という状態でした。

そのため、造詣の深いデザイナーが印刷会社さまからの質問に積極的に答え、データの作り方を教え、最終データの細かな修正を行ってくれました。とても頼もしかったのと同時に、その人の負荷が大きくなってしまった事が反省点です。直接的な解決策はありませんでしたが、全員が率先してできることを探してやったことで、助け合いたいという雰囲気が伝わり、チーム関係は良好なままプロジェクトを一区切りすることができました。

3. 良かったこと
3-1 領域の違う業務をしているデザイナーが集まることで、課題が見え視野を広く持てる
お客さま向けと加盟店さま向けのデザイナーが集まったことで、普段見えなかった加盟店さまの課題や、過去にあった店舗での出来事等を知ることができました。お互いの業務での考えを聞きながらデザインを進めていくことで、自然と視野が広がり、スタートキット以外の業務の相談も気軽にできるようになりました。

3-2 一番良かったことは、「楽しんで作り、日々学びがあったこと」

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集まって一つのものをデザインするという体験は、一番のチームビルディングになったように感じます。普段業務で関わりのないメンバーのデザインと考えを見ることができて刺激を受けましたし、ツールの使い方も各々違うので、作業しながら「それどうやって作ったの?」「便利な使い方があるよ」など、自然と会話しながら教え合うことで、学びになっていました。

尊敬するデザイナーに囲まれて、思いついたアイディアやデザインについて議論しながら、より良いスタートキットを目指して作る日々は、幸せな時間でした。

今後も、リアルな体験から画面UIまで総合してより良いものにしていくため、多角的な目線を持ったデザイナーたちと一緒に、新しい取り組みをしていきたいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

執筆・図版作成:peach
編集: crema / taiyo