パンを食べた
雨音が響く外を見ながら
制服に着替えた僕は
ちょっと湿気ったパンを食べた
君のおはようで目覚めて
ニュース番組を何となく見て
サクサクで香ばしいパンを食べた
一人で広い部屋の真ん中
重く感じるスーツを着て
黒焦げて苦いパンを食べた
家が怪物に壊されて
テーブルだけが残った家で
絶望に浸りながらパンを食べた
歩いても歩いても
もう僕しかいないことを知った
ちょっと湿気ったパンを食べた
歩くことも出来ずに
地面に身体を沈ませて
ひとくちだけパンを食べた
私が夜明けに街を歩いていたら
見覚えのある人が倒れていた
すぐ側には食べかけのパンがひとつ
力尽きた私はその場で倒れ
彼に身を寄せて髪を撫でて
食べかけのパンを食べた
二人を包み込んでいるのは
暖かく優しい小麦畑
どこまでも続く金色の楽園
長い年月が経った時
再び創られた世界のどこかで
僕はパンを食べた
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