徒然なる出張先のツインベッド
せっかくのツインベッドなのだから、幽霊でも良いから誰かきてくれないものか
出張でビジネスホテルを使う人は知っていると思いますが、シングルの部屋を予約しても、ホテルの都合でツインの部屋に換えてくれることがままあります
広いのはラッキーだと思うのは最初のころだけ
なんとなく隣のベッドに誰もいないのが淋しく思えてきてしまうものです
おはようございます
SNSでいろんな人とつながっている分、そういう淋しさを紛らわすこともでき、昨日はバンドのメンバーが女子飲みしているところにLINEでやりとりしながらスコッチをかっくらっていたわけですが
少し前までは、家族と仕事関係の人間としかコミュニケーションをほとんどとっていない時期があって、年に数回友達と飲みに行く程度
あとは近所のカラオケ居酒屋で常連さんと歌うくらいかな
僕はそういう方々とはそれ以外のコミュニケーションをとらないようにしていました
理由は”余計なことに巻き込まれるから”でした
これはいわば経験値
飲んで楽しい人たちが、他の場で楽しい人たちとは限らない
当たり前に生活があり、家庭があり、悩みがあり、ストレスがある人間です
欲もあれば、嫉みや妬みもあるでしょう
それに僕はうっかり深入りをしてしまう体質というか、相談を持ちかけられる星の下に生まれたというか
知らない土地でもよく人に道を尋ねられます
”いい人だと思われることは、良いことだとは限らない”
面倒見がいいというのは、それだけ利用もされやすいということがありますが、もっとも当人はそんなことはわかりきった上で、手を差し伸べているのですから
でも、だからと言って、その結果、望んだようにならなかったり、或いは変わっていく相手の欲求について行けなかったりで、ままならない時、うっかりするととばっちりを食らうこともあります
それはまだ良いほう
こちらが変に情を持ってしまったり、或いはその人以上に問題を自分で解決したいと前のめりになって足元をすくわれたりすると、そのコケっぷりは、笑えないくらい泣けてきます
そんなことをベッドの上で思い出したり、考えたりしているときに、そこに誰も寝ることのないベッドが横たわっているというのは、本当に罪なことです
幽霊でもいいから、誰か話し相手になってくれないかな
宿泊した部屋には独特の佇まいや空気というのがあって、つまりは”嫌な感じしかしない”っていう部屋に数回であったことがあります
その部屋は小さな花の絵が飾ってあったのですが、どうにもそれが少し左に曲がっている
僕は直したい気持ちを必死に堪えて、出来るだけ無視して寝ることにしました
寝付けない……うっかりその絵を見てしまうと、少し角度が変わったような気になってしまう
そんなことあるはずもないのに
しかし携帯で時間を確かめようと、ダッシュボードに手を伸ばしたら取りそこねて床に落としてしまい、それを拾おうとベッドの下を覗いたときに、お札や、なんのおまじないか五円玉がはっつけてあったりするのを見てしまうと、もう、寝るのもあきらめたくなります
昨日のホテルはできたばかりで、部屋もとても綺麗
そしてそんな怪しい絵は飾っていませんでしたが、あの女社長のパンフレットは、ある意味それに匹敵するインパクトがあるような、ないような
そうだった
これから向かう四日市でホテルをとったのが、前回のツイン体験だった
夜景がとても綺麗で、こういうの、さみしくなっちゃうよねって語らう人がその時はいたのだった
その人も東海地方に縁がある人で、旅先で美味しい店や景色を案内してくれたっけ
などと……また余計なことを思い出してしまった、そんな名古屋出張でございます
むかしこんなショートショートを書きました