夜の匂い
夜の匂いが琥珀色に染まる時
あなたは不要に言葉に僕を誘い
誘いを犠牲に愛を語る
戸惑うことも許されない刹那が
夜の向こう側へと時を歪める
もうこんなもんでいいじゃないか
弱音を吐く僕の吐息を
あなたは煙のように吸い込みながら
夜の長さは二人が決めるのだと嘯く
どうにもならない躍動は
絡み合う指先にまとわりついて
離れることを許さない
偽りに濡れた月のように
欲望の雫が溺れ落ち
自分が誰なのかを葬り去って
重なる思いが振動する
波に酔えば身体が疼く
止まらない
止まれない
戸惑うことは許されず
狂おしさが満ちるまで
花は咲き、蝶は舞う
落ちるなら今がいい
息が止まる
意識は沈む
生を選ぶか
死を受け入れるか
あなたは囁く
選べるものなら選んでごらんなさい
僕はあぶくとなり
境界面に向かって消えていく
僕はあなたから消えていく