見出し画像

そこに僕の居場所は、なかった

少し前の話、僕が一時的に喫煙をしていたほんの2週間前になるかな

アパートの玄関の外で僕は煙草を吸っていました
そこは雑草が結構あって、長雨のせいでカタツムリが結構な数いたんですね

僕はなんとなく、彼らと友達になったような気分でいたのですが、ある日清掃が入って、雑草は全て刈り取られ、カタツムリは居場所を失いました

消えていなくなったわけではないのですけどね

でも、彼らが占拠していた場所はすっかり緑がなくなり、コンクリートと植え込みをすっぽりと覆うシートが無機質な姿をさらしていました

それでも雨の日にはどこからともなく現れた彼らが所在無さげに目を出し角を出し這い回っていました

そんな折、いろんなことに踏ん切りをつけるつもりでいた期日が過ぎ、僕は彼らの姿を目にすることはなくなりました

つまり煙草をやめたんですね

そういう気持ちの切り替えは、わりと得意なほうだった僕は、まだ半分も吸っていない煙草とライターをとある場所にしまいこんで、また、いつの日にかお世話になることもあるのかどうか、そのときまでしばしのお別れとおもっていたのですけどね

いろんな変化があって、ああ、まさに節目なんだと実感しつつ、案外と煙草を吸いたい衝動はなかなか消えないものだなと、ちょっと意外に思っていたのです

”意外”というのは、以前煙草を止めたときというのは、かなりすんなりそれを受け入れられたし、今のご時勢、喫煙をしようと思ってもなかなかそういう場所も見つからないし、わざわざ時間を作るつもりもない

味見程度、挨拶程度に貰いタバコを2本ほどしただけで、それでもまぁ、これでしばらくは大丈夫だろうと”期待”というか、当然だぐらいに思う反面、どこかで、”あれ、おかしいな”という違和感を覚えていたわけです

今日までの間、いろんな人と出会ったり、話をしたり、これからもそういう予定があれこれあるわけで、変化というものを受け入れつつある反面、どうにも寝つきの悪い日々を過ごし、煙草を吸うわけでもないのに、夜中に部屋を抜け出して、夜風にあたることもしばしば

なにをしているんだか

思考実験や妄想によって、自己分析をする中、それを象徴するような夢を見たり、物事の感じ方が少し変わったりと、いまひとつ方向性が見出せないというか、これでよかったのだろうかという”ひっかかり”にどうも気分が躓いていて、うまくステップが踏めない

こりゃあ、どうにもいけない

”イライラしている”という実感がどんどんわいてきて、それをかき消そう、あるいは植え込みを覆うシートのように隠そうなんてしているこが、どうにも”はしたなく”思えて、どこかで突き抜けて、ハメでもはずして気分を変えようかと、そんなことに気が向くようになると、これはどうにも”失敗をする予感”しかしないわけです

”この年齢でのイヤな予感はたいていあたる”

これは僕の言葉です

そんなわけで昨日の夜、降り出しにもどって、迷いを認めて、もう一度煙草でも吸って頭を冷やそうと、夜中に家を抜け出して、いつもの場所で――カタツムリとの交流の場――で煙草を吸いました

”ああ、月が見える”

空はあいにくの曇り空なのに、そんな僕を覗き込むようにハーフムーンが雲の切れ間から顔を出していました

なんでハーフムーンなんだよ

ストロベリームーンに思い人とのことを願えば叶うと、そんな話をしたときに、”月は天気が悪くて見えません”と言ったあの人の言葉に

”月が見えなかったのは、天気のせいでもないし・・・”と返した僕は、今、ハーフムーンを見上げながら、”そんなことは言う必要なかったかもしれない”と気持ちが揺らいでいることに、どうにも腹立たしさを感じ、二本目の煙草に火をつけたときでした

視線が必然下を向き、かつてのカタツムリの居場所がダンゴムシによってすっかり占拠されていることに気がつきました

ダンゴムシはカタツムリを食べたりするのだろうか?

いや、多分この場所のコンクリートを食べているのだろう
カタツムリが減って、そこをダンゴムシが占領したのだろう

僕しかいないだろうと思っていた場所に思わぬ先客がいたことに、なんだかお前の居場所はここにはないぞと言われた気分になり、すっかり気分が下がってしまいました

”生まれて初めてダンゴムシに心を折られた”

それはそれで”心地よくもある”

そんなふさぎこんだ気分であたりを見回してみると、それまで気づかなかったいくつかの発見がありました

給水タンクから建物につながるパイプの腐食した部分に雑草が生えていました

僕なんかよりもよっぽど強い生命力を持っているんじゃないかと、拝みたい気分を哂い、ああ、だから”ハーフムーン”なのかと、妙に納得をさせられ、ふと学生の頃に作った”NIGHT”という曲の一説を思い出しました

 言葉に出来ない 真実かかえてる
 リアルな現実の中で
 眠れない夜に 答えを求めてる
 不確かな思いが夜に
 夜に

10代の頃に眠れずに家を抜け出して、散歩をしながら作った曲だったかな

なんだ、あの頃から何も変わってないじゃないか?

やっぱり、ここには僕の居場所はないんだ
ここ一月くらいの間に”墓まで持っていかなければならないような秘密”をあれこれ抱えてしまって、”リアルな現実”と折り合いがつかなくなっているなぁという”潜在意識”が作り出した憂鬱に当てられて、どうにも眠れずにいたということを自覚させられて

さて、何から手をつけたものか

と、それがイライラの正体であるかどうかは”不確か思い”なわけで、3本目の煙草を吸って部屋に戻り、眠れないなら寝なければいいと、また思考実験と妄想を繰り返して、帳尻をあわせる

”真っ先に解決するべき問題からずっと逃げてきたでしょ? この頃少しずつ解決しようと取り組み始めてるみたいだけど”

そうアドバイスをしてくれた人の言葉を抱いて、1時間くらい意識を失ったあと、いったんこれは、これで踏ん切りをと、noteに書き記して、先を急ぐこととしましょう

折り合いをつけるのではなく、解決にむけて



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?