
【読書感想文】「パイの物語」自分だったらどうするかは考えたくない②
映画「ライフ・オブ・パイ -トラと漂流した227日-」の原作。基本的にはフィクションなのだが、ミニョネット号事件という身の毛がよだつ実際に起きた出来事が参考にされていると知ったうえで読むと、一時的にフィクションだということを忘れて、実際に起きた漂流記のように思ってしまう。そのぐらい、主人公がボートの上で過ごした日々が妙にリアルで詳細に描かれている。トラが同船していないとしても、海原に浮かぶ救命ボートの上で227日間も生き延びることができるものなのか、自分だったら…なんてことは、夜眠れなくなるので考えないようにする。
最終章は、なんだか少し考えさせられるものがあった。
トラとそれ以外にも多くの動物たちが登場するパイの冒険物語は、体験していない者にとっては想像を絶するもので、現実的にありえないと話を聞きにきた人たちに信じてもらえない。
トラと一緒に乗船していたのはありえないので、動物が出てこない話を聞きたいと彼らが言えば、パイは人間しか出てこない話を語りだすが、どちらかと言えば、後者の方が聞くに堪えない話であった。最終的には、まあそもそもがフィクションなので、どちらが事実だとかはないのだが、どちらを信じるかは、自分にとって都合がよくて、信じたいと思える方だということだ。
自分が見ていないもの、見えないものを信じるか信じないかは、人それぞれなのだろう。現実世界で言えば、幽霊、宇宙人なんかの存在がそれに当てはまる。私自身はこうしたものが存在すると思うと胸がざわつくので信じない派だ。
映画自体は、アカデミー賞受賞作品として話題となったのを記憶しており、観てみたいと思っていたが、小説を読んで、この話のどの部分がどの程度再現された映画なのかと思うと、(ほぼCGだとは思うが)血にまみれるような映像が苦手な私は、映画鑑賞はやめておこうと思った。