長い私の年末年始が終わる頃
関東は今日が鏡開き。
鏡餅にやどった年神様を、開くことによってお送りする日。
我が家では、欠いたお餅を温かいお汁粉にして頂いた。
この頃になって、やっと私の長い年末年始が終わる。
去年の11月から1月まで、とても長かった、と毎年思う。
思うことが習慣になっている。
数年前まで、管理栄養士として病院に勤務をしていた。
11月頃から、入院患者さんの年末年始の献立作成、食材の発注予定等の準備が始まる。
難しいのは、変化の激しい予定食数を確定すること。
この時期は外泊・退院等があり準備する食数が大きく変化する。
数年来の食数実績を確認し、データ化してから予測を立てる。
当然ながら毎年日付と曜日が異なるのと、ご家族の都合もあって変動の予測が立たない。
運を天にまかせて決める時もある。
29日頃になると患者さんが減少し始め、31日の大晦日には普段の50%までに減ることもある。
だからと言って業務が少なくなるのではなく、嚥下機能が低下している方、体調のよくない方は外泊できないので、調理工程や手数は日頃以上だ。
調理従事者や栄養士等職員の人員配置はいつもと変わらない。
一方、病棟の患者さんが減ってくると、残された患者さん側の焦りと寂しさは人一倍だ。
それがひしひしと伝わってくる。
焦る気持ちは当然のように理解ができる。
だから、食事は粗末ではいけない、心温まるものでなくてはいけない。
クリスマスディナー → 年越しそば → おせち料理 → 七草がゆ → 鏡開きの料理等々、いわゆる行事食にメッセージを添えてご提供する。
ご飯食(常食)のみならず、おかゆ食(軟食)や嚥下困難な方々にも丁寧な行事食をお届けする。
辛い入院生活にいつも通りの家庭の味で過ごしていただきたいから。
少しでも癒されてほしいと思うから。
そのための予約食品、生鮮食品、冷凍でも可能な素材等を栄養管理と予算の範囲で準備していく。
年始になると、患者さんの戻りが徐々に増えてくる。
大きく食数が変わっても、対応できるような料理を厳選することは大事だ。
魚や肉の枚数・個数等の単体は、食材に無駄や不足が生じやすいので、カレーやシチュー等がどうしても定番になる。
数十年前は、病院にも良き時代があった。
家族の希望に沿ってできるだけ家族のもとに外泊・退院を医師は許可し、家庭でお正月を迎えられるように医療者全員でバックアップしたことを思い出す。
元日には、患者家族がお重詰のお節料理を持って見舞いに来る姿も見受けられた。
食べられない患者さんの代わりに家族が食べて、患者さんご自身の顔も赤らむ、そんな幸せそうな様子を見てほっと心が和んだものだ。
勿論現代は、感染症対策・食中毒防止等々で考えられない光景。
年明けには、食材の在庫整理と来年のための食数実績のデータづくり。
年末年始の献立や行事食の評価の把握。
やっと終わるのが、鏡開きを終えたこの頃なのだ。
だから私の年末年始はとても長く感じる。
年末年始の医療現場は、医師、看護師を始め言葉に表せないほどの激務だ。
身近にいた栄養現場の職員を思い出すと、手前みそだが、お正月に休めない職業として感謝の気持ちでいっぱいになる。
きっと1月後半から順番にお正月休みを取るのだろう。
「どうぞ今年も、患者さんの病気回復のために頑張ってください。
応援していますね」
とっくに現場を退いた私が、この時期になると熱き思いが蘇ってくる。
今回もありがとうございました。