漫画連載裏話②
先日の漫画連載裏話①の続きです。
パパッと書くつもりが、だいぶ間が空いてしまいました。(絵も文章も遅筆な私)
▼前回の漫画連載裏話①はこちら
後編の今回はこんな内容。
各話のふり返り
第1話 派遣お尻ふき屋さん
満足度:☆☆☆
全5回の連載のうち、最初と最後の話は家族3人出てくるものがいいかなと思い、第1話はこの話に決定。
息子おしりのお尻を拭くお尻ふき屋さんのお話。(早口言葉みたい)
この話を描く中で、私はとても大事なこと2つを思い出させてもらいました。
初見で、このエリンギから手足の生えた生き物が父であると分かる人は、いない。
オクラから手足の生えた生き物が母であると分かる人も、いない。
(そもそもオクラかどうかも怪しい)
最初に描いたネームでは、家族紹介のコマもなく、特に父エリンギはいきなりトイレにバーンと登場する感じになっていたので、「唐突すぎて分かりにくい」と編集部から指摘を受けたのです。
「母=オクラ、父=エリンギ」が私の中で当たり前になりすぎていて、父母が異常な形状をしていることをすっかり忘れていました。
初めて漫画を読んでくれる人のことも常に意識しておかないといけないなぁと気づかせてもらった回でした。
第2話 トウモロコシのヒミツ/発表会の練習
満足度:☆☆
4コマ2本。
どこから仕入れた情報なのか怪しいトウモロコシのヒミツと、引っ張ってはいけないもので発表会の練習をしちゃうおしり君の話です。
トウモロコシのほうは、最後にツッコミの一言を入れるべきだったと後から思ったのですが、差し替えをお願いするには心苦しいタイミングだったので、そのままにしました。
イラストの仕事でもたまにこういうことがあるので、一発でストンっとセンスのいいものが作れるようにならないといけないな…と思ってます。
日々鍛錬。
発表会のほうはなかなかよい出来。
こっちだけだったら星3つです。
第3話 きゅうりの押し売り
満足度:☆☆☆☆
今回の連載の中で1番気に入っている話です。
自分で描いた漫画はだいたい、何度も読み返しているうちに面白いんだか面白くないんだか分からなくなるんですが、これは何回読んでもブフッとなる話でした。
基本的に息子の言動自体が面白い訳で、私はただそれを漫画にしているだけなのですが、演出の仕方次第で面白さが倍増したり半減したりするので、今回はその演出が上手くいったかなと。
ちなみに最近は、スティック状のきゅうりなら少し食べてくれるようになりました。
輪切りのきゅうりは受けつけてないそうです。
(きゅうりは切り方でそんなに食感変わらんでしょうに)
第4話 ベーコン/ひとにシール
満足度:☆☆☆
4コマ2本。
ベーコンを食べるタイミングにこだわりがあるらしい息子の話と、なにやら特別なシールを手に入れたらしい息子の話。
これはどちらも気に入ってます。
好みな雰囲気のツッコミを入れられたので。
担当編集さんに『「ちびまる子ちゃん」が思い浮かぶ』と言われたのはすごく嬉しかったです。
私も「ちびまる子ちゃん」の核心をついたツッコミがすごく好きだったので。
(今日も息子と初期の「ちびまる子ちゃん」を配信サービスで見てます。やっぱりおもしろい。)
第5話 鳥の糞(ボツ秘話あり)
満足度:☆
学びがあった度:☆☆☆
今年の春に起こった、この絵日記での出来事(↓)の詳細を描いたものです。
ひたいのド真ん中で感じたボツンの衝撃が忘れられなくて描きました。
この漫画は途中の表現で何度かボツをくらい、何度も構成を練り直して1番苦労した回なのですが、正直に言うとあんまり気に入ってません。
絶対もっとおもしろくできたと思うのですが、仕事として描く以上は当然いろんな制約がある訳で、12コマに収めるのは無理があったな〜と反省しています。
ここからボツ秘話。
最初に描いたネームでは、とある有名人に登場していただいていたのですが、それが特定の層の人にしか伝わらないであろう内容だったことと、その人の名前を出すのはNGかもしれないということで、第1のボツを頂きました。
有名人の似顔絵を描くのはOK(悪意のある描き方をしない限り肖像権の侵害にはならない)と認識していたのですが、名前を出すのは問題になることがあるかもしれないんだなと勉強になりました。
有名人部分を無くすとなると構成を全部考え直さないといけなかったので、ほぼ描き直し。
悩んだ末に出来上がったのは、言葉でまくし立てて面白さを出すタイプの漫画。
これでいけたらいいな〜と思っていたのですが、これも文字が多すぎるとのことで第2のボツ。
文字で埋まっている部分が多いとやはり読者の離脱を招いてしまうので、もうちょっと減らしましょうということになりました。
仕事として描かせてもらう以上は、面白さよりもPV数を稼ぐことを優先しないといけないんですね。そりゃそうだ。
言葉選びにもかなり時間をかけていたので、それを減らすのは結構ツラい作業でした。
言葉でまくし立てることによって面白さを出している漫画から言葉を減らすと、当然おもしろさは半減。
コマを増やせば同じ文字量で面白さを維持できたかもしれませんが、原稿料は「更新1回につきいくら」という形だったので、今回は12コマまでが私の限界でした。
結局は、短く面白くまとめられるテーマをチョイスできなかった私の判断ミスです。
もう一度構成を練り直したり全く別の話を描いたりする元気はもう残っていなかったので、このちょっと面白さが半減した漫画でいくことに。
妥協してしまったってことです。
私は漫画家にはなれないなって思いました。
本当のスターになれる人は、ここで妥協しないだろうから。
制約がある中でも、どんなにしんどくても、自分の納得いくものを何度でも描き直すだろうから。
私はコスパの概念に負けました。
世の成功している漫画家さんの偉大さを、身に沁みて感じた経験となりました。
タイパ重視時代に読まれる難しさ
今はタイパ(タイムパフォーマンス)の時代らしいです。
映像を倍速で見たり、サーッと流し見したり、結論から先に確認したりするのが、特に若者の間では普通になっているそうな。
(私は順を追ってじっくり見たい派の30代です)
漫画コンテンツも、紙の本よりwebが主流になってきて、縦スクロールの時代。
スマホでサーッ!サーッ!って読み飛ばせちゃう。
そんな時代でちゃんと読まれる漫画になるには、たぶんインパクトや派手さや目新しさ、または話題性が必要。
私が描いていた漫画は、それとは程遠いものだったと思います。インパクトがあるとすればキャラ設定だけで、あとは地味。
内容自体はじわじわ笑いのものが多いので、流し見だと何が面白いのかさっぱりわからずに終わることでしょう。
「間」を大事にして描くことも多いですが、そういうのはじっくり読まないと活きてこない。
編集部内での評価は高かった(と聞きました)一方で、多くの一般の人たちに読んでもらうことができなかったのは、やっぱりインパクトやテーマが弱かったからだろうと思います。
そもそも読んでみようと思われなかった。
コンテンツが溢れすぎてタイパ重視になった世界では、シュール系やじわじわ系で成功するのは、けっこう難しいのかもしれません。
でも私はじわじわくる笑いとか、意味のわからない笑いとか、そういうのがすごーく好きなので、自分なりのやり方でこのまま好きなものを描いていこうと思います。
好きなものじゃないと続けられないしね。
(好きなものでもこんなにノロノロ亀更新のくせに)
最後に
今回の短期連載では完全に満足のいく結果は出せませんでしたが、すごくたくさんの気づきや学びを得ることができました。
「原稿料少なっ」て思ってしまってすみませんでした。結局たいして貢献できなかった訳なので、妥当な金額だったと思います。
むしろもらえただけありがたいです。
会社の利益だけを考えるなら、すでにSNSのフォロワー何万人のインフルエンサー人に漫画を描いてもらったほうが手っ取り早いのに、
私のような無名のクリエイターにもチャンスを与えてくださった訳ですから。
マママンガ賞の時から、ちゃんと漫画の内容を見てくれていたような気がして、すごく嬉しかったです。
kodomoe編集部の皆さん、漫画を読んでくださった方々、本当にありがとうございました。
オリジナルストーリーの漫画は、これからも自分のプラットフォーム内でじっくり育てていこうと思います。
すごくおもしろいって訳じゃないけど、疲れた時に読むとちょっと癒される、みたいなものを目指して。
来年は漫画もたくさん描けるようにがんばろう。
(たぶん去年の年末も全く同じこと言ってた。
来年こそ。)
ふー。文章書くの難しい。
ギリギリ年内に書けてよかったです。
皆さまどうぞよいお年をお迎えください。
来年も気長にお付き合いいただけると嬉しいです。