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先延ばしを解決する論理療法(REBT)【書評】今日できることを、つい明日に延ばしてしまうあなたへ ウィンディ ドライデン
「私は「先延ばし」で困ったことは一度もありません」という強気の前書きから始まる甘くない一冊。
論理療法(REBT)の世界では有名なドライデン博士による先延ばし克服法だ。甘い言葉で先延ばしをする人を慰めたり、受容したりすることは全くない。私自身も、先延ばし癖で苦しむタイプなので、竹刀でビシビシしごかれているような感覚に陥った。これも、論理療法(REBT)の醍醐味の一つだ。
表紙は、今風の分かりやすく見える自己啓発本に見えるが、中身はゴリゴリの論理療法(REBT)本なので、その背景が無い人が読むと、挫折必至(使えない!と投げ出すのが目に見えるよう)だ。
先延ばし癖を克服するためのヒントになる、実用的な方法はわずかであり、多くの章は先延ばし癖の背後にひそむ誤った思い込み・非合理的な考え(イラショナル・ビリーフ)を打ち砕くことを目標にしている。無意識のうちに大切に抱え込んでいる非合理的な考え方を発見し、反駁できると、根本から変わるかもしない。
私はすでに論理療法(REBT)に関しては、かなり知識を深めた状況で読んだので、得られる点が多くあった。
魔法のような方法は存在しない
「悪い知らせは、おわかりのとおり「それはやさしくない」ということです。・・・先延ばしは明らかに悪い癖で、なおすのに時間がかかります。これは事実です。けれども、もし、その事実を受け入れれば、あなたは先延ばし癖を治すチャンスを手に入れることになります。」(P11)
この本の使い方にあたり、以下のスキルを駆使するようにドライデンは勧める。
・自任する(自分に先延ばし癖があることを認める)
・目的設定(困難で期限の差し迫った嫌な仕事をしようという気持ち)
・本気の取り組み(長期的利益のために短期的苦痛に耐える)
・粘り強さ(自分の第二の本性にするまで繰り返す)
他の論理療法のビリーフ修正と同じように「先延ばし癖」を治すのも簡単なものではない。正面から自分の非合理的な考え方を見分け、その信念に挑んでいかねばならないのだ。しかも、何度も、何度も、繰り返し。正しいことは地味ですし、苦しいのだということも思い知らされる。論理療法は甘くあない。とりわけ、ドライデン博士は甘くない(怖い)。
先延ばし癖の背景にある4つの不健全な信念
エリス博士は「先延ばし癖のある人々は、先延ばしをする主な原因となっている『柔軟性のない信念』に加え、そこから派生したさらに3つの不健全な信念を持っている」と述べています。彼の言う4つの「不健全な信念」とは以下のものです。
・不健全な信念1 柔軟性のない要求
・不健全な信念2 過酷視
・不健全な信念3 不快さへの忍耐力不足
・不健全な信念4 ダメだと思う (P44-45)
論理療法の創始者エリス博士が、先延ばし癖に関して4つの不健全な信念を挙げていたというのは興味深い。
先延ばし癖に関して、すべてのイラショナルビリーフが同時に存在しているわけではないが、これらが組み合わさると心理的に先延ばしてしまう傾向が強化される。例えば、「仕事を始める前には気分よくありたい」という願望は普通のことだけれど「仕事を始める前には気分よくあらねばならない」という要求をしてしまうと、いつまでたっても、仕事にとりかからないかもしれない。
根っこの信念を探ると「やりたくなったらやるけど、やりたくならないから、やらない」という実に、幼稚な信念にしがみついていることが分かるのだ。先延ばし癖のような一般的に見られる心理的問題にも「べき思考」の罠が見られることが多い。
実際に、ドライデン博士が「復習を先延ばしにする大学生」と面接した様子が描かれているが、あまりにも正論すぎて笑えた。
「その気になったらやる」という非合理的な考え方
学生 「どうしたら復習をする気になれるんでしょうか」
筆者「それが君の問題だね。君は、する気にならないことをする前に、自分をその気にさせようとしているわけだよね。その板挟み状態から抜け出す唯一の方法は、復習をする気分じゃなくても復習を始めることなんだ。そうすれば、しばらくすると、復習をする気分になるチャンスがもっと出てくる。ただそういう気分になるのを待っているよりはね」
学生「でも、復習を始める前に復習する気になっていなくていいんですか」
筆者「もちろん、なっていなくてもいいんだよ。まさにそこが君の一番の問題だね。君は復習をする前に復習する気になっていなければならないと思い込んでいる。もしそれが正しいとしたら、誰も復習なんかしないだろう。まあ、復習を始める前にそういう気分になっているほうがイイに決まっているけれど、それは、そうでなければならないということにはならないよね・・・・何回もそういう風にしていると、そのうち何度かはその気になり、何度かはその気にならないけれど、ともかく君は復習をすることになる」
学生「するべきことはそれで全部なんですか」
(P113-116)
これですよ、これ。大いに笑えるじゃないか。これでは説教されているのと変わらない!論理療法の背景が無ければ単なるスパルタに見えますが、この教えは事実に即している。
「やりたくなったらやる」そこからさらに進んで「やりたくなければ、やるべきではない」(要求)があるとすれば、いつまでたってもできるわけがないのだ。現実を生きていくのにあたり、論理療法の考えは実に正しいのだ。安易な解決策に頼らず、まずは、甘ったれた自分の非合理的な考え方を粉砕する必要を強烈に感じる一冊だ。
論理療法は甘くない
ほんとに甘くない・・・というのが、論理療法の本を読んでいつも感じること。もっと口どけの良い、解決策を求めてしまう自分がいる。しかし、実際には、心に刻み込んでいる甘ったれた信念が、先延ばしをさせているのだということに気づかなければならないのだ。この本を読んでから、いくつか実行しはじめたことがある。
実際に行動によって強化しなければ、この手の癖は変わらない(もう、習慣になり、生き方化しているから)
「行動に裏付けられた信念は強化され、行動に裏付けられていない信念は弱くなります。これは最も重要な原理ですから、再度、強調しておきたいと思います。先延ばし癖を治す最善の方法は、健全な考え方をし、その健全な考え方に一致した行動をとることである」(P106)
物事に追われるのではなく、追うようになると、実に爽快な気分を味わうことができる。先延ばし癖を克服することは、健やかな人生を味わうための一つの方法になるはずだ。
論理療法の効果なのかわからないけど、いつの間にか、ラストスパート型ではなくロケットスタート型になっていた。少しは成長したのかな。
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