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通学vs通信 社会人はどちらを選択すべきか?



アブストラクト

(※本論考は少々長いので、筆者の結論を最初に提示します。お時間がある方は最後まで読んでみてください🐱)

通学制固有のメリットである内部進学における大学院受験と通信制固有のメリットである最短2年で卒業学費が安い自分のペースで勉強可能を比較したとき、社会人の場合、通信制に軍配が上がる



Ⅰ. はじめに

社会人が心理系大学の入学を検討する際、様々な背景から、通学にするか、通信にするか迷われると思いますが、社会人が取り得る選択肢は以下の2パターンです。

1.仕事をしながら学ぶ
2.仕事を辞めて学ぶ

本論考では、この2パターンを軸にしながら、メリット・デメリットを整理し、「社会人は通学制大学と通信制大学のどちらを選択すべきか?」について、私なりの解を提示します。🐱



1. 仕事をしながら学ぶ

社会人の中には、自分や家族の生活のため、働かざるを得ない方もいると思います。

また、臨床心理士や公認心理師などの心理職になるかはわからないけど、心理学を学んでみてから大学院に進学するかどうか決めたい方もいると思います。

上述のように仕事をしながら学ぶ場合、ほとんどの方が通信制になります。
(通学制は1限から6限までランダムに授業があり、仕事の時間を柔軟に調整できる方以外は、通学することは物理的に困難だからです。)

ですが、文部科学省(2024)によると、7割が社会人であり、仕事をしながら通信制に入学される方は多いので、安心してください😼

文部科学省(2024).大学通信教育の規模とアクセスの質, 文部科学省HP(2024年11月25日取得,https://www.mext.go.jp/content/20240531-koutou02-000036245_3.pdf)


以下に、仕事をしながら通信で学ぶ場合のメリット・デメリットを整理します。

■メリット


・自分のペースで学習可能
通信のカリキュラムは、主に以下の2点により構成されているため、通学制で行われるような授業がスクーリング以外になく、仕事をしながらでも自分のペースでカリキュラムを進めていくことができます。

  1. レポート+科目修了試験(大学での試験)

  2. レポート+科目修了試験+スクーリング(1日完結型の授業)

レポートはいつ提出しても良く、スクーリングは毎月開催されているので、いつでも参加可能です。忙しい社会人は、休日にレポートやスクーリングに勉強・参加するだけでOKです。

■デメリット


・モチベーションの維持に工夫が必要
仕事をしながら通信で学ぶ場合、日々の業務に絡めとられ、時間がない、あるいは時間ができても疲労により通信の勉強が進まないということが起こります。実際、簡(2022)によると、通信生の卒業率は11%以下で、多くの方が卒業できていないのが現状です。

簡珮鈴(2022).データから見る大学通信教育, J-Stage HP(2024年11月25日取得,https://www.jstage.jst.go.jp/article/well/16/0/16_27/_pdf)


2. 仕事を辞めて学ぶ

社会人の中には、様々な事情から仕事を辞めて学ぶ方は、収入面・周囲からの視線など、不安なことがあると思いますが、文部科学省(2024)によると、仕事を辞めて学ぶ通信生は25.6%もおり、あなたは一人ではありませんので、安心してください😼

文部科学省(2024).大学通信教育の規模とアクセスの質, 文部科学省HP(2024年11月25日取得,https://www.mext.go.jp/content/20240531-koutou02-000036245_3.pdf)


仕事を辞めて学ぶ場合
通学通信どちらも可能です。
以下に、「仕事を辞めて通学の場合」と「仕事を辞めて通信の場合」のメリット・デメリットを整理します。

2-1. 仕事を辞めて通学

「心理職になる」ことだけが目的であれば、通信に通うのが理に適っているため、通学をする場合は、「心理職になる以上の何か」を得るために通うことになります。

■メリット

・人脈を構築できる
社会人の学友に関しては、良い意味でも悪い意味でもジェネレーションギャップがあり、学びになると思います。また、教授とも物理的・心理的にも近く、大学以降の関係性を構築できます。(通信だと、そもそも教授に会うことができません。)
例えば、学友及び教授との人脈を構築することで、大学院に内部進学する場合は筆記試験および面接試験で有利ですし、他大学院に進学する場合でも、研究等で協力してもらえたり、表には出ない心理職の働き口紹介してもらえたりできます。

・環境がよい
心理学を第一線で研究している教授に指導してもらえるので、心理学を直接肌で感じながら勉強することができます。(通信だと、教科書をベースに自学自習するのが基本なので、無味乾燥に感じる人もいると思いますし、モチベーションは保ちにくい環境ではあります。)
また、教授と距離が近いため、授業内容や教授の研究内容などについて質問し放題で、疑問即解決されます。(通信だと、教科書の内容が良くわからなくても質問できないので、自力で調べるコストがかなりかかります。また、1日調べ尽くしてもわからないこともあります。)

■デメリット

・大学受験のための勉強をし直す必要がある
心理学の勉強だけをしたいところですが、通学の場合、現役生同様に共通試験や一般入試を突破するか、2年次からの編入試験となり、いずれも筆記試験を受験する必要があります。

・社会人は公認心理師になるための授業を履修するハードルが高い
公認心理師になるためには、文部科学省と厚生労働省が定めた科目を履修する必要があります。ただし、必修科目の心理演習・心理実習は、公認心理師法第7条で、指導教員一人あたり15人の学生しか受け入れてはいけない法律があるので、心理学部であれば誰でも履修できるわけではなく、選考があります(通信も同様)。選考方法は各大学により異なりますが、第一段階の選抜方法がGPA(大学の成績)で、第二段階の選抜方法が筆記試験であることが多いです。

通学制の場合、GPAのための単位取得要件は主に定期テストであり、どの授業が楽単か、過去問はあるのか等、情報戦・団体戦の様相を呈することが多いです。先輩や学友から過去問を入手するなど、現役生より年上の社会人には、少々ハードルが高い場合があるように思います。
また、一般教養も履修しなくてはならないので、心理学だけを学びたくても、GPAを落とさないためには一般教養でも良い成績を取らなくてはいけないので、常時成績に気を張ることによる相当なストレスがかかります。

・通信と比較して学費が高い
例えば、放送大学(通信)は3年次編入の場合、卒業までに必要な学費は40万円前後です。
一方、慶應義塾大学(通学)は1年次入学の場合、卒業までに必要な学費は500万前後です。

(※1)高低差がわかるように、安い大学と高い大学で比較しています。
大学には高い通信制と安い通学制があるので、ここまで大きな価格差にならない場合もありますが、数百万単位の差になることが多いです。
(※2)正確な学費は、各大学のHPを参照してください。



2-2. 仕事を辞めて通信

仕事を辞めて通信で学ぶ場合、様々な背景で休職or退職されていると思います。通学制の裏返しですが、通信にもメリット・デメリットがあります。

■メリット

・誰でも入学可能で多様性がある
通信は高校卒業程度であれば、基本的に誰でも入学できます。
そのため、私がいた東京福祉大学には10代~60代の方がいらっしゃいました。スクーリングで一緒にワークをしたときは、多様な考えに触れ、大変勉強になりました。また、年頃の通学生にありがちな、誰かを除け者にするような動きもなく、互いの意見を尊重し、包摂しようとする土壌がありました。

文部科学省(2024).大学通信教育の規模とアクセスの質, 文部科学省HP(2024年11月25日取得,https://www.mext.go.jp/content/20240531-koutou02-000036245_3.pdf)

※基本的に誰でも入学可能。以下は一例。
・放送大学:高校卒業程度であれば誰でも可能
・東京福祉大学:志望理由書(800字)を提出しますが、入学できなかった方は聞いたことがないです。
・早稲田大学:一次選考が志望動機書(3000字)と学習計画書(1,000字)を提出。二次選考が面接で1.5倍~2.1倍程度あり、通信の中では特殊です。

https://www.tokyo-fukushi.ac.jp/correspondence/admissions.html

https://you2.jp/taisaku/waseda/waseda_hum_eschool.htm


・学生のモチベーションが高い
通信は学び直し(リカレント)で入学される社会人の方も多いので、通学生よりもモチベーションが高い場合が多いです。数少ないスクーリングでは、積極的に先生に質問したり、学生同士意見交換したりして、毎回のスクーリング後は刺激を受けました。私は静かな方なので交流は少なかったですが、スクーリングで出会った方と連絡先を交換して、授業外でお友達になる方も多くいらっしゃいました。

・効率良く最短ルートで卒業可能
3年次から編入できる大学もあるので、最短2年で卒業できます。
通学だと、1年もしくは2年次編入からなので、卒業まで時間がかかります。
それに伴い学費も安いです。

■デメリット

・カリキュラムの質が総じて低い
私は東京福祉大学の通信生だったので、他大学については不正確ですが、同じようなものだと思っています。(違ってたらごめんなさい、、、。)

例えば、東京福祉大学のカリキュラムはレポートとスクーリングから成っています。
まず、レポートは「○○について論述せよ。」のような形式ですが、テーマが曖昧で、学生に何を回答させたいのか不明確なものも多いです。(大学側に題意を問い合わせても、通信生はレポート採点者に連絡を取ることができず、通信教育課のお役所仕事の回答しか返ってきません。)

つぎに、スクーリングは大学に通学し、対面で行う1日完結型の授業です。
東京福祉大学では、スクーリングは教授ではなく講師によって行われます。
通学生は研究者である教授によって授業が行われますが、通信生は、研究者ではない講師によって行われ、先生教科書授業内容異なります。(スクーリングで先生に、何の研究をしているか尋ねたときに、「何もしていない」と言われました。)

レポートのお題設定、スクーリングの質など、いずれも質が低いです。



Ⅱ. おわりに 

結論:通信制に軍配が上がる

本論考では、社会人の心理系大学は通学にするか、通信にするかについて、仕事をしながら学ぶ場合と仕事を辞めて学ぶ場合の2パターンに分け、それぞれのメリット・デメリットを整理しました。

通学制においては、
人脈は、正直、研究等に協力関係は学会でも作れますし、表には出ない心理職の働き口の紹介は大学院でもしてもらえます
環境は、研究者ではあるが教育者ではない教授は、つまらない授業を展開しますし、人間性が合わない教授もいるので、通学なら確実に理想の環境が整っているとは言えません
従って、内部進学における大学院受験通学制固有のメリットであると考えます。

通信制においては、
最短2年で卒業可能学費が安い自分のペースで勉強できることが通信制固有のメリットであると考えます。通学生のデメリットであるカリキュラムの質の低さについては、良質な教科書を師として、自分で学んでいったり、学生同士で勉強会を開いたり、学会に参加したりすることで相対的にデメリットが緩和されると思います。

両者に利点と欠点があり、それらを勘案して自分にとって最善な方を選択すべきですが、私は「通学制:内部進学における大学院受験」と「通信制:最短2年で卒業学費が安い自分のペースで勉強可能」を比較したとき、社会人の場合、通信制に軍配が上がると思います。

一般的に、大学院の内部生と外部生の比率5:5、あるいは内部専用選考がある大学院だと7:3程度になるイメージです。どうしても行きたい大学院がある方は学部から入っておいた方が有利な一面はありますが、自分が大学院生になったときに、師事したい先生が退官されたり、サバティカル(研究のための長期休暇)を取るのは予見できないため、不確定要素が多いです。

また、どの大学院でも基本的には外部生にも門戸が開かれているため、対策を十分に行えばどの大学院でも合格可能です。
従って、通学制固有のメリットである大学院受験は対策次第でいかようにもなるため、通学制のメリットを通信制のメリットが上回ると考えます。

社会人で働きながら学ぶ場合、多くの方にとって、そもそも通信制しか選択肢がありません。また、社会人で仕事を辞めて学ぶ場合は、収入がないため学費が安いのはマストですし、だからこそ最短で卒業し、はやく心理職になったり、あるいは違う道を見つけたりするのが望ましいです。
改めて、通信制に軍配が上がります。


長文を読んでいただきありがとうございます。
ご参考になればうれしいです🐈


参考文献

簡珮鈴(2022).データから見る大学通信教育, J-Stage HP(2024年11月25日取得,https://www.jstage.jst.go.jp/article/well/16/0/16_27/_pdf

慶應義塾大学(2024).【学部】学費, 慶應義塾大学HP(2024年11月25日取得,https://www.keio.ac.jp/ja/admissions/fees/

総合型選抜の個別指導塾 洋々(2024).早稲田大学 人間科学部eスクール一般入試の対策,総合型選抜の個別指導塾 洋々HP(2024年11月25日取得,https://you2.jp/taisaku/waseda/waseda_hum_eschool.htm

東京福祉大学(2024).通信教育課程入試情報, 東京福祉大学HP(2024年11月25日取得,https://www.tokyo-fukushi.ac.jp/correspondence/admissions.html

放送大学(2024).学費っていくらかかるの?, 放送大学HP(2024年11月25日取得,https://tobe.ouj.ac.jp/fee/

放送大学(2024).入学・編入試験はありますか?, 放送大学HP(2024年11月25日取得,https://tobe.ouj.ac.jp/fee/

文部科学省(2024).大学通信教育の規模とアクセスの質, 文部科学省HP(2024年11月25日取得,
https://www.mext.go.jp/content/20240531-koutou02-000036245_3.pdf











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