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希望の力:パンドラの箱とアウシュヴィッツ強制収容所の体験記から学ぶ

みなさんは「希望」をもっていますか?
普段の生活では希望を持つことはできますが、アウシュビッツ強制収容所のような絶望に感じられる苦境の中でも希望を持ち続けることはできるでしょうか?

現代の研究でも、希望が人生におけるさまざまな苦悩を乗り越えるための鍵であることが証明されています。今回は、パンドラの箱の物語とともに、アウシュヴィッツ収容所の体験記、そして私自身の経験を通じて、希望の力について考えてみたいと思います。


1. パンドラの箱と希望の物語

昔、神々の王ゼウスは人間に罰を与えるために美しい女性パンドラを創り出し、彼女に開けてはならない箱を与えました。箱には、世界中のすべての災厄が詰まっていました。好奇心に勝てなかったパンドラは、ある日その箱を開けてしまいました。すると、病気、悲しみ、嫉妬、憎しみなどの災厄が飛び出し、世界中に広がりました。驚きと後悔に包まれたパンドラは急いで箱を閉じましたが、すでに多くの災厄が出てしまっていました。しかし、箱の中には唯一「希望」だけが残っていました。

ギリシャ神話:パンドラの箱

この「希望だけが残った」という解釈は諸説ありますが、私達にも起こる様々な災いがあっても、希望だけは残るというポジティブなことだと私は解釈しています。希望が残っていれば、すべて失ってもまた一歩踏み出すことができるのだと思います。

2. 希望の心理学的意義

希望は単なるポジティブな感情以上のものであり、心理学的にも深い意義があります。研究によれば、希望を持つことはストレスに対処し、心の健康を維持する上で極めて重要です。例えば認知行動療法(CBT)を受けた抑うつ患者において、希望の増加が抑うつ症状の軽減と関連していることが示されています。希望が増すことで、クライアントは将来に対してポジティブな期待を抱くようになり、抑うつ症状の改善が見られたとのことです。

3. アウシュヴィッツの体験記から見る希望

アウシュヴィッツ強制収容所の生存者であるヴィクトール・フランクルは、その著書『夜と霧』の中で、極限の状況における人間の精神的な強さと希望の力について語っています。フランクルは、ナチスの残虐な収容所生活の中で、希望を失わず生き抜くことができた人々がいたことを記録しています。


ひるがえって、生きる目的を見出せず、生きる内実を失い、生きていても何もならないと考え、自分が存在することの意味をなくすとともに、頑張り抜く意味も見失った人は痛ましいかぎりだった。

そのような人々はよりどころを一切失って、あっという間に崩れていった。

あらゆる励ましを拒み、慰めを拒絶するとき、彼らが口にするのはきまってこんな言葉だ。

「生きていることにもうなんにも期待がもてない」こんな言葉に対して、いったいどう応えたらいいのだろう。

ヴィクトール・E・フランクル『夜と霧

そんな過酷な環境の中で、生き延びた人と自ら死を選ぶ人がいました。
その両者の違いは「未来に対し、生きる意味を見出していたかどうか」
つまり、「希望」を持ち続けていられたかどうかです。

フランクル自身も過酷な状況の中で希望を持ち続けることで、精神的な苦痛を乗り越えることができました。彼は「人間はどのような状況に置かれても、意味を見つけることができる」という信念を持っていました。これは希望が人々に困難を乗り越える力を与えることを示しています。

4. 学校や職場での活躍における希望の役割

希望は学業成績にも大きな影響を与えます。アメリカの大学生を対象とした研究では、希望が高い学生は、低い学生に比べて学業成績が良いことが分かっています。具体的には、希望を持つことで目標達成へのモチベーションが高まり、困難な課題にも積極的に取り組むことができます。

職場においても希望は重要です。
Snyder et al.(2002)の研究では、希望が高い従業員は目標達成に向けて積極的に取り組み、困難な状況でも効果的に対処することができると報告しています。希望が高い従業員は、自分の能力を信じ、問題解決のための道筋を見つける力が強いとされています。

5.希望について私の経験

希望とは、未来に対するポジティブな期待や信念を持つことを指します。例えば、リハビリを受ける患者が「きっと良くなる」と信じることが希望です。この希望は、治療の過程でのモチベーションを高め、回復を早める効果があります。

私自身、過去にメンタル不調に陥った時は、まるで永遠に続く暗いトンネルに入ったかのように感じました。(詳しくは体験記をご覧ください)
不安に押しつぶされそうになり、自分は本当に回復するだろうか、また以前のように働けるのだろうかと心配でいっぱいでした。その頃、日常の些細なことさえも重く感じ、先が見えない不安と戦っていました。

そんな私を支えてくれたのは、家族や友人、その時に出会ったさまざまな人たちでした。私は現状を受け入れることができるようになり、「きっと今よりも良くなる」という希望を持つことができました。その希望は、まるで一筋の光のように、私を導いてくれました。

希望を持つことで、私は少しずつ日常生活を取り戻し始めました。小さなことでも前向きに捉えるようになり、一歩一歩確実に進んでいくことができました。例えば、毎日の散歩を楽しむことや、太陽の光を浴びたり、青空を見て心が癒されることを実感しました。

回復の過程で重要だったのは、未来に対する希望を持ち続けることでした。希望は、まるで心のエネルギー源のように、私に力を与え続けてくれました。現在、私は再び仕事に取り組み、普通の生活を送ることができています。そして、今この瞬間を生きることの喜びを実感しています。

希望の反対は絶望です。もし、あの時絶望だけを抱え続けていたら、今の自分はなかったかもしれません。絶望は心を閉ざし、未来への道を見失わせます。しかし、希望を持つことで、どんな困難も乗り越える力を得ることができるのです。

私の経験から言えるのは、希望はどんなに小さなものであっても、その力を決して侮ってはいけないということです。希望は、心の中で芽生え、少しずつ育てていくことで、大きな力となります。困難な状況にある時こそ、希望を見出すこと大切です。そして、その希望があなたを導き、明るい未来へと繋がるのです。

時として希望を見いだせない時もあります。治らない病気が分かったり、交通事故で後遺症が残ったり、大切な人を失ったり、「この世界はなんでこんなひどいことが起こるのだ」と憤ることもあるでしょう。しかし、希望とは元の状態に戻ることだけではありません。その現実を受けとめたうえで、新たな希望を見出すことはできるのです。未来を信じ、希望をもつことで困難を乗り越えるための大きな力となるでしょう。希望は決して消えない灯火のように、あなたを導いてくれるのです

【まとめ】

古代ギリシアのパンドラの物語とアウシュヴィッツの体験記は、希望の大切さを教えてくれます。
現代の心理学的研究も、希望が人々の心の健康に重要な役割を果たしていることを示しています。学校での活躍や職場でのパフォーマンスにも、希望は大きな影響を与えます。希望を持つことで、困難な状況に立ち向かい、より充実した人生を送るための力を得ることができるのです。

希望を持ち続けることの大切さを改めて感じていただけたでしょうか。この記事が、皆さんのメンタルヘルス向上に役立つことを願っています。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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