チーム改革への挑戦:バスケ桜花学園の初のダブルキャプテン
昨年の12月25日、桜花学園はウインターカップでの3回戦敗退により優勝を逃した。
田中は下級生ながらスタメンで出場し、チームトップの27得点を挙げたが、試合後のインタビューでは涙を見せずに堂々と応じた。
しかし、ホテルに戻ると、彼女の心は壊れた。「泣くというよりも、崩れ落ちながら泣いたんです」と田中は語った。
田中こころは抜群のシュート力を持つエースとして活躍してきた。
試合終了まで残り3.3秒で、彼女の守備相手に同点の3ポイントシュートを許し、さらにフリースローで逆転された。
田中は報道陣に自らの責任を明確に認めた。
その時、床に座り込んで泣き叫ぶ田中に向かって黒川が声をかけた。
「私がチームのことを見るから、ルナ(田中の愛称)はゲームを引っ張って。頑張ろう」と。
田中はますます激しく泣いた。
二人の主将がお互いを支え合っていた。
新しいチーム改革のアイデアは自然に生まれたものだった。
田中は「去年のキャプテンが大変そうだったから、今年は負担を分担すべきだと思っていました」と述べる。
黒川も、田中がエースとしての責任を背負い込むことは良くないと考えていた。
他のメンバーも同様の考えを抱いていたようだ。
新しいチームが始まる際に行われたミーティングで、バスケ桜花学園初のダブルキャプテン制度はスムーズに受け入れられた。
二人のキャプテンは同じ役割を果たすわけではなく、田中は試合でのリーダーシップを担う「ゲームキャプテン」であり、黒川は練習やチームの土台作りを担う「チームキャプテン」である。
黒川心音はチームの司令塔として役割を果たす。
黒川は言う。「自分が気づかないことを真っ先に指摘する。驚くべき能力だと思います」と。
田中も黒川のリーダーシップを賞賛し、「黒川がチームのことをほとんどやってくれるので、私はプレーに集中できるようになりました」と述べた。
一方の田中は、黒川が言うように「ぼーっとしていて何を考えているかわからない」キャラクターだが、試合に入ると一変する。黒川も笑って言う。
「普段はボケっとしているけれど、プレーではチームを引っ張ってくれるし、雰囲気が悪い時は周りに声をかけてくれる。彼女には全幅の信頼を寄せているよ」と、田中への信頼を表している。
昨年、桜花学園はインターハイとウインターカップの両方で3回戦敗退に終わった。
常に日本一を目指すチームにとって、屈辱的な成績だった。
それを受けて、部員たちは自分たちが欠けているものを話し合い、変わらなければならない点を明確にした。
2人のリーダーが特に注目したのは、チーム全体のコミュニケーションの活性化だった。
桜花学園の部員は全員が寮生活を送っており、ミーティングは重要な時間とされている。
今年は特に、学年を問わず意見を交換することに意識を向けている。
ミーティングは毎日の夕食後に行われる。
黒川と田中は練習での課題をすり合わせ、それを中心に意見を交換する。
時間は短めで、試合の映像を見るときでも20分程度だ。
「みんな他のこともやる時間があるので、課題を共有し、次の練習に向けて意見をまとめたら終わりです」と黒川は説明する。
短い時間でも、できるだけ多くの部員に発言の機会を与えるように心掛けている。
「全員が参加できない限り、本当のミーティングとは言えないからです」と黒川は語る。
最初の頃は黒川と田中が主に発言していたが、今では他の3年生や下級生たちも自分の考えを述べるようになったという。
この変化はプレーにも良い影響を与えつつある。
黒川は「コートの中でもコミュニケーションが増えたと感じます。下級生が『ここはどうすればいいですか?』と聞いてくれることも増えました」と語り、田中も「実戦の中で下級生が自分の意見を出すようになりましたし、練習中も全員が率直に意見を交換し、自由にプレーできるようになりました」と述べた。
ウインターカップは年度最後の大会であり、参加チームも最も多い大会とされる。高校バスケ界の頂点と位置づけられている。
他の強豪校はインターハイからウインターカップまでを一つのプロセスと捉えるが、桜花学園は異なる。
「ウインターカップに合わせるのではなく、まずインターハイで優勝することを目指しています」と黒川は語る。
田中も「インターハイもウインターカップも、どちらも絶対に日本一になるものだと思っています」と力強く語った。
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