雪組公演『愛の不時着』とドラマ『愛の不時着』の差分・補足と感想について(※ネタバレあり)
こんにちは。ありがたいことに先日雪組公演『愛の不時着』の観劇が叶い、池袋に不時着ならぬ「無事着」することができました。それに伴う、雪組版とドラマの共通点や改編についての個人的な備忘録です。
公演の予習として初めて16話完走したというレベルのにわかなのですが、ドラマがあんまりにおもしろかったので「ここ萌えたのにないのもったいない!」とか「ここ要素として入ってる!」とか、そういうところを整理したくて書きました。
ドラマは日本語吹き替え版視聴、舞台は初日と2日目マチネを観た段階でこれを書いています。が、とにかく長いです。当然のごとく舞台・ドラマともに結末までネタバレしています。
(追記:その後の観劇で気になったこと・思ったことを一部修正・追加しました)
未視聴者向けの補足も一応入れてみましたがわかりやすくはないと思うのでそういう部分は他の方の記事等で補っていただければ…。舞台も記憶を頼りに書いているのであやふやな部分が多々あります。
一応ドラマだと何話にあたるかも書いたつもりですが変なところや抜け漏れがあったら教えてください。
【参考】雪組の上演時間
1幕75分・休憩30分・2幕75分
1幕…1話~9話
2幕…10話~16話
まず印象として、大幅なカットはしているけれど変なオリジナル要素や改編を極力せずに構成したという印象で、上手につなげているなと思いました。ただ初見の人が話の細部を理解できたのか、と思うと微妙な点は非常に多いのではと感じましたが…どうでしたか?
あのおよそ80分×16話(最終回は120分)を2時間半にまとめて、しかもフィナーレまでつけると聞いて戦々恐々としていたのですが、結果としてはどうにかまとめているのではないでしょうか。しかも駆け足のなかでも「ここは存分にときめいてください!」と言わんばかりにロマンス満点のシーンにはしっかり尺を取っているこだわりを感じる脚本。韓国版のミュージカルについては未視聴ですが、ベースになっているはずなのでもともとの場面選択がうまいのかもしれません。
それでは、本編について。タイトル、曲名(『』)などはプログラム準拠です。
【第1幕】
第1場 プロローグ(スイスの船着き場)
『兄のための歌』
幕開きピアノ演奏をするリ・ジョンヒョク(朝美絢)の後ろ姿からスタート、時系列的には7年前のスイス。
湖畔の水上デッキのピアノがうまくセットになっていて良いですね。スイスまで来て安楽死を依頼しようとするも適合せず断られたユン・セリ(夢白あや)がジョンヒョクの演奏を聴いてもう一度生きてみようと思いなおし、感謝のメモを渡します。
ジョンヒョクはもともとピアニスト志望で奨学金をもらってスイスに来ていましたが、兄が事故死したことで軍人になる道を選ばざるを得ず、最後に帰国する直前に最後に演奏したのが兄のために作った冒頭の曲…という流れ。
ドラマだとセリが実際に湖畔から聞こえる演奏に心を奪われずっと曲を覚えていたのは同じですが、これだけが死を思いとどまらせるきっかけになったわけではなく、橋の上で飛び降りようとレコーダーに遺書を吹き込んでいるセリにジョンヒョクが写真撮影を頼み、結果的に自殺を止めていたというエピソードになっています。ちなみに詳細は後述しますが、この時ジョンヒョクは婚約者のソ・ダン(華純沙那)とスイスに来ていたため、既に3人はここで出会っているという設定です。
第2場 不時着の縁
『風が吹けば』
本編プロローグにあたる部分で、人物紹介、状況説明が中心です。内容に改変はほぼなし。ざっくり人物紹介。
一族の後継者に指名され、ユン・セヒョン(桜路薫)から降りるよう言われるユン・セリ。スポーツウェアのテストのためにパラグライダーで飛ぶ。
必ずジョンヒョクを引きずり下ろすと誓う保衛部(公安的組織)少佐のチョ・チョルガン(諏訪さき)。
母親(美影くらら)に「いい加減遊んでないで帰国してジョンヒョク大尉と結婚して」と言われるダン。ちなみに、ダンはチェリストとしてロシアに留学をしており、数年ぶりに帰国してきたところ。
セヒョンへの詐欺行為で追われる身となり北朝鮮に身を隠すためチョン社長(藤影ゆら)と契約するク・スンジュン(瀬央ゆりや)。
ほぼ登場人物総出演、この各々の状況説明と場面はドラマとほぼ大差なし。
余談ですが冒頭、上下ジャケットでコートの朝美さんが舞台奥で軍服に着替えている姿が見えるので暗がりに目をこらしました。
あとはセリと広報チーム長(ホンさん・和奏樹)とのやり取りはほぼドラマそのままで、この和奏くんの再限度はつい目を引かれました。
『偶然のような運命(不思議な縁)』
★10cm(シプセンチ)「偶然のような運命(But it’s Destiny)」:ドラマ挿入歌
木々の映像を背景に歌うジョンヒョク。この曲はドラマでも何度も流れる曲で、リプライズでも使われます。フィナーレのデュエットダンスで朝美さん(とカゲソロ・愛すみれさん)が歌っているのはこの「不思議な縁」のバージョンと思われます。
第3場 軍官社宅村〜非武装地帯〜軍官社宅村
『私達のジョンヒョクさん』
キムチの皆様(稽古場レポ等)こと社宅村の奥様方が出てきます。
ジョンヒョクが2ヶ月の前哨地勤務を終えて戻ってくること、彼の家の食料を奥様方が特別にばっちり準備していることを説明しています。
ドラマではヒョン・ミョンスン(琴峰紗あら)が「なぜ、リ中隊長だけ特別に用意するんですか?」みたいなことを聞いて「顔が他と違う」「天然記念物を保護するような感覚」ということを他の奥様が答えるところがありますがその部分が歌詞になっています。ドラマでもジョンヒョクはイケメンポジです。
早朝の律動体操はドラマ通りで、個人的に村の子供たちの「どこまで行くの どこから来たの」という謎の行進曲を唱えながら登校するのがやけに印象に残っていたのであの子たちがいてにっこりしました。
そして森の中での出会い。ドラマだとセリは木の上にパラシュートが引っかかっていて、降りる時に落っこちてきたセリをジョンヒョクが抱きとめるシーンがあるのですが…さすがに難しかったか。
住所を聞かれ途中までしか答えないセリ、自分は地雷のエキスパートだと言いながら地雷を踏んでしまうジョンヒョク、ここのちょっと笑えるニュアンスはドラマのままだと思います。
第5中隊の、飲酒しているピョ・チス(真那春人)と南のドラマを見ているキム・ジュモク(紀城ゆりや)、母からの手紙でホームシックになっているクム・ウンドン(苑利香輝)もドラマとは若干時系列が違いますがほぼそのまま。パク・グァンボム(壮海はるま)の地雷解体が雑なのは笑いました。
セリが偶然迷い込むのが体操の最中で、村を彷徨ううちにチョルガンの見回りに見つかりそうになり、ジョンヒョクの家に引き込まれる。今はジョンヒョクを利用するしかないと目をぱちぱちしながら見つめるシーンもそのままです。
あの壁ドンはドラマ通りっちゃドラマ通りなんですけど、A-ENをつい意識するのは意図的なような…どうですか中村先生?
ちなみに、ドラマではここまでが第1話です。
第4場 リ・ジョンヒョクの家
第2話。ジョンヒョクの家でのやりとり。
「ごはんありますか」とセリに聞かれたジョンヒョクが戸惑いながらもごはんを出してあげているシーン、舞台では魔法みたいに棚からごはんが出てきますがドラマだと麺からなにから手作りで作って出してくれます。あれは「ククス」という麵料理だそう。
この後の第5中隊員と「ばらされたくなければ帰還を手伝って」という取引を持ち掛けるのもドラマ通りです。
緊急の時以外は連絡をしてくるな、というジョンヒョクに対して「シャンプーとボディソープは?」「アロマキャンドルは?」「お湯が出ないの」とリクエストを言うセリ。
ジョンヒョクも最初は仕事をしつつ答えていましたが最後には仕事の手を止めて机をこんこん叩きながら電話が鳴るのをイライラしながら待っていました。かわいい。
このあと停電した自宅でセリに買ってきたロウソクを渡すという、アロマキャンドルとロウソクの違いがわからないジョンヒョクの場面がありますが、ちなみにドラマだとジョンヒョクが持っているバッグにはセリがあれこれ言ったシャンプーやらボディーソープやらが入っていて、実は律義に市場で生活用品一式を買っているという場面があります。女性ものだからよくわからず、照れつつ戸惑いつつ買うシーン、良いです。
あとは「もう誰も見ていませんよ」と懐中電灯を消す場面はドラマだと買ってきたロウソクの火でやっているのですが、ニュアンスを損なっていないいい改変だと思いました。
第5場 コッチェビロ テオナ(浮浪児として生まれて)
『コッチェビに生まれて』
チョルガンのナンバー。生い立ちと自分の野望について歌います。内容もドラマ通り。
軍事部長(稀羽りんと)と取引をしていることがジョンヒョクに勘付かれたためにしばらく取引をやめ、一気に仕留めようとする流れと、スンジュンを北で秘匿するビジネスは実はチョルガンがやっている事業だということが描かれています。
「俺は軍服を着た商人だ」というチョルガンの台詞が好きだったのでそのまま使われていて嬉しい。コミカルになりがちな1幕のなかでチョルガンが場を締めてくれているからこそ北の厳しい雰囲気が伝わります。
第6場 リ・ジョンヒョクの家〜チョ・チョルガンと耳野郎〜リ・ジョンヒョクの家〜リターン作戦
第2~3話。北朝鮮には夜間(午前2~3時頃)に家を訪問して怪しいもの・人がないかチェックする「宿泊検閲」があり、それを取り仕切っているのが人民班長のウォルスク(杏野このみ)。これが意外とがばがばで賄賂を渡せばなんとかなるというシステムで…南の炊飯機に目をつぶるのもジョンヒョクの家の前でわざわざ口紅を塗りなおすのもドラマの通りです。笑
その後の婚約者のくだりで、「婚約者は疲れています」と言われたセリがわざとらしくしなだれかかってこめかみを押さえるのとかドラマのままでニヤニヤしましたが、家の裏で頭を思いっきりぶん投げるのは宝塚版の方がおもいっきりがよくて笑いました。
家の前であれこれ好き勝手なことを言う奥様方のシーンでセリが食べているのはおこげに砂糖をかけたものと思われ、ドラマにも出ています。あそこで出てくる「たんぱ」は「誕パ」ですね。伝わるとは思いますが…。あと、「なんですかあのぼさぼさ髪!」「お化けかと思いました」のあとセリが髪の毛を布で結わいて出てきますがあれはドラマではジョンヒョクが結んでいます。キャー!
『リターン作戦』
リターン作戦は、おそらくドラマで帰る方法を第5中隊皆で相談するシーンからきていると思われます。
このうち空路を実際にセリが試みるシーンがドラマでは第4話にあり、パラシュートで飛ぼうとしたところ軍にバレてしまい、追ってきたジョンヒョクに抱きかかえられながらパラシュートで降りるのですが、めちゃくちゃときめきます。よろしければぜひドラマでご覧ください。
第7条 帰還作戦 密漁船
第3話。ほぼそのまま。
ちなみに、船倉でジョンヒョクとセリがどうしよう…としている上で船長(海咲圭)が会場巡視隊員(霧乃あさと)に賄賂の電話カードを渡してどうにか場をおさめようとするも霧乃くんがすげなく断るというのがドラマにもあるやりとりで「あ!」とニコニコしました。また、密漁船に乗るための電話カードがちゃんと2枚になっているのも芸が細かい…!海咲船長の船はあくまで中国行きの船に案内してくれるだけでそれ自体が国外行きではないのですが、ジョンヒョクが「彼女が(中国行きの船に)移るまで見届ける」と言ったら電話カードは人数分だ、と言われるシーンを拾っていると思われます。
あのジョンヒョクの「どうしよう…」の無策感と、ジュモクから聞いたキス作戦を本当に本人が至極真面目にやっているのが良い。ドラマより朝美さんの方が恋人のふりがへったくそ(腕さわさわ…)なのもかわいいです。
第8場 韓国ソウル〜北朝鮮〜軍官社宅村
父親に電話するセヒョン。いい加減セリは死んだと認めて後継者について考え直してほしいと迫るも切られてしまい、「セリのことばかり…」と悔し気に電話を切ります。他の家族が一切舞台には出てこない分、ユン家のドロドロした部分を一手に引き受けるセヒョンはやりづらいだろうなと思いつつそこはさすがの桜路くん。
『内助の女王』
第4話。マ・ヨンエ(愛すみれ)の誕生日祝賀会。彼女は大佐の妻なので取り入ればジョンヒョクを昇進させられるかもしれないと考え、誕生日祝賀会に出向きます。誕パのくだりもほぼそのままです。セリが名乗る偽名の「チェ・サムスク」は、少しわかりづらいですが上手側の棚に乗っているレコードの歌手の名前です。
ミュージカルナイズされていていいですね。市場の、第9場のくだりにつなげる場面転換に無駄がなくてうまいなあと思いました。
ちなみに、ドラマではセリが心配で、たまたま通りかかったふりをするために何度もヨンエの家の前を自転車で往復するジョンヒョクがいます。かわいい…。
第9場 野外市場 夕暮れ時
『ただの光』
南町(韓国)製品をこっそり取り扱っているお店にセリの製品があるというくだりはドラマ通りです。スリムフィットテクノロジーで…ってドラマでも言ってたような(うろ覚え)。
そして!!!!キャンドルのシーン!!!
ドラマではセリは昔母親と一緒に海に行き、そのまま母親に置き去りにされたという過去がありその部分が原作では何度もフラッシュバックしてパニックになります。
そこにジョンヒョクがアロマキャンドルを持って探しにくるという…。あれは探しにきた市場で偶然みつけて、目印になるようにとその場で買っているんですがアロマキャンドルとろうそくの見分けがつくようになったジョンヒョクとか、あとセリが「あれがないと気持ちが落ち着かない」と言っていたことから気持ちが落ち着くように…という意図があるのかもと思ったらときめきます。この場面を朝美さんが好きだと言ったら中村先生が入れてくれたそうです。ありがたい。
第10場 平壌ホテル
『全て元通りに(今新たな始まり)』
第5~6話。平壌ホテルでの4人の鉢合わせ。この流れはおおむね改編なしです。実は市場キャンドルの帰りにジョンヒョク・セリ・ダンは既に一度鉢合わせ、ダンが婚約者だと明かされているのですがホテルでの鉢合わせの一回に集約されています。
平壌に行くまでも、列車で移動中に停電が起き、復旧までの十数時間車外で一夜を明かすというシーンがあるのですが、ここの焚火のシーンはプログラムの写真に載っています。
また、スンジュンとダンはホテルまでも実は何回か偶然会っているのですがここで初対面になっています。
ドラマでは、セリと一緒に行った写真館で、セリが「記念に一緒に撮ろう」と言うのを何の意味もないと断っておきながらセリの顔写真を余分に一枚もらおうとするジョンヒョクというシーンがあります。
また、セリにとっさに「ボディガード」と言われて怒る(拗ねる)ジョンヒョクですがドラマでは雪崩れてくる荷物やぶつかりそうになる客や転がってきた子どものボールから完璧にセリを守り「いややってることマジのボディガードやんけ…」と思わずつっこみたくなる場面があります。
あとはドラマだとチョン社長たちに裏切られたスンジュンが、セヒョンの寄越した手下にボコボコされる場面もあり…それもちょっと見たかったのですが当然カットされていました。少し残念。第12場の電話の場面が、そこでの会話に近いものがあります。
第11場 平壌の夜景の見える公園
『偶然のような運命』
第5~6話。第10場から引き続き、ホテルと初雪の場面。食事のシーンなどがばっさりカットされているのですが初雪を見るというシチュエーションはそのまま。挿入歌を4人で歌うの、いいですよね。
第12場 ク・スンジュン ユン・セヒョン チョ・チョルガン
おおむね原作通りですが話されている場面が微妙に違います。セリが北にいるとセヒョンに教えるスンジュン、セリを北から出すなと命じるセヒョン、それをチョルガンに依頼し、チョルガンが思惑が同じだから乗ろうと言うシーン。
第13場 リ・ジョンヒョクの家
『あの人に絶対知られないように』
第6話。別れの場面。このあたりはかなり原作から改変され、複数エピソードが抜粋され一つになっています。
最初の帰還時(渡し船チャレンジ・第3話)の際、皆に表彰式と贈り物をする場面があるのが、今回の二度目(選手団潜入・第6話)の別れ場面に差し替えられています。ドラマでは二度目の別れの際は皆でキャンプをします。
ドラマの表彰式でなかなか賞がもらえずむずむずもやもやするジョンヒョクがかわいいのですが、舞台ではプレゼント(手袋やマフラー)をもらえずむずむずしていて…この描写を残してくれて大変な感謝です。
ちなみにトマトの苗はドラマの通りですが、実はジョンヒョクはトマトが苦手です。苦手なトマトをセリの言うまま育て、毎日10個きれいな言葉をかけている律義さ、ぽろっと出る「初雪」「ユン・セリ」…。ドラマでは「ピアノ」「初雪」止まりで「ユン・セリ」は舞台オリジナルなんですよね…!気持ちの揺らぎを描くシーンがどうしてもカットされてしまうぶん、凝縮されるのはすごく良いと思います。
第14場 軍官社宅村の外
『二人だけの世界に行く』
★CRUSH 「二人だけの世界へ(Let Us Go)」:ドラマ挿入歌
ジョンヒョク、スンジュン、ダンのくだり。ジョンヒョクとダンの会話は7話、ここも原作抜粋ですね。内容はおおむね原作通りです。
第15場 リ・チュンニョルとチョ・チョルガン
チョルガンとジョンヒョクの父(チュンニョル・奏乃はると)の会話は第9話にあるのですが、ここまでで6~9話にまたがるエピソードがカットされています。
「飛行機に乗るはずがなぜ非武装地帯に?」という疑問についてもこれに関連しており、実は飛行機に向かうはずが道中チョルガンの手下に妨害され、危うく命を落としかけたところをジョンヒョクが助けます(第6話・ここのジョンヒョクが本当にかっこいいのでぜひ見て頂きたいのですが…)しかしジョンヒョクはセリを守るのと引き換えに撃たれ瀕死の状態になり、それを見過ごせなかったセリは飛行機に乗らず、ジョンヒョクの病院に付き添い、命を救います。
その後もスンジュンがセリとジョンヒョクを引き裂こうとセリにプロポーズする話(第8話)や、セリがジョンヒョクの親に屋敷に閉じ込められ、ジョンヒョクが親を説得する話(第9話)がありますが割愛されています。
この場面でチョルガンがジョンヒョクの父と話しているのは、場所に勘付いたチョルガンが家宅捜索に来たためです。ジョンヒョクは既に入れ違いで非武装地帯にセリを連れて逃れており、そこから第16場の場面につながる…という流れがあります。
第16場 非武装地帯
『もう一歩だけ〜あなたを見つけられるように』
第9話。チョルガンの手が及ぶ一歩前に非武装地帯へ入り、セリを送り届ける場面。ラストの流れはドラマの通りです。
お土産としてセリが手にしているのはエーデルワイスの花と思われ、原作では最終話に出てきます。2幕のセリの家のシーンのデスクに似たような鉢植えがあるのですがこの時のエーデルワイスでしょうか…?もし違っていたらすみません。
ドラマでは、本当は夜目もきき方向感覚も優れているジョンヒョクが何度も道に迷ったふりをして別れを引き延ばそうとします。本当にあんたって人は……。
セリが中隊員に指ハートをしているときが多いと思うのですが、ポケットからものを出すふりをして指ハートをしているというシーンを拾ってきていると思われます。北にはない習慣で、この指ハートに込められた意味をいろいろ勘ぐって悶々とするジョンヒョクおよび中隊員というかわいい展開があります。
また、見送りの場面でセリとジュモクがよく指切りをしている(私が観た回だけかもしれませんが…)のは、第6話の表彰式の流れで「南北統一したら彼がファンであるチェ・ジウと会食の場を設ける」という約束をしていると思われます。(ちなみに、南へ来たときに本当にセリがお礼として実現させています。第13話)
「送ってよ」「ここは越えられない」からの抱き寄せはドラマだとジョンヒョクが「一歩くらいはいいだろう」と言って一歩、軍事境界線を踏み越え、キスをするたいへんドラマティックなシーンになっていますが舞台だとわかりにくいのか軍事境界線の手前で引き留めているように見えました。ここでカゲソロ(絢斗しおん・白綺華)が入るのがドラマの再現のようでこれはこれで良き。
セリを見送ったところで、第1幕終了。
【第2幕】
第1場 朝鮮人民軍裁判所
第10話。基本ドラマ通りです。マンボクはずっとチョルガンに従わされていたのですが、このままではいけないとジョンヒョクに罪を告白し、それをきっかけにチョルガンは裁判にかけられます。
ドラマではマンボクと兄との詳細なエピソードや、盗聴を仕事にしている(「耳野郎」である)が故に子どもがいじめられていたり、ジョンヒョクの兄の殺害を手助けしておきながら家に帰れば守るべき家族がいるという板挟み、チョルガンに家族をダシに脅迫されるなどマンボクのつらい心境が結構な尺で描かれています。アンナチュラル4話かと思いました。これを見るとよりマンボクさんが好きになれると思うのでぜひ。
あと、裁判所でジョンヒョクに食って掛かったチョルガンが軍人たちにボコボコにされるシーンがあるのですがその場面が無かったのも個人的には残念でした。
第2場 軍事境界線 ジョンヒョク、南へ
第10話。このままでは終わるまいと護送中に逃げたチョルガンを追ってジョンヒョクも南へ行くシーン。ドラマでは、廃坑からつながる全長10キロにもなるトンネルを匍匐前進で20時間、しかも不眠不休で進み続けるという大変ハードなシーンなのですが、宝塚の手にかかればこれほどまでにドラマティックなダンス表現になるのかと驚きました。
第3場 韓国ソウル 記者会見場(クィーンズ・グループの事務所)
『ファッションの女王』
第10話。ドラマのセリの死亡届を出したという会見と帰還後セリズチョイス初出社のシーンが一緒になっていますが、内容はおおむねドラマの通りです。
献花代の遺影に「誰、この写真選んだの?」と文句をつけるところも半額セールもドラマ通りです。ちなみにセリズチョイスは創業以来値下げを一切行っていなかったので今回が初のセールというセリフがありますが舞台だと少々唐突のような…。「広めてちょうだい」とその場にいた社員や一般の人によびかけ、SNSで話題になり家族たちもセリの帰還を知るといった流れです。舞台では記者会見場をシーンにしたことでセリの帰還が一気に広まる描写に無理がなくて良いですね。
広報チーム長のホンはセリを見ると蕁麻疹が出るというストレス体質なのですが、突如現れたセリを見て蕁麻疹が出ているのに気付き「本物だ…」という仕草を和奏くんもしています。
第4場 ソウルの街
『もう一歩だけ(再会)』
第10話。ドラマとほぼ同じ。最初に会った時に住所を最後まで言わなかったのが効いているのが好きです。
第5場 軍官社宅村〜平壌市内~ソ・ダンの家
『恋愛とはこうするもの』
第10話のセリが残した置手紙で真実を知る奥様たちと、第11話のラーメンからぐっと二人の距離が縮まる場面。
ドラマでは、ジョンヒョクとダンは確かに親の決めた政略結婚ではありましたが、実は婚約が決まる前から同じ中学に通っていて、ジョンヒョクはダンの初恋の人。婚約が決まったときは本当にうれしく、わざわざジョンヒョクの留学しているスイスまで会いに行ったのですが、ジョンヒョクは一切ダンのことを覚えておらず「初めまして」と言い放ちます(涙…)。この時の気まずいデートで、ふたりはセリに出会っています。(第9話)
ダンとスンジュンの距離が縮まっていく過程もほぼそのままです。
ダンがスンジュンを招いている家は平壌の実家ではなく社宅村の高級マンションにある、ジョンヒョクと結婚して住む予定の新居です。(「この部屋にあがる最初の男が僕になるなんて…」というくだりがドラマにあります)無断で連れてきているので、「痕跡は一切残さないで。息だけして出ていくのよ」となるわけです。
ラーメンのあと、ダンのことが気になって気になって仕方がなくなるスンジュンはかわいくておもしろいので原作を見てむひむひすることをおすすめします。
あと酔いつぶれたダンが突然起き上がって「泊まっていけ~~!」というたいへんかわいらしいところもドラマにもあり、酔いつぶれたダンをスンジュンが実家までおぶって送った(2キロも歩いたそう)ときにうわごとみたいに言っていたセリフです。酔っ払ってるダン、かわいい。
第6場 リ・ジョンヒョク’sリターン~北朝鮮〜韓国ソウルへ
『リ・ジョンヒョク’sリターン』
ジョンヒョクの父親に呼び出され、南へ向かう第5中隊+マンボク(第10話~第11話)。彼らの韓国珍道中はかなりコミカルで面白いけれどこのあたりのエピソードは大筋には関係のないところが大きいのでばっさりカット。第5中隊に愛着がわきます。個人的にはグァンボムが道に立っているだけで芸能事務所のスカウトから山ほど名刺をもらっていたところが好きです。
セリズチョイスのインテリア展示場で再会するのもそのまま。ここでお披露目されるジョンヒョクさんのスーツ+ロングコートですが、ドラマではブラックカード持ちのセリが「ジョンヒョクへのお礼」としてデパートでプレゼントしたものです。舞台でも、展示場のシーンで「よく似合ってる」というようなことをセリがジョンヒョクのコートに触れながら言っているようなマイムを見たのでその描写を拾ったのかな…?
ドラマではデパートの出口でジョンヒョクが親切でドアを押さえていてあげるのが親切かつイケメンだと動画で拡散され「顔天才」と褒められるシーンがあります。
第7場 ソウル セリの家〜夜景
『小さな光』
セリの自室にあるレコーダーを聞いて、自分たちはスイスで出会っていたことを知るというシーン。
ドラマでは、ジョンヒョクの家にセリが閉じ込められた夜に既にピアノの演奏者がジョンヒョクだったことを知っています。レコーダーには、舞台とは違いスイスでセリが飛び降りる直前に残したラストメッセージ(遺書)がレコーダーに入っていて、それを聞いたジョンヒョクがあの日写真を頼んだのが自殺する寸前のセリだったことを知るという流れです。さらにそれがセリの誕生日当日ということもあり、それを踏まえての「僕の愛する人が生きていてくれてありがとう」のバックハグになるので、流れとしては同じですが意味合いが少し違います。ひとつのシーンとして問題なく成立していますが原作を見るとよりときめくかな…といった感じです。
マンボクがチョルガンらしき男を見た、というところはドラマではチョルガンが明確にマンボクに接触を試み、セリたちの動向を逐一伝えろ、と再び内偵行為を強いて脅しています。
第8場 北朝鮮の夕焼け
『夕焼け』
★DAVICHI(ダビチ) 「夕焼け(Sunset)」:ドラマ挿入歌
セヒョンに追われる身となり、北朝鮮から去ることにしたスンジュン。第15話。舞台では中村先生のこだわりで夕焼けの場面になっていますが、ドラマではこのやり取りをするのはジョンヒョクの家です。ジョンヒョクの家へ逃げ込んだスンジュンと、スンジュンを探しにきたダンが再会するシーン。
「もう一度チャンスをくれ」という場面、ドラマだとスンジュンはダンに指輪を贈っています。前後しますが舞台のラストシーンでダンはスンジュンのトランクを持って出てきますが、ドラマだとそれにあたるものがスンジュンからもらった指輪です。
第9場 空港~銃撃戦
ダンと別れて飛行機に乗ろうとしたところ、ダンを人質にとられたスンジュン。口で航空券を破くのはドラマ通り、その後の「趣味はクレー射撃なんだ」と銃撃戦になるところもそのままです。最後の「あれは結局どっちだったの」というのはドラマでは搬送中の救急車になるのですが、最後事切れたスンジュンを見て「この人を助けてください、寂しい人なんです」と医者に訴えるダンに泣けました。
第10場 最後の勝負 ソウルの暗い倉庫
『最後の手段〜コッチェビに生まれて』
ドラマでは第13話~第14話の二度にわたるチョルガンとの決着が一回にまとめられています。チョルガンに撃たれそうになったジョンヒョクをかばってセリが撃たれるのは同じですが、この段階ではチョルガンは深手を負うのみでまだ生きており、ジョンヒョクたちも国家情報院にも逮捕されていません。搬送・入院したセリをジョンヒョクが甲斐甲斐しく看病するシーンはときめきポイントで、第6話の対比ともなっているのですが全てカットされています。
その後、ジョンヒョクはチョルガンを探し出し一騎打ちとなりますが、その場に突入してきた国家情報院にチョルガンは殺害、ジョンヒョクたちは身柄を拘束、という流れになります。(第14話)
第11場 南に派遣されたスパイ
『君は僕に』
ドラマ第15話。セリは本調子でないのにもかかわらずジョンヒョクのために証言に来て、このあと舞台と同様に敗血症になり生死の境を彷徨います。
「僕の人生を棒に振るよりも君の前にいる方がつらい」というセリフが原作だと「僕の人生を棒に振るよりも今の君を見ている方がつらい」なのは微妙にニュアンスが違うのではないかと思うのですが…どうでしょうか。でもあの本心とは裏腹なことをセリのためを思って言うジョンヒョクには泣けて仕方がないです。
第12場 捕虜交換式
『もう一歩だけ(別れ)〜あなたを見つけられるように』
第16話。ほぼ原作通り。ドラマでは敗血症で倒れたセリは一時生死の境をさまようほどの状態で、そんな中でもジョンヒョクは飲まず食わずでセリが目が覚めるまでずっと集中治療室のガラス窓の向こうから見つめ続けていました。
目を覚ましたセリが1週間後、今日これから捕虜交換でジョンヒョクが北へ帰ると聞かされると「行かない。別れは何度もしているし、今の私を見たら余計ジョンヒョクさんは辛くなる、ましてや危篤だったなんて知られたら…」と断りますが、自分が目覚めるまでずっとジョンヒョクがそばにいたことを知り、最後にひと目見ようと車をかっ飛ばして交換式の場所まで向かいます。キム課長(絢斗しおん)が「5分早いですが定刻まで待ちましょう」と提案したのはこれによりセリを待っていたから。舞台では出番が少ないのですがキム課長は結構情の厚い、良い人です。
交換式の配置がドラマのままでびっくりしました。セリとジョンヒョクの会話の内容は微妙にドラマとは違うところもあり、ドラマにはない「僕は君に感謝しかない。君は僕の人生に贈り物のように来てくれた」という舞台オリジナルのセリフが本当に素敵です。
第13場 風が過ぎるあの場所
皆のその後。化粧品のくだりもドラマにあり、中隊の皆が南へ思いを馳せるもそのままです。ここで出てくる「チメク」は「チキンとビール」の頭文字を取った略称。ドラマではみなで何度もチキンを食べていました。
ダンはその後チェロ奏者として世界で活躍する演奏家になり、ドラマではチェロケースを背負ったダンの左手の薬指に光る指輪、というところで終わりますが、舞台ではスンジュンのトランクがその代わりと思われます。ドラマではスンジュンの死の「復讐がしたい」とチョン社長を見つけ出し、セヒョンの悪事を全て明るみに出しセリへ送るよう指示、セリが国家情報院に通報し、セヒョンたちが逮捕される、という流れがありました。ダンはスンジュンとの恋を生涯最後の恋とし、ひとりで歩いていくことを決意するのです。
第14場 スイスの船着き場
『もう一歩だけ(永遠に)〜あなたを見つけられるように』
その後のふたりのたどった道などはドラマと同じです。
なぜスイスか、というところは、ドラマで北へ帰る前にキム課長の手を借り、ジョンヒョクはセリに「いつかエーデルワイスの咲く国で会おう」というメッセージを残していました。その言葉を信じセリはスイスで若手音楽家を育成する奨学財団の設立を進めます。
舞台とドラマではまた違った形の再会を果たすのですが、そちらも大変ロマンティックなので、結末はぜひドラマでご覧ください。
第15場 フィナーレ
宝塚おなじみのフィナーレ。場面・曲のアレンジは『兄のための歌』~『私達のジョンヒョクさん』(瀬央さん中心・娘役)~『リターン作戦』(男役群舞)~『内助の女王(ファッションの女王)』(諏訪さん中心)~『偶然のような運命』(デュエットダンス)の流れだと思います。
最後のデュエットダンスにて、朝美さんと夢白さんがゴールドの指輪を左手の薬指にされています。衣装からみてもジョンヒョクとセリの延長上にあると思われ、ドラマでもジョンヒョクがセリにゴールドのペアリングを贈っている(第13話)のでそれをモチーフとして着用されていると推測されます。
(追記:12月11日のタカラヅカニュース内・突撃レポートでこちらのお話をされており、やはりジョンヒョクとセリのペアリングを意識しておられたそう…!舞台にくるタイミングで朝美さんから夢白さんにプレゼントされたそうです。わかる人にわかれば…と朝美さんは仰ってましたが伝わりましたよ!!!万歳!!!)
第16場 パレード
役ごとのポーズや関係性での一瞬の絡みが見られるのが大変楽しいです。最後朝美さんの礼のあとコーラスが入るタイミングでは第5中隊・村の奥様方などグループに分かれているのでそれを見るのも楽しく、目が足りなくてよいです。順番的にダン→スンジュンで礼をするのですがダンがスンジュンを待って、スンジュンがエスコートする流れがとても好きです。待つのが嫌いなダンが…(涙)。
最後、ジョンヒョクの広げた腕にセリが飛び込んで2組のカップルが中心になって終わるのも好き。みんな幸せであれ…。
以上。ざっくり補足とざっくり解説(という名の萌えシーン語り)。長々と失礼いたしました。
ここわかりづらいだろうな、というところや、このシーンときめいたのになぜないの!!!みたいな感情がひたすら弾けていたのでわーっと書きなぐりながら吐き出せてよかったです。
今後観劇のタイミングでまた変化があったら随時書き足す予定です。
間違いなどありましたらそっとご指摘いただけますと嬉しいです。
公演が、梅田の千秋楽の日に「みなで無事着」できますように…!