カレーをすする人たち
食事のマナーって、あんまり気にしていないけど、自分ではそんなに悪くないと自負していた。小さい頃は食事中のマナーにうるさい親だったから、親から受け継いだマナーを身に着けていると信じていた。小さい頃は食事だけではなく、生活においても色々と厳しく躾をされた記憶がある。
なのに中学生になった頃から急に厳しく無くなった。今思えばこの頃から、親は子供の躾に飽きたのかもしれないぞと思えてくる。思春期で尖っていたし反抗期だし…これは私も親になってみてわかったことがあって。「言うのに飽きる」ってのがある。
よって中途半端にマナーができていて、できていない。知ってそうで知らない。
マナーOKと自負していた割に、人と食事をする機会で、失態や知らなかった所作があり、恥ずかしい思いを何度もした。
今となって改めて見た両親の食事風景は、お世辞にもマナーがいいとは言えない。じゃあなんであんなに昔は、子供の私の食事の仕方にうるさかったのだろうな。(厳しい躾は親の努めとでも考えていたのかしら)
父親は「いただきます」「ごちそうさま」が言えない。(おはよう、おやすみ、も家族には一切言わない)すべて「ん」の一言で済ませている。昭和のオヤジでも気取っているのだろうか。テーブルにおかずが並びだすと、自分ひとりでおかずを肴に晩酌をしだす。大皿に出したおかずも人数配分考えず、食べたいだけ食べる。それを50年以上許してきている母親にもむかつく。
母親は食べながら喋るので、咀嚼できなかったものが器官に入り咽るか、テーブルにこぼす。すごく自分ではお上品に振る舞っているつもりだろうが、なんか滑稽。上っ面をお上品に振る舞っても、食べ急ぐがっつく感じは否めない。そして「食う」という言葉を使うのもたまらなく嫌い。「あんたりんご食う?」と言ってきたら必ず「食べるわ」とさりげなく言い換えて答えているが、気付きはしない。
高齢者だからじゃない?という意見もあるかもしれないが、違う。これは若い頃からだ。しかし、高齢となってしまったので、今更注意もできないし、というか、その辺の話に触れたくない。高齢者だから、今更マナーなんてどうでもいいと考えているだろうし、ストレスなく好きなように食べて余生を送ればいいとは思う。
ただ、私はなんだかストレス。
一緒に食事をしていて一番のストレスが、カレー。
父も母も、カレーをすする。ずるずると音を立てて。カレーだけじゃない、ああいうとろみのある食べ物(飲み物という説もありますが)はすべてすする。音が果てしなく嫌。耳栓をしたいくらい。でも本人たちには言えない。
私は、わざとらしく、まるでカレーのCMさながら口を大きく開けてスプーンの根元が唇にあたるように食べているのだが、一向に気付かない。カレーを食べても音が出ていない娘の様子を見て気付いてほしいという思いは、毎回空しく終わってゆく。
なんだかんだ言わずに美味しく食べればいいんだよ、それに越したことはないのだけどね、たぶん、こういうのが気になるのも更年期のせいだ(笑)イライラ。
そして両親はカレーを、死ぬまですするんだろうな。
誤嚥性肺炎にならなきゃいいですわ。