性悪な私①
いつもの朝。
会社に到着し、まず向かうのはロッカールーム。
ここで制服に着替える。
ロッカールームに通じる廊下の奥の方から肥った体を揺らし、慌てて走って来る女がいる。
『体型を隠したいのです、ワタシ。』と言わんばかりの土管のようなワンピースを着ている。
普通に歩いている状態であれば体型は隠されているのだろうが、走っている風圧と汗でぶよぶよしたお肉や、くびれの全くない胴回りがくっきり露わになる。
惰性と怠慢の末出来上がった、だらしない身体をしている人間は男でも女でも大嫌いだ。
その女のワンピースの下にある贅肉の塊を想像してしまい、私は気持ち悪くなった。
風圧と汗でキモイ体のフォルムを見せんじゃねーよ!!と心の中で悪態をつく。
バタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタ
ロッカーの鍵がない!もう!
バタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタ
スペアキー借りなあかん!もう!!!
バタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタバタ
この汗だくの小汚い女は誰?
そいつが目の前を横切るまでわからなかったが、動作が雑な上に、ガサツな物言い、下品な雰囲気が出てるのでそれが誰なのか理解した。
私の嫌いな女、まるちゃんである。
語尾のもう!っていうのは常に怒った口調。
一体誰に怒っているんだか。
自分がカギを忘れたくせに、プリプリしながら事務所に走っていった。
朝っぱらからうるせえばばあだ。
その上この暑さだ、額から汗をたらたら流して、髪の毛は顔中にべったりくっついている。
バケツリレーでもしたの?
んーーーーこれは既視感、誰かに似てるんーーーーー。
これは。
井戸から出てきた貞子!!!である。
鍵がなくてロッカーが開かないっていう可哀想な目に合っているまるちゃん。
しかし私は全く同情もできず、焦って汗だくになっている様子が貞子に似てて、
ウケる~~~~~~ざまぁ~~~~~~
心の中で嘲笑う。
まるちゃんは、いつも所作が雑やねん。
お茶はこぼすし、コーヒーも人にぶっかけるし。(私ももれなく被害者の1人)他の人と取り分けるような食事をしている際皿ごと落して、全部わやにしてしまうことがよくある。
動作が荒いからか、物を無くしてしまうこともしばしば。
そして、その都度大騒ぎする。
ボールペンが無いだの、シャチハタのキャップを無くしただの、引き出しの鍵が無いだの、眉毛描いてくるの忘れただの。
そうやって、なくし物常習犯なんだから、もうちょっと自分自身で気を付けて生きていけば?と思うのだが、しない。
なくしたものも、いつかどこかで出てきているのでさほど凝りていないのだろう。
まるちゃんは、自分は完璧にそつなく何事もやってのけている、と思っているようである。(どっからくんねん、その自信と常々思ってる)
この後、さらに「ざまぁ~~~~~~」と思うことが起こるのだが、まるちゃんのことを書くのはとても疲れる。
こいつは対応するのも、思い出すのも体力いる相手だわ。
なので。
続く。