見出し画像

ちりちりしゅしゅしゅ

「まいにちオノマトペ」は、まいにちの暮らしに潜んでいるオノマトペを見つけ、オノマトペにまつわるエピソードを綴るエッセイ。
オノマトペとは、擬音語・擬態語。複数の感覚を写し取る言葉。
暮らしに潜むオノマトペを見つけてみませんか?

ちりちりしゅしゅしゅ

ついに、ついに手に入れた!!
念願のせいろを!

肉まんなど飲茶を蒸すのでおなじみ、「せいろ(蒸籠)」。
実は野菜やお肉を入れて蒸すと、料理が楽ちんだし、脂も落ちて健康にいいと聞いていた。
ストレスが溜まるとついつい激辛インスタントラーメンをゆで始めてしまう私だが、そのジャンキーさに惹かれているというよりも、「辛いものをひいひい言いながら食べる」というエンタメ性を求めて食べていることに気づいた。
それなら、「季節の野菜をせいろを使って蒸す」というエンタメ性を満たしてやれば、食べるものがヘルシーになったとしても満足するのではないか、と思ったのがせいろに手を出したきっかけである。

空蒸しもして、せいろの準備は万端。
残り物の野菜としなびたウィンナーを入れて、初めての「蒸し」。
せいろからはふんわりと独特の匂いがする。これが竹の匂いか、と発見。
そして、しばらくすると「チリチリ」と蒸気と鍋がぶつかる音が聞こえてきた。

料理をしているとき、五感が冴える感じがとても好きだ。
匂いや音を感じて、料理のできあがりを待つ時間は、肩の力が抜けるような、そんなほどけた時間。

しゅしゅしゅ・・・・・・と蒸気が噴き出す音に耳を澄ませていると、遠い記憶がよみがえってくる。
小学校のとき、「しゅらしゅしゅしゅ」という歌詞の合唱曲を歌った。
「ずいずいずっころばし」から始まって、Cメロあたりで「しゅらしゅしゅしゅ」になったような気がする。
「しゅらしゅしゅしゅ」をネットで検索すると、香川の民謡の歌詞らしい。
おそらくいくつかの民謡を組み合わせた、現代日本音楽だったのだろう。
しゅらしゅしゅしゅ~と声を潜めて歌うのが、なんだかおかしかった。

今日、なんでもない記憶が呼び覚まされたように、いつか「しゅしゅしゅ」という音を聞いて、初めてせいろを使ってドキドキしたこの日を思い出すのだろうか。
そんな未来が楽しみだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?