できるようになるまでの、できないの時間
・子どもが自分で遊び方を決められること
子どもたちと活動している時、よく感じることのひとつに「いきなりは無理だよね」ということがあります。
私はピアノを習っているからピアノの話になりますが、今日からピアノを始めますという人が、いきなりラカンパネラは弾けません。
当たり前です。
まずドレミファソラシド…と言いたいところですが、それ以前にどの鍵盤がドなのか、それ以前に鍵盤をしっかり押せるか、それ以前にその狙った鍵盤に指を置けるか、それ以前に指1本を独立して動かせるか、ピアノの前に座れるか。
それと同じで、いきなり泥遊びはできなかったりします。
初めてだけどできるという子ももちろんいるけど、そこにはやっぱりそれまでの積み重ねがあるし、できない子もやっぱりそこまでの積み重ねの結果できなかったりするのです。
まず先に、大切なのはできるかできないかではないということをお伝えします。
大切なのは、現状の結果がどうであれそこまで積み重ねてきたことがあるということと、これからどんな積み重ねをしていきたいかです。
自分の体のこと、自分の感覚は本人が一番感じられることで、たとえ保護者であっても子ども自身の体の感覚が100%わかるということはないです。
体の傾き、力加減、痛みの感覚、見え方、聞こえ方…そうした物理的な感覚は本人が自分で感じ取りながら調整していくしかない。
自分で遊び方を決められる、というのは目の前にあるその物についての関わり方を自分で決められるということ。
重さ、長さ、触感、自分の感覚に基づいてその物と関わるということです。
その関りの積み重ねで、少しずつその物との関わり方の精度が上がっていきます。
「できない」ということは「やらない方がいい」という判断ができているということ。
「やらない方がいい」の根拠がその子の中にあるということです。
それを「やってみる」に向けたい時には、まずその根拠について一緒に考えることから始めるのがおすすめです。
できるようになってしまったら、できなかった頃には戻れません。
できるまでのできないの時間はとても貴重です。
その時間を側で一緒に感じられるのは保護者の、保育者の、プレイワーカーの、子どもに関わる仕事をしている人の醍醐味だと思っています。